No.1307 ≪生き残り、未来を拓くには・・・≫-2024.4.10

何かと話題の多い巨大な隣国「中国」(正式には「中華人民共和国」)を知り、分析することは経営者のintelligence思考訓練にもっとも適していると思います。ネットやマスコミの表面的な知識だけでは判断を誤ります。「Aha!」と納得するとともに、いかに生き残り、未来を拓くにはどうするか、相手を知ることは自分を知る事であり、そうすることで行き詰まることがないのです。

日本では江戸幕府が開幕したころ、中国大陸では明国が衰退し、明の属国(冊封国)だった女真国を統一した満州族のヌルハチが勢力を伸ばし、清帝国を建国しました。18世紀末にはヨーロッパまで至るユーラシア大陸の東半分を統治する世界最大の強国となり、一説によるとGDP世界一の隆盛を誇ったと言われています。
しかし、強大化すれば衰退するのが世の必然です。1840年のアヘン戦争で敗戦し、莫大な賠償金の支払いと、列強各国の租借により国の態をなしていない状態が続き、1911年の孫文による辛亥革命で滅びました。
日本はアヘン戦争及びその後の清国の見るに堪えない惨状を見て、尊王攘夷で盛り上がっていた方針を、産業革命によって近代化された列強の軍事力を目の当たりにすることで日本も文明開化しなければ清国の二の舞になると判断し、それまでの攘夷を捨て開国し、明治維新を成し遂げ、欧米列強のあらゆる文明に学び、富国強兵、殖産興業に勢力を傾けたのです。驚くべきは明治政府が誕生して3年後の1871年に岩倉具視使節団を組織して留守役の西郷隆盛以外のすべてのリーダーが欧米に文明視察の旅に出かけたのです。その期間なんと2年間。そして、近代化に次ぐ近代化を驚異的な速さで成し遂げたのです。清国の惨状がその動機となったことは間違いありません。
日本同様鎖国していた李氏朝鮮は「衛正斥邪」(儒学を護り外敵を斥ける)を護り、事大主義で右往左往したあげく衰退しました。近代化した日本は日清戦争に勝利して日本は坂の上の雲を追いかけました。一方、中国は日本に負けた屈辱を臥薪嘗胆して、いつか必ず晴らさずにはおかないと決意し、いまだに決して忘れることはありません。

1991年に国連決議に基づき米軍を主力にした多国籍軍が、クゥエートを解放するためにイラクに軍事行動を起こしたことがありました。その圧倒的な空軍兵力の威力を見て、劣悪な軍備しかなかった中国空軍の将校が対抗するために知恵を絞ったのが、「孫氏の兵法」を踏まえて編み出した戦術「超限戦〜21世紀の「新しい戦争」〜」(著者:喬良, 王湘穂, 角川新書刊)を発表しました。いわゆる認知戦で、無いなら無いなりの戦い方を提案したのです。それ以降の認知戦はすさまじいものがあります。

2010年胡錦涛政権下に中国共産党直属の中国人民解放軍国防大学教授の劉明福氏が書籍「中国夢」で21世紀に中国が世界最強国になるためのロードマップを具体的に描きました。別名「100年マラソン」と言います。極秘にしておきたい内容だったこともあるのか発禁処分になり日の目を見ませんでした。2012年に第18回中国共産党大会で総書記に選出された習近平氏は直後に「中国の夢」を提唱しました。恐らく劉氏の書籍がベースになっていると巷間言われています。

習近平主席の提唱する「中国の夢」構想とは何か。テーマは「中華民族の偉大なる復興」、手段は「一帯一路」からなるビジョンです。期限は建国から100年にあたる2049年。陸路ではかつて15世紀ごろまで栄えた交易路シルクロードによって中国からローマ帝国に及ぶ広大な地域を勢力下に治めていました。海路では明国の宦官鄭和の艦隊がアフリカまで進出して交易路を開拓しました。陸路は「一帯」、海路が「一路」、併せて「一帯一路」。
陸と海の両面から文化や経済と科学技術をリードして、世界最大の勢力圏を統治した清朝時代の中華民族の栄光を取り戻すことがテーマです。
2013年には一帯一路構想が提唱され、具体的に多くの国々が賛意を表し動き出しましたが、今は様々な思惑や問題が表面化してやや停滞気味のようです。
2014年6月に国務院(中国共産党指導下にある中国政府)が発表した香港の一国二制度に関する方針により、香港は実質一国一制度になりました。
次に課題になるのが台湾問題です。こちらは香港ほどシンプルな状況ではないため、紆余曲折がありそうです。李登輝総統時代に選挙制度が直接選挙になり20年以上継続して実施されています。香港の統治とはだいぶ様相が異なります。下手に取り込むとウイグル、チベットの問題が再燃拡大するリスクも捨てきれません。
中国が最も意識しているアメリカは、日中国交回復交渉(1972年)の直前にニクソン大統領が訪中し「上海コミュニケ」を発表し、「米国は台湾海峡両岸の全ての中国人は、中国は一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識する」と述べました。日中国交樹立の7年後(1979年)カーター大統領政権下で国交樹立となり台湾と国交断絶しました。同時に国内法で「台湾関係法」を成立させ同盟国として国交断絶以前の状態を維持するとして、武器弾薬も合法的に売却しています。もし、中国がアメリカの台湾政策にクレームすると、「内政干渉だ」と退けることができます。日本は果たしてどうでしょうか?
一方、日本は国交樹立時に「中華人民共和国は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する」として国交断絶し台湾を手放しました。アメリカのようなタフな交渉することなく、日清戦争以来統治してきた台湾との関係を放棄してしまいました。

中国側の主張によれば、問題の尖閣諸島は台湾州の領土になっています。一つの中国を認めるなら、尖閣諸島も中国の一部であることを認めることとなり、日本は苦しい立場になります。国際法は実効支配者が有利なので、どう動くかが今後の日本の課題と言えます。

認知戦、つまり情報戦に勝つためには、長期的な視点で事実や根拠や背景、目的を多面的にみて、相手を良く知ることではないかと思います。