No.1245 ≪経営における視点と視野と視座≫-2023.1.27

会社の経営において報告・連絡・相談の重要性は誰もが知っており、理解しています。ただ、その質と行動は個人差があり、ピンボケだったり、タイミングがずれていたり、トンチンカンだったり、言葉明瞭にして意味不明だったりします。これはその人の「個性」というにはあまりに甘やかしすぎかと思います。
このような現象はなぜ起きるのかと考えた時、一つには、視点・視野・視座の問題があると思います。もちろん、現状分析力やロジカルシンキング力、改善デザイン力、それをわかりやすく伝える表現力、文書力等のスキルが不足又は未熟な場合もこのような現象は起きます。

しかし、自分の事しか考えていなかったり、身近なことしか興味や関心が無かったりすると、報告・連絡・相談すべきこと自体、気づくことはありません。「気づかないことは解決されない」のです。問題を問題と気づかなければ報告することも相談することも必要ありません。

そこで、視点と視野と視座の3点をレベルアップする必要性が出てきます。
まず、視点ですが、「自分にとって得か損か」「自分にとって心地よいか悪いか」「自分にとって楽又は楽しいか苦痛か」「自分の能力を活かす仕事かどうか」「仕事内容よりも給料や待遇は高ければ高い方が良いか」「自分にとって今さえ良ければよいか将来も大事か」で即物的に判断しがちです。
この視点を、「自分にとって良いか悪いか」「自分にとって心躍るか踊らないか」「自分にとって成長するかしないか」「この仕事は自分の能力を活かせる天職かどうか」「給料や待遇とやりがいとどちらを取るか」「世のため人の為になるか」「この世に生まれてきた使命は何か」という視点に置き換えてみるとどうなるでしょう。

次に視野について考えてみましょう。
視野は文字通り、見える範囲の角度です。首を回せば上下左右360度見渡せますが、普通は水平角度で120度〜150度、垂直角度で130度程度ぐらいだと言われています。動物だと、人間同様に正面に両目がある肉食動物は100~180度、両サイドに目がある草食動物は360度と言われています。草食動物は常に襲われる危険にさらされていますので360度の視野を持っているのだそうです。
私たちは今持っている視野を左右にそれぞれ10〜30度広げてみませんか。つまり、150~180度の視野を手に入れるのです。
具体的にどうするか。自分(私)という主語を自分たち(私たち)に置き換えてみるのです。たったそれだけ?と思われるかもしれません。自分以外に仲間がいるのを意識するとなんとなく視野が広くなったように思いませんか? 自分以外の仲間の存在を意識し、かれらが何を考えているか興味と関心を持つのです。同時に、あなたではなくあなたたちと置き換えてみるのです。

次に視座です。視座は居場所です。私たちの居場所の最小単位は家庭です。家庭の周囲には向こう三軒両隣のご近所があり、町内があります。家庭の次の最小単位は会社です。会社のある町、町のある地域、地域のある都道府県、都道府県のある日本、日本のあるアジア、アジアのあるユーラシア、ユーラシアのある地球、地球のある太陽系、太陽系のある銀河系、銀河系のある宇宙という風に居場所をどんどん広げてゆきます。すると地面から離れてゆく感覚もあると思います。それが視座です。視座が高くなれば高いほど見える距離も長くなります。地上ではせいぜい50m程度です。障害物の有無にもよりますが1m高い所に上ると+50mぐらい先まで見えます。2mだと+100m。高ければ高いほど遠くのものが見えます。

こう見てゆくと、視点がいかに大切かお判りいただけると思います。視点が自己中心であれば、視野も広がらず視座も高まりません。これらを踏まえたうえで、それぞれをレベルアップすることで得られるメリットを計算してみました。
日本人の平均身長1.65mの人が持っている視点・視野・視座から得られる情報量を計算すると、50m×50m×円周率3.14×1.65m×(150度÷360度)=約5400㎥となります。今度は5mの脚立に乗って、180度の視野を持ったとすると(50+250)m×(50+250)m×円周率3.14×6.65m×(180度÷360度)=約940,000㎥となり、なんと174倍の情報量を得ることができます。

私たちは一人一人が視点を見直し、視野を広げ、視座を高めることで、いつの時代にも社会になくてはならない存在に一歩近づけるのではないかと思っています。