No.1297 ≪経営における「真空原理」の応用≫-2024.2.31

能登半島地震の一刻も早い復興と被災された方々の安寧を心より祈ります。支援にかかわってくださっているすべての方々に限りない尊敬と感謝を申し上げます。

「真空」という言葉は誰もが知っていますが、経営における「真空原理」の応用は意外と知られていません。それもそのはずで私の勝手な理論だからです。

まず「真空」という概念を整理すると、真空とは空気中の分子量の状態、つまり密度の状態を言い、圧力(気圧)と気温が関係します。地上では完全真空状態を作るのは不可能ともいわれていますが、空気分子が減れば陰圧状態、増えれば陽圧状態といいます。私たちの地上生活は1気圧ですので、酸素や窒素や微粒子の重量に体が慣れているので負荷がかかっているとは思いません。しかし、高い山に登ると次第に空気が薄くなり、気圧が下がり、気温も下がり、空気中の酸素分子も減りますから沢山の空気を吸っても少ししか酸素を吸入できませんので苦しくなります。また、高度と気圧の関係は100m高くなると温度は0.6度低くなります。高度と気温と気圧で沸点も変わりますので、富士山頂(3776m)では88度ぐらいで沸騰するのは学校で習ってご存じですね? 飛行機が巡航高度1万m上空を飛んでいる時の外気圧は約0.2気圧ですので、機内は0.8気圧(高度2000m程度)ぐらいに与圧されています。そうでないと体がポテトチップスの袋のようにパンパンになって酸素が薄くなり体液が沸騰して死んでしまいます。

また、医療の分野ではコロナ禍の影響もあり陰圧室を設備する医療機関が多くなっています。陰圧室というのは1気圧よりも低い気圧にコントロールされた治療室のことです。気圧は高い方から低い方へ流れますので、陰圧室にある感染源となる細菌やウイルスは外に漏れることはないので他の病室や空間は安全に保たれるわけです。
誰もが知っているパスカル先生にちなんで名づけられた圧力の単位はパスカルですが、1気圧は101325パスカルで長ったらしいので、1013ヘクトパスカルという風に100分の一にして台風の時によく使われています。気圧が下がると風が吹きますが、熱帯低気圧によって秒速17m以上の風が吹くと台風と呼ばれます。900ヘクトパスカルの台風というと大きな被害が出る台風ですが、気圧に換算すれば0.89気圧です。
地上からの高度によって空気の密度が変化し、温度が変化し、圧力(気圧)が変化し真空の状態は変化します。極論すれば空気の密度と流れと言えます。

説明が長くなりましたが、これは経営に当てはめても、非常に理に適っているのです。
会社は経営者で決まります。経営者の想いが強く高みを目指すためには、それなりの高い熱意(熱量ともいえます)が必要です。すると気温が上がり、気圧が高くなります。空気の密度がどんどん密になり、場合によっては、沸点も100度を超えてゆきます。気圧は高い所から低い所に向けて風が吹きますので、新鮮な空気がどんどんと送り込まれ、隣接する環境や業界にも風が吹いてゆきます。社会を良くする、先義後利、三方よしといった経営の原理原則がしっかりしたビジョンを持ち、コンプライアンスを遵守したガラス張りの経営をすることで社内外に良い風が吹きます。良い流れは周囲を巻き込み啓蒙して成長してゆきます。たとえ、その結果、失敗しても、深刻な苦境に陥っても必ず復活し再成長します。

しかし、何らかの事情で、経営者が自信を無くし、自分を責め、ビジョンを諦め、停滞又は後退すると、熱量が下がります。すると会社の持っている気温も低くなります。同時に気圧も低くなり、よい空気分子が減少して、空気密度は希薄になります。スカスカになった空間からの分子の移動も起きにくくなり、いわば陰圧のかかった真空状態になってゆきます。すると、真空になったところに、外部からどんどんと風が吹き込みます。困ったことにこの風は「弱り目に祟り目」という諺同様に、ネガティブで良くない分子を含んだ風の事が多いものです。すると、社内はますますと停滞し、いずれ酸素がなくなり死んでしまいます。もとはと言えば、真空状態になる原因を作ったのは経営者自身ですから教訓を得ることは必要ですが、それによって自信を無くすことも、自分を責める必要もないのです。
成功と失敗の比率で言えば、何も考えず行動すれば1:100が普通です。失敗しないように最悪の状況を悲観的に準備して楽観的に行動することで2:8又は3:7ぐらいになりますが、それでも圧倒的に失敗が多いものです。それが経営における常態です。失敗から教訓を得ることは大事ですが、極度に反省し自信を無くすのは百害あって一利なしです。

この原理から、将来に不安があっても経営者が常に前に進む、高みを目指す事を諦めなければ、必ずうまくゆきます。思い通りの速度で実現しなくてもいずれ良くなります。多くの会社を見てそう実感しています。この体験から、経営における「真空原理」を発見しました。既に多くの方々が発見していることを私も発見しただけですが、これを経営に応用しない手はないと思っていますが、いかがでしょうか?