No.1300 ≪知性と知能と知識と智慧と≫-2024.2.21

「あの人はとても知性的(知的)だ」と言うとあなたはどのような人イメージされますか?
「あの人は知能指数が130もあるんでっすって!」と言うとあなたはどのような人イメージされますか?
「あの人は知識が豊富でとても博識だ」と言うとあなたはどのような人イメージされますか?
「あの人の智慧には頭が下がる」と言うとあなたはどのような人イメージされますか?

知性は英語でIntelligence、知能も英語でintelligence、知能指数は英語でintelligence quotient、いわゆるIQです。智慧は英語でwisdom、知識は英語でknowledgeと言います。
知性と知能は同じintelligenceですが、本質は少し違います。知能は答えが明確な問いに対して早く正確に答えを見つける能力を言い、その答えを回答する検査を知能検査といい、その結果を知能指数といいます。
では知性とは何かというと答えがないものを探求し続ける能力を言います。英語では同じintelligenceでも似て非なるものなのです。私が日ごろ「経営者はインテリジェンスを磨きましょう」と言っているのは、知能のintelligenceではなく、知性のintelligenceを指しています。つまり、答えが明確にないものを問い続ける能力です。知能が高くても知性が高まりません。知識を多く持つだけでは智慧になりません。いずれも集中力を持って自分の体を通して体験することで、また、失敗や成功を踏まえることで、深みが出てくるものです。知能は知性に、知識は智慧に転化してゆきます。アメリカの諜報機関で世界中の安全保障に関する情報を専門的に収集し活用しているCIA:中央情報局はCentral Intelligence Agencyと言います。ここでもIntelligenceという言葉を使うのは、Intelligenceを知性=情報(諜報)という考え方からきているのではないかと思います。私たちもその両面の視点を持つべきだと思っています。

私たち経営者は知能ではなく知性を磨かねばなりません。なぜなら、経営における答えはないからです。
「わが社の将来にどんな手を打つべきか」「わが社は成長市場に進出すべきか」「わが社は海外戦略をどのように構築すればよいか」という命題に対して、「それは〇〇です」という正解はありません。将来がどうなるのか、進出する市場の構造や成長度合いはどうなっているか、海外進出するならカントリーリスクや経済や文化、政体、民族や風土、宗教はどうなっているのか。論理的にみて可能性が高い、難易度から見て成功しやすい、リスクをヘッジしやすい等のアバウトでファジーな数値化はできても「正解」はわかりません。誰が、いつ、どのように、何処で、何を、いくらの予算で実行するのが正しいのか、やってみなければわかりません。最後は経営者の経験からくる直観力で決断するしかないのが経営というものです。知性は答えのないものに対する問いかけを続けることですので、経営者が知性を磨かねばならないというのはそういう意味です。

ではどのような知性が必要なのでしょうか? 専門的な知識でしょうか。聖賢の書を読むことでしょうか。自分を信じてビジョンを打ち立てることでしょうか? AIを駆使してシミュレーション計算を繰り返すことでしょうか。あらゆる戦略研究によって最もわが社に必要な戦略をとることでしょうか。戦略に合わせて必要な戦術、アプローチ、人材育成を行うことでしょうか。人間力を高める努力をすることでしょうか。座禅や瞑想によって自分と向き合うことでしょうか。

経営者が知性を磨くアプローチはいくつかありますが、一つのサンプルアプローチを示します。
1.何のために経営するかという思想や理念を持つ。例えば、社会を良くする、当社の力で地球環境を改善するといったような大きな思想です。誰かがやってくれるのではなく、わが社がそれを担うという覚悟。
2.開発中のシステムを導入すれば〇年後には関連市場を創造することができるというビジョンを明確にする。
3.わが社がそのリーディングカンパニーになるという志(使命)、もっと端的に言えば大げさに大風呂敷を広げて不退転の覚悟を明言する。つまり「有言実行」です。
4.1社でできることには限りがあるので、仲間を募る。わが社が中心になって、関連企業、大学や研究機関、行政に働きかけて公益推進団体を構築する戦略を立てる。
5.次は具体的に個別企業や個別機関にアプローチをかけながら仲間づくりを行う。いわゆる戦術である。

6.キーテクノロジーとしての技術研究、仲間を増やすためのプレゼンスキルのレベルアップ。
7.最後はやはり人で決まります。経営者であると同時に一人の人間として信頼感が最も大事です。それは謙虚さと素直さ、明るさに出てきます。実行せずにはいられない誠の人となって、愚直に物事に取り組む。
8.早朝に社員が嫌がるトイレ掃除やごみ拾いの仕事を率先して実行する下座業を積んだり、師と仰ぐ禅師をもち座禅瞑想したり、お茶をたしなむことで和敬清寂の中に身を置く。
9.直観を大事にする。直観とはインナーボイスです。

これからの時代はますます知性を磨く、インテリジェンスを磨くことが重要になります。