No.1129 ≪日本に生きる恵みに感謝≫-2020.9.18

安倍総理の政策を継承する後継内閣が誕生しました。菅総理は「目指す理念は自助・共助・公助、そして絆だ。まず自分でやってみる。そして地域や家族がお互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りをします。さらに縦割り行政、そして前例主義、さらには既得権益、こうしたものを打破して規制改革を進め、国民の皆さんに信頼される社会を作っていきます」とおっしゃっています。額面通り素直に受け取れないかもしれませんが、大いに期待したいと思います。

インバウンド政策で観光立国を実現するために岩盤規制の一つであったVISA 緩和を2012 年に行い、2015 年には長年の宿願であった来日外国人2000万人をあっというまに実現し、コロナ禍がはじまる直前では3200 万人にまで増加しました。そして東京オリンピック開催で4000 万人以上のインバウンドが見込まれていました。
これによってさまざまな産業が急成長しました。菅総理は成長エンジンの場所を熟知し、ツボを押さえるのが上手な方のようです。政策の前倒しとコロナ第二波の襲来で東京除外となり混乱の極みでスタートしたGOTO トラベルも菅総理のアイデアだとか。

バブル崩壊後の10 年間に日本の総理は海部総理から森総理まで8 名変わっています。その中で最長在任総理は橋本総理の3年でしたから、7名の総理は平均約1 年で交代したことになります。誰が総理なのか国民でさえ覚えきれなかったのですから海外においてはなおさらだったことでしょう。それに引き換え、小泉総理の6 年、安倍総理の8年は日本のインフラに対する規制緩和が進み、社会改革が進んだ時期です。高速道路民営化、郵政民営化、金融機関改革、通信民営化と第二電電、独立行政法人、裁判員制度等。何かと問題はあっても大局にたてばメリットの方が大きい改革が進みました。成果の見える政策を遂行するにはやはり時間がかかります。1 年交代では、引継ぎで終わってしまい、改革遂行までたどり着きません。8 年続いた安倍政権はさすがに政策に安定感があります。長期政権の弊害は否定できませんが、1年以内にトップが変わる組織でまともなことができないのは歴史が証明しています。特に、外交ではその影響が顕著です。その安定した安倍政権で官房長官として国政に参画されていた菅総理の誕生によって政策の継続性が担保されたことは大きな恵みだと思います。

自助・共助・公助は災害対応の原則です。いつ何時災害が起きても対応できるように防災グッズを準備し、地域のハザードマップでリスクを理解し、緊急連絡網をあらかじめダウンロードして自力で3日間は生き延びるのが自助です。起きてから動くのではなくて起きる前に準備する。「備えあれば憂いなし」が自助の精神ではないかと理解しています。
自分の準備ができていれば、隣人や他者を支援する余裕も生まれます。一人ではできないことを地域や仲間と力を合わせて危機を乗り切る事が共助です。日ごろから様々な仲間づくりをするのも大事なことの一つです。
公助はさらに大きな視点、個人や地域ではできない長期的な視点で、税金を使って安全・安心を担保することだと思います。
会社に置き換えて自助・共助・公助を考えるともっとわかりやすいかもしれません。

会社はいかなる場合も原因自分論を貫き、自らの責任で危機を乗り越えてゆかねばなりません。想定できる事態はもちろんの事、想定外の事態にも柔軟に適応しなければなりません。巷間言われる環境適応業です。会社は「自力本願」が基本で、他力本願では消滅してしまいます。その基本精神は「自主自立」「自助努力」です。
明治4 年に出版されたサミュエル=スマイルズの著書『Self-Help(自助論)』を中村正直が翻訳して『西国立志編』を出版し、大ヒットしました。その中に「天は自ら助くる者を助く」という誰もが中学英語で習った名文が出てきます。日本人のDNAには明治のころのこの気風が残っていると信じたいです。
会社には様々なリスクが襲ってきます。景気後退に伴う業績悪化、取引先の倒産による不良債権の発生、大口顧客をライバルに奪われ売上が半減、新製品が生まれず業界の新陳代謝に飲み込まれる、現場での死亡事故発生、住民から集団訴訟される、社員の不正で信用失墜、経営陣のベクトル崩壊、異業種参入による価格破壊の進展等数え上げればきりがありません。そして、だれも助けてくれません。
しかし、経営者の日ごろの行いによっては、どこからともなく支援の輪が広がることもあります。顧問先が月商近くの不良債権を立て続けにかぶり倒産の危機に直面したことがあります。その時、その社長の友人経営者数人が各社1億円づつ資金を準備して、本人から救援要請があればすぐに差し出す準備をしていました。結局、金融機関の支援を受けることができたおかげで友人はその資金は使う必要がありませんでした。もちろん本人はその存在すら知りませんでした。その存在を知ったのは危機を脱して、復活し成長軌道に回復してからでした。
「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったものです。日ごろの行動がいかに大事かをこれで知ることができます。これは共助です。共助を当てにして自助を怠慢するようでは共助は機能しません。

企業の自助努力や仲間内の共助の範囲をはるかに超えている今回の世界的な脅威であるコロナ禍では、国が大盤振る舞いで、湯水のごとく資金を供給しています。これは公助です。

私たちはこのような国で経営し生活していることに感謝し、誇りにしたいと思います。それが国の役割なのだから当たり前だとおっしゃる方もおられるでしょうが、そうでない国が世界でいかに多いかを知れば、日本に生まれた恵みに感謝せずにはおれません。 巨大輸送船で海外物流を担って世界中の危険海域を航行中しているときに自衛隊機から日本語で「大丈夫ですか?困ったことがあればいつでも連絡してください」と無線が入る時の安心感は日本人であることの喜びを実感すると船員が語っていました。この恵みに感謝したいと思います。