No.988 ≪しきると、念ずれば花開く≫

坂村真民氏の有名な言葉に「念ずれば花開く」というフレーズがあります。満州から引き上げる時に、幼子を亡くされ、苦労の多かったお母さんが、いつも口癖にしておられた言葉で、これのもとになる考え方が「疑えば花開かず、心身清浄なれば花開いて仏見たてまつる」(華厳経)だそうです。少しでも疑念が生じれば、花は開かない。事が成就するよう、自分を信じて疑わず、念じきることで、天界に思いが届き、天界の作用が働き現実化する仕組みです。


「念ずれば花開く」の石碑は世界中にありますが、依頼を受けた坂村真民氏が、この人なら間違いないという人だけに墨書され、その通りに彫ってあります。石の大きさにもよりますが、大きなものは3m近いものもあります。坂村真民記念館では、どこに何番目の石碑があるか、パソコンで検索できるようになっています。坂村真民記念館を訪れて、あなたのお住まいの近くにある石碑を探してみてはいかがでしょうか。


私もこの言葉と出会って、かれこれ30年がたちます。この言葉は、私の恩師の一人、経営コンサルタントの故太田琴彦氏と、はがき道の恩師、坂田道信氏から教えていただきました。坂田道信氏からは、「人生二度無し」の名言を残された故森信三氏と、「良樹細根」の鍵山秀三郎氏を教えていただきました。
これらの先生方の人となりを、緻密な取材と現地での瞑想で解き明かされているのが神渡良平氏です。魂が震え、喜ぶ言葉を紡いで下さる師匠と出会えて果報者だと思います。


さて、「念ずれば花開く」。先週のブログ「新発見 鏡の法則2」でも、お伝えしましたが、思いはかなうのです。但し、残念ながら、我欲や小欲は、どうもうまくゆかないようです。会社を通じて、世の中をよりよく変えてゆく大欲、皆のためになる公欲は、とても良く実現します。天にかなう大義が必要なのです。会社は、社会の公器と言われるように、経営者の私物ではありません。会社のビジョンや計画には、社会によい影響を与え、進化させるものが必要なのです。そのためには、「この道より吾を生かす道なし この道をゆく」と喝破した武者小路実篤氏のように、信じ切り、受け切ることが必要なのです。


会社が苦境に陥った時、二つの見方があります。「ああ、もうだめだ」とあきらめてしまう暗い見方と、「これを乗り越えれば、もっと発展すると指し示してくださっているのだ。ゼロからやり直そう」という明るい見方です。暗い見方だと何も生まれませんが、明るい見方だと、この苦境は幸福にいたるプロセスだ、いかなる事態もすべてを引き受けようと、腹を決めて行動すると、不思議ですね、次第に、良い方向に進むのです。協力者が一人増え、二人増え、仕事が一つ増え、二つ増え、気づくと苦境の時よりもはるかに好業績を上げているのです。


ここから、工場経営者のIさんの事例を紹介しましょう。Iさんの工場が火事になり、工場に着いた時には、手の付けられない状態でした。化学製品を使う工場だったため、炎の勢いが激しく、黒煙と悪臭がひどく、周囲に迷惑がかからないように祈っていました。おろおろする社員をしり目に、社長は仁王立ちになり、「心配するな。大丈夫だ。天は我々を見放していない。それより、消防士さんが消火活動しやすいように、足場を片付けよう」と皆を叱咤激励して回りました。
やっと鎮火した時には、鉄骨の工場は中途半端に半分焼け落ち、社屋のあらゆるところがタールを塗ったように真っ黒になっていました。全焼でないと火災保険もおりません。困ったなと思いつつも、「これで会社がなくなるなら、社会に役に立っていなかったわけだから、それもまた良しとしよう」と腹を決め、社長は、すぐさま、お客様、得意先、関係先、金融機関、役所等を回り、火事の報告と納期の遅れをお詫びに回りました。社員総出で、火事で迷惑をおかけした付近の方々にお詫びに歩きました。不思議と、お客様に納品する製品には、何の被害もなかったのです。仕事は焼け残ったスペースでなんとか間に合いましたが、問題は資金繰りです。保険が下りなければ、銀行借入で再建するしかありません。決して盤石とは言えない財務状況で、巨額の借入は、致命傷になりかねません。保険会社の担当者も、金融機関の支店長も何とかできないものかと、一所懸命に考えてくれましたが、悲観的な結論にしかつながりません。ところが、不思議なことに、火災保険が全額降りることになったのです。経営者が、苦境を受け切った姿を見た天の計らいとしか言いようがありませんでした。


Iさんほどの大きな出来事ではありませんが、大事な約束の時間に間に合わない時、行く先々で信号が赤になったり、渋滞したりする場合が良くあります。その時に、相手の方に遅刻するお詫びの電話を入れると、信号が青になり、約束の時間に間に合ったり、急に渋滞が解消したりするのです。大事な契約の時や、不利な状況に陥ったりする場合は、なおさら、遅刻したくありませんし、お詫びの電話を入れたくありません。しかし、腹をくくり、いかなる事態も引き受ける覚悟ができると、天の配剤で、すべてがうまくゆくのです。たとえ、それが、最悪の事態であったとしても、長い目で見れば、最善の結果になるのです。


念ずれば、花開く。信じきる。受けきる。やりきる。「○○きる」ことは大事ですね。