新型コロナ対策は、感染防止の方法、治療法、医療体制、ワクチン開発等の対応策が世界中で進み、最初の感染が見つかった1月からみれば隔世の感があります。しかし、決め手はまだなく手探り状態が続いています。ヨーロッパでは第二波の到来とも思える再感染が猛威を振るっています。
感染防止と経済活性の両輪を回す! その具体的方法を世界各国が試行錯誤しています。終息まで早くて1年、遅ければ数年かかるといわれています。前の状態に戻るまでの「我慢の段階」にいる方々が、年があけると「withコロナ共存の段階」に入り、意識が変わってゆくと思います。そうなると生活を維持するにはまだまだお金が必要になります。108兆円という戦後最大の補正予算を組んでコロナ対策を打っている日本ですが、「見えざるウイルスとの戦い」には莫大な戦費が必要です。歴史の中に大きなヒントがあります。
日本はかって世界三大強国(英・露・米)といわれたロシアに、英米の支援を受けて1904年に宣戦布告しました。朝鮮半島最後の王朝である李氏朝鮮の親子喧嘩にかかわり、日清戦争を戦う羽目になりました。日清戦後、下関条約で朝鮮の完全独立と台湾及び遼東半島の割譲、賠償金2億テール(分割金利等を含めると現在価値で約43兆円)が合意された3日後に、日本が遼東半島を領有することはロシアが南下政策を取るうえで弊害になると危機感を抱いたロシアはフランス、ドイツを誘い、「日本が遼東半島を領有することは東アジアの平和を乱すから返還せよ。いやなら戦争も辞さない」と日本に三国干渉という圧力をかけ遼東半島を返還させました。
日本に返還させた遼東半島をちゃっかりと占領したロシアは南下政策を推し進め、日本の大きな脅威となりました。ロシアの脅威に具体的に対応せざるを得なくなった日本は、ロシアに宣戦布告しました。
白人支配の世界三大強国を相手取って行う宣戦布告ですから、それなりの覚悟を戦費の確保が必要です。
日本の国家予算が2.6億円だった当時、14.7億円の戦費を金利6%の国債発行で賄おうとしました。国家予算のなんと5.7倍という巨額です。今でいえば、年間予算が100兆円ですので、約600兆円規模の国債発行となります。国債販売の営業活動に苦戦した挙句、イギリス銀行団とアメリカのユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフ氏が購入してくれて調達することができました。ちなみに、その時発行した国債は1986年に完済されました。完済まで実に80年近くの年月がかかりました。
日本は江戸時代の幕末に開国し、初めて接する列強国を中心とした国際社会と接し、数々の不平等条約に苦しめられました。明治政府が欧米先進諸国から支援を受けて学び、近代化してゆく過程で、不平等条約を改定してゆきました。その原動力となったのが唯一の輸出品といえる生糸や絹製品の輸出です。日本全国の220万世帯にも上る農家の家には立派な養蚕室があり「お蚕さん」と呼ばれ大切にされ、ここで生産した高品質の生糸が世界市場を席巻したのです。当時ヨーロッパでは蚕の病気が蔓延しており、生糸は世界で日本しか生産できなかったのです。その後、パスツールが蚕の病気治療法を確立したため、1890年代には、日本は欧州市場から養蚕業がないアメリカ市場にシフトし、フランス製品を凌駕し大半は日本製品が占めました。第一次世界大戦前には80%、戦後には95%までシェアを伸ばしました。アメリカには保護すべき養蚕業がなかったため無関税でしたので、大いに儲かりました。最盛期の1929年の貿易額は年間4.3億ドル(現在価値で約4300億ドル 日本円で約46兆円)にも達しました。日本経済が蚕のおかげで大いに潤ったのです。日清戦争も日露戦争もこのような経済的背景があり決断したものと思います。明治政府の2大スローガン「富国強兵」「殖産興業」の原資は生糸貿易だったのです。翻って、コロナ禍戦争真っ最中の現在。この戦いに勝ち抜くためにはもっともっと戦費を調達する必要があります。国民が1年間働けなくても生活できるお金(恐らく約120兆円)を支給し、同額を起業補助金として準備し、今までにない発想ややり方で新事業を展開することを奨励するのです。
新型ウイルスの感染防止を考えると従来のビジネスモデルの50%の稼働で利益が出るビジネスモデルの構築が不可欠です。非接触、無人、キャッシュレス、デジタルの推進は言うに及ばず。面積が1/3以下で済むテイクアウト専門店や立地を選ばないデリバリービジネス、人件費という固定費がかからない無人店舗、稼働率30%で利益の出るホテル、自動電気自動車を走らせる規制緩和、公務員を半減させるRPAフォーマットを法律で決める、30代世帯が5年間地方移住すれば家賃・教育費・医療費・光熱費・通信費を全額補助し300万円の支度金支給する制度、過疎地域ごとに無料の無人電気自動車を配置しオンデマンドで走らせる、テレワーク実施企業には社員一人当たり50万円の補助金を出す、コピー紙課税でデジタル化を推進する等戦いに勝利した暁には、多くの起業者が誕生し、新たな産業が成長し、付加価値を創造し、ゆとりのある生産性倍増が実現し、子供人口が増えています。モノは地産地消が当たり前になりますが、貿易はオンライン製品が主流になってゆくのではないでしょうか?