No.1308 ≪社員ファーストの会社になっていますか≫-2024.4.17

2023年5月8日にコロナが2類相当から5類に移行し、社会がにわかに活気に満ちて、折からの円安も手伝ってインバウンドが復活し、人手不足が顕著になっています。「募集しても応募がない」という声が関係先各社から聞こえてきます。さらに中身を見てみますと、募集しているのは技術・技能職、IT技術者、グローバル人財、財務・総務の専門職で、事務職、未経験者等は結構な量の応募があるのです。中小企業においては「人財不足」が起きているのです。大手企業ではone of themとみなされる社員も、中小企業ではすべての社員がspecialな「人財」となるのです。この人財が不足する要因は「採用難」と「退職者・休職者の発生」の2つあります。

それは「退職者・休職者の発生」に起因する補充目的の採用が思うように行かないので「採用難(募集しても応募がない)」状態になります。休職者の場合は一般的には病気と産休があります。今後は介護休職も出てくるでしょう。これはとても喜ばしい出来事です。病気は快癒すれば今まで以上に貢献してくれますし、産休は新しい命の誕生で至福の時を体験することでますます能力を発揮してくれますし、介護休職は親やパートナーへの感謝を再確認するきっかけとなり人間力が高まり落ち着けばさらに頑張ってくれますので、経営者は感謝しなければなりません。「困った」と愚痴や不平を言うようでは罰が当たります。長くても数年間の期間限定ですから「皆で待ってるから頑張ってね」と笑顔で社員の復職を待つ社風があれば、休職している社員も安心して感謝しながら休めることでしょう。その成果は確実に「出した以上に入る」こと間違いなしです。

では、退職者はどうでしょうか。退職者の本音は「5不」、つまり、不足、不安、不満、不便、不快のどれか又はいくつかがきっかけになっていることが多いのです。仕事をしていて「辞めたい」と思わない人はいませんが、行動に移す人はまれです。何度目かの「辞めたい」と思った時「これをこんな風にできませんか?」と提案して経営者の対応を見ます。対応が良ければやめることはありません。数度の繰り返しの後、「だめだこりゃ」と思った時に「辞めたい」と口に出します。慰留されて留まる人もいますが、いったん口に出すと「辞めるのをやめます」と言わない限り、いずれやめてゆきます。新入社員が1週間や1か月で退職するのとは根本的に異なります。それを「わがまま」「自分勝手」「努力不足」と捉えると大間違いです。現象が顕在化するには相当な時間の経過があること、表面化した以上は断固とした対応を取ることが不可欠です。なぜなら、他の社員も経営者の一挙手一投足を見つめているからです。これを見抜けないようでは経営者は務まりません。
防止策は一つ。社員ファーストです。日頃から社員に感謝の思いを口にする、社員のバックグランドに関心を持って声をかけて励ますことです。それもハラスメントにならないように。ある経営者は給与袋に名前を書くことを仕事にされていました。社員数が800名を超えるまで増えて顔と名前が一致しなくなったのを機に印刷に変わりましたが、とても「申し訳ない」と残念がっておられました。現場で名前を呼んで声をかけることができない経営者を許してほしいと言っておられました。
ある経営者は一番早く出社して、社員の机を拭いて、トイレを掃除して、帰宅して着替えて出社することを日課にしておられました。ある経営者は社員の誕生日には職場でランチ会、お子さんの入学・卒業にはなにかしらの心遣い、ご家族が参加できるイベント企画などを継続しておられました。
中小企業経営者は大企業と異なり昇給ゼロ、賞与ゼロでは社員が辞めますので、不況のど真ん中にいてもたとえわずかでも昇給し、銀行から借金してでも賞与を出しているものです。
このような社員ファーストな社風を育てつつ、時代の流れに順応した働き方改革を着実に実践し、業務のデジタル化による生産性向上に果敢に取り組まねばなりません。そして、適正価格の提案です。粗利益率は最低25%、限界利益率では65%を貫く経営が必要です。

採用難については、デジタル化時代の環境に適応するための人財が必要になったり、仕事量が大幅に増えたり、さまざまな理由で退職者・休職者が発生した事に起因する補充目的の採用に対して、他社以上の待遇改善や働き甲斐が伝わりにくいことが要因です。中には将来ビジョンに向けての人財採用や働き方改革に対応するための構造改革を目的とする採用もありますが、こちらは待遇以上に会社の雰囲気が伝わらなかったり、働き甲斐、やりがいを示せていないことによる採用難が多いと思います。
中小企業は大手企業と異なり知名度や外形ではなく、社員がイキイキ働いて「辞めない会社」にすることで「人が集まる会社」になることです。採用はまさに企業戦略であり、社長のもっとも重要な仕事です。

入社してほしい人をその気にさせるのは、トップのビジョンであり、人間的魅力であり、熱意です。トップの理念や考え方が問われている時代です。
ある会社は、経営者のビジョンを熱く語り共感できる人を増やしています。ある会社は奨学金の肩代わりをすることで信頼関係を育み意欲を引き出しています。ある会社は応募順に採用し、早く応募する人はそれだけ意欲と熱意があるとみるからです。ある会社は親子縁故採用を強力に推進しています。親が勧める会社に子供が入社する、その子、孫が入社する仕組みです。悪い会社なら親族が入社することはありません。
ある会社はインターン学生がそのまま入社する仕組みを作っています。働きやすい職場で、社員全員がかかわりながら「一緒に働こう」という気にさせるのです。アップルのスティーブ・ジョブズの採用方法は、応募者を「あほ」と「変人」に分け「変人」を採用候補者として部門長面接に進み、各部門長討議の上採否を決めるそうです。Googleでは一緒に宇宙旅行をしても良い人を採用するそうです。

社員ファーストに則り、社員が辞めないだけでなく優秀な縁故者を連れてくる会社にするには、まだまだできることが沢山ありますね。「募集しても応募がない」と原因他人論に立つ前に、応募がないのは社長の責任、どうすれば人が集まってくるか考える時に来ていますね。

「日本でなぜ人手不足が起きるのか」を分かりやすく説明しているリクルートエージェントと高卒labのホームページは参考になります。

https://www.r-agent.com/business/knowhow/article/4144/   https://lab.jinjib.co.jp/archives/5988/?utm_source=google&utm_medium