No.1134 ≪コロナ禍をチャンスに変える方法≫-2020.10.22

2019年12月8日に武漢市で原因不明の新型肺炎患者が報告されました。この報告をつかんだ台湾はSARSの再来と認識し危機対応を取りました。おそらく世界で最も早い対応だったと思います。中国では最初の報告から3週間後たった12月30日に原因不明の肺炎患者を診察した武漢市の医師が仲間の医師と交わしたチャットが原因で一時拘束されました。翌31日にWHOに新型肺炎として報告されています。その後の動きは毎日の報道で皆さんもよくご存じでしょう。
日本で最初に話題になったのは1月16日。神奈川県の男性が武漢から帰国して感染が判明したからです。さらに1月25日に横浜港入港予定のダイヤモンド・プリンセス号の乗客が香港で下船した後に武漢ウイルスに感染したことが判明し、連日ダイヤモンド・プリンセス号の感染状況とともに世界中に放映されました。
例年より1/3減少したとはいえ約22900人の中国人観光客が「さっぽろ雪まつり(1月31日~2月11日)」に訪れて感染が広がった北海道は鈴木知事が2月27日から全国に先駆けて全校休校を実施しました。

日本が中国からの全面入国禁止を決断したのは鈴木知事の休校決定の1週間後の3月5日。習近平主席の招聘延期が決まった数時間後でした。遅すぎた決断でした。ちなみにアメリカは2月2日に全面禁止していました。
3月1日に厚生労働省から「3密防止」の呼びかけが始まり、「3密」は世界の標準語になりました。
3月11日にやっとWHOが待ちに待った「パンデミック宣言」を出し世界に注意を促しました。
3月24日には戦争以外の理由で史上初めてオリンピックの1年延期が決定しました。
3月21日~24日の3連休で爆発的感染が起きて連休明け2週間後の4月7日に安倍総理は「緊急事態宣言」を5月6日期限に発令し、人との接触を8割減らすことを全国民に要請しました。つまり、出勤するな、外出するなという戒厳令並みの要請です。都会から人は消えました。

全国の知事からはもっと早く発令してくれと悲鳴が上がっていましたが、経済を犠牲にしたくない政府は決断を先延ばししたように見えました。このころ、マスクが店から消えて、ネット上で高額転売が目立ちました。その出品者に政治家がいたのにはあきれました。感染リスクの高い医療機関においても治療に必要な防護服はおろかマスクさえ入手困難になり、ごみ袋やラップを代用してしのいだクリニックもあったそうです。税金の無駄使いで愚策といわれるアベノマスクが論議に上がったのもこのころです。

緊急事態宣言ですべての学校は休校となりリモート授業に切り替わりました。飲食業は営業自粛に追い込まれ事実上の休業要請となりました。府県をまたぐ移動にも制限が課せられ旅行関連業界、鉄道・バスは事実上の休業状態に入りました。人でごった返すGWは観光地だけでなくどこも人がいない景色が広がっていました。ANAやJALや新幹線の予約率は昨年対比で△99%となったのもこのころです。多数の便が無期欠航を決めました。テレビでは毎日どれぐらい外出が減っているかをスマホのGPSデータを利用して場所毎に%単位で報道していました。いずれ元の生活に戻るまで「政府を信じて我慢」していたのです。

ところが5月6日に緊急事態宣言が5月末まで延長されたことで空気が変わりました。(少なくとも私はそう感じました。)「我慢」は期限があるから忠実に指示に従うのであって、再延期されると「我慢」の糸が切れます。政府の言うことを聞かなくなります。この分かり切った現象を政治家や官僚が知らないはずはありません。
意外にも安倍総理は5月末の期限を1週間前倒しして5月26日で解除したのです。但し、府県をまたぐ移動の自粛は継続し、解除されたのは6月19日です。いったん移動や旅行が「社会悪」となった空気から解放されるには時間がかかりました。そのせいか飲食店や旅行が元に戻ることはありませんでした。回復したのはわずかだったと思います。多くの人は収入が減り、移動先で嫌がらせを受けると、動きません。まして、感染者は本人だけでなく家族全員が国賊のような扱いを受けて差別されるのでは、だれも感染リスクを冒してまで行動しません。
6月19日に府県間移動が解除されて2週間。また感染者数が増加し、「第2波」が予感され、わずかに回復した人々の動きはまた止まりました。付け刃で準備もできていないのに7月22日から始まった「GOTOトラベル」は夏休み期間中にもかかわらず閑散としていました。
政府の動きが何かおかしい。本当は終息しないのでは? これが日常になるかもしれないと思いだした「withコロナの段階」が訪れたのです。

そこで社会の空気が変わります。
パソナは東京から淡路島に本社を移転することを9月に発表しました。7月以降、日立・富士通・東レ・NTT・・・・と大手上場企業が在宅勤務の常態化を発表しました。多くの中小企業もコロナ禍における一時的な代用ではなく、リモートワーク、WEB会議、オンラインセミナーを積極的に取り入れるようになりました。
飲食業も8月にはモスバーガーやすしの銚子丸、9月にはサイゼリア、10月にはスターバックスとデニーズがテイクアウト専門店を出店しました。しゃぶ葉は手袋とマスク着用を承諾した顧客だけに店内飲食を行い、好調です。コロナ対策を完備した焼肉チェーンはどこも順調に回復しています。
ウーバーイーツに35%の手数料を支払っても利用する飲食店が3万店に達し、LINEの子会社の出前館も手数料は42%と高いですが快調に急増しているようです。
くら寿司は大阪なんばで入店から会計まで誰にも会わない非接触店舗を導入し順次全国展開中です。タクシー各社が便利屋として「お使いタクシー」を始めています。
まだ、元の生活に戻りたいという希望はあるものの、「コロナと生きる」と決断し、次のステップに一歩を踏み出している企業が増えてきた段階にきていると実感しています。