No.1090 ≪中小企業の近未来≫-2019.11.28

最新の中小企業庁の統計によると日本には会社が約382 万社あり、そのうち大企業は約1 万社(0.3%)、残りが中小企業で約381 万社(99.7%)あるといいます。不思議なことに中小企業の割合が99.7%という数字は、会社数が変動しても10 年近く変化がありません。中小企業の内、従業員が10 名未満の小規模事業主は約325 万社、小規模事業主の中で個人事業主は約206 万社あります。つまり、日本の会社の中における個人事業主の割合は54%を占めます。10 名以上の小規模事業主は46%なので、日本の会社のほぼ半分は個人商店と同じ個人事業主だといえます。厳密な意味で巷間言われている中小企業は、大企業と小規模事業者の間を指している場合が多いかもしれません。この統計によると、小規模事業者でない中小企業は約56 万社(15%)、その従業員数は2230 万人(46.5%)となります。会社数では15%ですが、従業員数では約半分を占めていることになります。

中小企業の社長の平均年齢は0.2 歳づつ年々上昇し、帝国データバンクの2019 年1 月の調査では59.7 歳です。
60 歳代の社長の割合は29.4%、70 歳代の社長の割合は18.5%、80 歳代の社長の割合は3.9%と高齢化しています。また、年商規模と社長の年齢は反比例しており、小さいほど高齢化比率が高いことが明らかになっています。小規模事業主は規模拡大を目指さないと、後継者からみて継ぐには魅力的ではないので、不安定な経営者よりは安定したサラリーマンを続ける選択をする結果と言えます。

このような中小企業、中でも小規模事業者の存在が日本の生産性向上の阻害要因になっているという主張もあります。生産性向上を進めるには、設備投資や人的投資が不可欠ですが、それをするには体力も意欲もないので、廃業を選択する社長が増えているのも事実です。

こう見ると、頑迷固陋な高齢化企業が蔓延し、とても見通しの悪い近未来しか見えてきませんが、頑迷固陋に経営をしてきたがゆえに、品質に優れ、良い仕事をする職人企業が多いことも事実です。地域に愛され、地域の高齢化とともに命を終える企業群は、見方を変えると、これほどの有意義な社会資源はまさに金鉱脈に匹敵するかもしれないのです。
常識やしがらみにとらわれない柔軟な発想で、世界にアクセスしてゆくことができるからです。
先日のメルマガでもお伝えしましたが、古事記の現場を旅する「まほろば研究会」で熊野三山を訪れた時、泊まった宿は湯の峰温泉「旅館あづまや」さんでした。女将とそれを支えるご主人と思しき方は同じ30 代の若い方でした。お客様のほとんどは欧米からの外国人で、ほとんどが英語表記されており、飛び交う言葉は外国語でした。WI-FI は言うに及ばずIOT がふんだんにあり、もちろんキャッシュレスです。豪華ではありませんが時代の先端を行っています。それを女将はいともあざやかにおもてなしで対応しています。年配の女中さんも外国人には慣れているようでした。
一方、四日市で泊まった温泉旅館は、女将が70代以上と思える高齢で、あと数年で廃業するのではないかと思える対応でした。支払いも現金のみでした。まるで、日本の中小企業の縮図と未来の描き方を見たようで非常に参考になりました。
細やかさを当たり前と思っている日本人をお客に迎える旅館と、日本の古き良い文化を体験したい外国人をお客様に迎えるのとどちらがアメイジングでしょうか?

このような技術と地域に根差した信用のある会社を引き継いで、再活性化させれば、ゼロからスタートするよりもはるかに魅力的な会社を短時間で作ることができるという見本です。
日本の中小企業はまだまだ捨てたものではないと実感しました。 何に価値を見出し、何を売りにするか、まだまだ私たちがやらねばならないことは沢山ありそうです。