No.1166  ≪アフターコロナの生き方≫-2021.6.18

2021年6月11日~13日にイギリスのイングランド西方にあるコーン・ウォール地方で開催されたG7(Group of Seven:先進国首脳会議:フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)で、菅総理がオリンピック開催への支持要請をして全会一致で賛同を得たことで、もう後戻りはできなくなりました。
後は無観客か有観客か、有観客なら何人まで家が焦点になります。穴だらけの水際対策をどのように穴を埋めるか、世界中から来日する五輪関係者の徹底した行動管理、バブル方式という名の選手団の移動管理等様々な課題が残っており、世界で初めての壮大な実験と言えます。SDGSの時代です。そろそろ最大スポンサーのアメリカNBCの都合による真夏のオリンピックをやめてもう少し穏やかな季節にしてはどうかと思います。

前回のブラジル・リオ五輪はブラジル国内のジカウイルスの感染拡大で危ぶまれましたが、すでに開発済のワクチンがありましたので、各国選手は事前にワクチン接種をすることで通常に開催されました。今回は世界中でコロナウイルスによるパンデミック中ですし、世界初の画期的なmRNAワクチンという遺伝子ワクチンです。今世界中で進んでいるワクチン接種は全人類が参加して行われている壮大な治験中といえます。完全承認前に特例実施して同時並行でデータを取るという人類史上初めての試みです。実際の成果は3世代後の最低でも50年後しかわかりません。その時、世界の教科書にはどのように記述されているかが楽しみです。かく言う私も治験に参加中です。

採算度外視で実施される今回の五輪が、今後の日本の経済に良い影響を与えてくれることを祈るばかりです。開催しても中止しても莫大な赤字になることは明白です。
2020年12月20日に発表された予算案バージョン5が組織委員会のホームページに掲載されています。
この予算案を見ると、総予算は1兆6440億円。内訳は組織委員会7210億円、東京都7020億円、国2210億円となっています。組織委員会の収入の内、IOCから850億円、スポンサーから4060億円、チケットで900億円、ライセンス140億円、東京都の追加負担150億円、その他1110億円を見込んでいます。無観客になると最低でもチケット収入の900億円が赤字になる計算です。しかし、実際には、100万人の五輪インバウンドを当て込んですでに税金を投入している東京都や国は、10万人規模に縮小されると、単純計算で総負担金9210億円の90%、8300億円は赤字になるでしょうから、チケット収入も含めると9200億円は赤字となります。

ならば中止すればよいのではという声もありますが、中止したならば、見込んでいた収入がゼロになるだけでなく、スポンサーからの損害賠償がありうるので実際には中止する決断をしてみないとわからないといえます。恐らく計算不能です。最低でも経費予算1兆6440億円は赤字になることは間違いありません。中止の選択肢が消えた段階で、赤字幅の限度が見えてきたといえます。

今度は、アフターコロナの復興対策をどう見るかというところが今後の焦点になりそうです。
菅総理が「ワクチン接種1日100万回」を表明したのは緊急事態宣言中の5月7日です。その時の接種回数は1日約4万回でした。ワクチンそのものが日本にない時でした。4月15日~18日の菅総理が初訪米期間中にファイザー社CEOとの面談がセットされていました。ここでワクチン供給の確証を得て、その後の打ち手問題を医師と看護師だけでなく、医学生、歯科医師、薬剤師、救命救急士と特例承認して拡大する行動に出られたと思います。この時点で私は「6月中には100万回に達する」と確信しました。

巷間「1日5万回もできていないのに100万回なんて政治的なアドバルーンだ。できるわけがない」「ワクチンそのものがないじゃないか」「会場がどこにあるのか」「医療崩壊している現場から医師を抜くのは無理だ」とか、様々なできない理由のオンパレードでした。しかし、政治の方向が「ワクチン接種で社会免疫を獲得する」という1点で絞られた段階で、現場が動きました。
それは、日本人の特徴といえますが、決まるまでは様子見で指示待ちですが、責任の所在と明確な方針が決まれば日本人の行動はものすごく早いのです。なぜなら日本人は現場の一人一人が指示されなくても考えながら行動することができる民族です。野球型組織ではなくサッカー型組織、もっと言えばラグビー型組織なのです。
私は経営支援の現場でいつもこれを体験しています。パフォーマンスが悪いのは現場のせいではありません。トップの覚悟のなさによるものです。トップが悪いのです。トップが都合の良いあいまいな言い方で責任逃れをしている間は現場は動きません。面従腹背を決め込みます。ところが、いったんトップが覚悟を決めて動くと、早い、早い、目にもとまらぬ速さで進みます。
できない理由を並べたてる方は、日本人の現場改善力の底力を知らない方です。だからトップの決断がいかに大事かということです。すべてトップ次第なのです。どちらに転んでも責任を取るのはトップですから、迷う時間があれば前向きに進む決断したほうが傷は浅いです。

後は経済問題を解決する覚悟をいつ決めるか? 徳政令をいつ出すか? 
歴史に学べば、日露戦争の開戦決定が参考になるとおもいます。明治維新で開国して40年後の1905年に開戦しています。問題は戦費調達です。当時の国家予算2.6億円に対して必要な戦費14.7億円。これを金利6%の国債発行で賄おうとしたのです。国家予算のなんと5.7倍という巨額です。今でいえば、年間予算が100兆円ですので、約600兆円規模の国債発行となります。
どの国も引き受けてくれなかった日本の国債を引き受けてくれたのは、イギリス銀行団とアメリカのユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフ氏でした。ちなみに、その時発行した国債は1986年に完済されました。完済まで実に80年近くの年月がかかりました。

当時とは状況は異なりますが、トップの決断の重要性にはなんら違いはありません。