No.1305 ≪無いなら「創ればよい」≫-2024.3.27

株式会社町おこしエネルギーという会社があります。本社は兵庫県加古川市。創業者は沼田昭二氏69歳。私と同年です。この会社の主事業は地熱発電事業です。SDGS時代に入り、カーボンオフが求められる中で、再生可能な自然エネルギーを利用して発電することを求められています。風力発電は風を利用し、波力発電は波を利用し、太陽光発電は太陽光を利用し、バイオマス発電は植物由来を利用し、地熱発電は地熱を利用します。地熱資源はアメリカ、インドネシアについて世界3位の保有国で、その資源量は2300万Kmあり、利用可能な導入資源量は1400万kwで原発14基分に相当するようです。また、源泉数では温泉として利用しているのはダントツ日本が世界一で次に台湾が来ます。古事記に出てくるオオクニヌシノミコトの指南役で薬の神様のスクナヒコナが開発したのも温泉で、古くから身近に地熱を利用していた歴史があります。その地熱を使って発電しようという試みは多数ありましたが、立地的にも国立公園や国定公園の中にあり開発が難しかったり、温泉地では温泉組合との関わりで制約条件が多く、熱源導入量は世界10位、利用可能な地熱資源の活用度は1.5%にとどまり進んでいませんでした。
2021年に国は地熱発電の促進策として自然公園法の緩和や温泉法の見直しを打ち出したのです。規制緩和による参入障壁が下がったことで、新たなグリーンエネルギービジネスとして脚光を浴びました。
通常の発想では熱源規模に応じて設計するので15年以上の長い開発期間、膨大な投資額、長い償却期間が必要でビジネスとしては割に合わないと考えられていました。
それを沼田社長は常識を破る発想で、5年以下の開発期間で操業できるコンパクトな標準地熱発電プラントを開発し、それを熱源規模に応じて必要数建設する方式でビジネスモデルを作られました。約8000世帯の電力需要を賄う5mwの標準地熱発電プラントの設計料は2.5億円かかったそうですが、2基目以降のプラントの設計料は不要です。同じプラントを大量に生産することで生産コストも下がります。熱源探査に必要な掘削機も山中をどこでも移動できる自走式を自前で開発し、開発期間の短縮に貢献しています。無いなら「創ればよい」
これを全国にフランチャイズ展開することにしたのです。
最初のプラントは熊本県阿蘇で総工費は100億円ですが、年商15億円が見こまれており回収期間は7年強と短いです。フランチャイズ募集をしたところ2週間で20社超の上場企業が手を上げました。沼田社長は全国に1000店舗以上を展開している「業務スーパー」の創業者です。

株式会社天地人(てんちびと)という会社があります。本社は東京。創業者は櫻庭康人氏42歳。JAXAから唯一出資をうけたグローバルな宇宙ベンチャー企業です。何をやっているかというと、宇宙に打ち上げられている人工衛星は約4400機あり、稼働しているのは3700機で、稼働している人工衛星からのビッグデータを活用して地上に有益な情報をAIや専門的な知見を踏まえて分析・加工して提供するビジネスです。
例えば「宇宙水道局」というサービスがあります。これは人口衛星が24時間くまなく地上をスキャンして地表の温度変化を記録しています。そのビッグデータを利用して、時間ごとの温度変化から漏水リスクを分析し、宇宙から探査するサービスです。一般的には水道管の埋設記録と地図を基に水道局職員が2人1組で探査機械を使って徒歩で確認するのですが、すべての配管検査を行うのに数年を要します。「宇宙水道局」のサービスを使えば、ピンポイントでどのエリアに漏水リスクがあるか、その確率まで表示してくれます。そのデータを基に予防的計画的に工事をすることで漏水による断水損失を未然に防止することができます。
2022年の内閣府と共同で実施した実証実験では、点検費用が最大65%削減、調査期間が最大85%削減されると期待されています。
「WaterWatch α」というサービスは地上の水域面積割合をリアルタイムに無料で提供するサービスです。豪雨による水域の変化ももちろんわかりますが、一番良いのは稲作農家の田んぼの水の管理がわざわざ見に行かなくてもスマホで確認することができることです。田んぼの水が枯れだすと水を入れればよいし、多すぎると流せばよい。それをどこにいてもスマホで管理ができるという優れものです。他にも様々なニーズに対応したサービスメニューを開発しているユニークな企業です。宇宙のビッグデータでできることは無数にありそうです。いままでありそうでなかったサービス。無いなら「創ればよい」

株式会社和光舎という会社があります。本社は京都市。創業者は西谷謙二氏75歳。今は会長に退き経営は2代目社長になっています。
西谷謙二氏はもともとサラリーマンで8回の転職経験をお持ちの方です。創業のきっかけは、前職の外資の保険セールスマンの時に、顧客である京都の住職さんの袈裟のえりが汚れていたので、「洗わないんですか」と聞いたところ、「洗えないらしいです」と言われたので、「だったら私が洗います」と言って、預かってきて、知り合いの職人に頼んだところ、きれいになった。喜ばれた住職が次々と住職を紹介していただき、本業の保険のセールスよりも袈裟のクリーニングのお手伝いが多くなってきた。他に無いなら創るしかない。それで1994年にクリーニング店を開業し、今では創業30年を迎えられました。
全国のお寺に営業し、年間38000件のクリーニングを6月と10月の衣替えの度に手掛けているのです。営業に回るうちに、年代物の立派な刺繍の修復を頼まれたりするので、知り合いの職人を回って完成させます。一流の職人になればなるだけ難しい仕事ほど燃える人が多いので、さまざまな難しい仕事が舞い込みます。
京都には腕の良い職人が沢山いるので、その職人が存分に力を発揮できる場所を提供するのが和光舎の使命だとおっしゃいます。工場の中には刺繡の修復を専門に行う一流の職人と弟子が常駐しており、仕事が途切れることはないそうです。京都という神社仏閣の多い歴史のある町で、ありそうでなかった寺院専門のクリーニング店。
無いなら「創ればよい」