広告:11月12日(火)10:00~17日(日)17:00の1週間、沖縄県おもろまちの県立博物館美術館「おきみゅう県民ギャラリー」で絵画展覧会「第9回 ART GROUP MAX 6人展」(無料)を開催します。ご都合が合えばお立ち寄りくださいませ。
先週、熊野古道を歩きながら、熊野信仰が公家政治から武家政治に移り変わる役割を果たしたことを思い出しました。熊野は神秘的です。神武天皇は新宮から八咫烏の導きで熊野吉野を経て橿原でBC660に建国し東征を終えました。また、秦の始皇帝の命を受け蓬莱山に不老不死の薬を探しにやってきた徐福がBC200ごろに新宮に上陸しました。大海人皇子が出家し吉野に隠れて力を蓄え、天智天皇崩御後の672年に壬申の乱で蜂起したのは吉野でした。山川幽谷、樹木鬱蒼、豊富な地下資源、陸海に精通した強力な軍事力を持ち、古代出雲国と親密な同盟関係にあった吉野・熊野は時の権力者がなんとしても味方につけたい勢力だったことがわかります。
熊野信仰は古くから民衆に支えられ発達してきましたが、信仰面でも朝廷と深いつながりができたのは1090年の白河上皇による御幸がきっかけです。藤原摂関家の影響力が弱まったのをきっかけに自分の直系子孫に皇統をつなぎたいと望み、33歳の時、周囲の反対を押し切り、8歳の善仁親王(堀河天皇)を皇太子にたて即日譲位し、自らは後見人として上皇となりました。天皇は伊勢の神を信仰し奉仕することが習わしで数百に及ぶ荘園を財源として持っていました。では上皇はどうするかと考えた時に熊野を選択するのはごく自然なことでした。金銀及び丹生の一大産地の吉野熊野は地下資源だけでなく森林資源も豊富で莫大な財力を持っていました。一方熊野側にも中央と関係強化を図りたい願望があり双方の利害が一致したのです。朝廷の権威をバックに熊野信仰はますます発展しました。上皇の熊野御幸は儀式化され、天皇といえども京都の精進屋敷で沐浴潔斎し、頭巾・袈裟・杖をもって約30日かけて参詣し、食べ物も生物を食さず、川の中州にある本宮の神殿には川の中を歩いて向いました。上皇自ら実践されている熊野信仰の儀式を変更することはできるものではありません。それを変えた人がいた。
平清盛が権勢に近づくために熊野権現の利益を得ようと海路で熊野を目指しているとき、船に何物かが飛び込んできました。「曲者!」と身構えた家来がよく見ると魚の鱸でした。ホッとしていると、水先案内人として同船していた山伏が「これぞまさしく熊野権現のご利生、早速召し上がりなされ」と平清盛をそそのかした。
熊野参詣の途中なので精進潔斎しないといけないのに、生ものを食べろとは何たる無礼、家来は山伏に切りかかりました。清盛は「この鱸、早速料理させよ」と命じました。
血気はやる家来を押しとどめて清盛は「むかし、周の武王の船に白魚が飛び込んできたことがある。白魚が船に飛び込んでくるのは吉兆なのだ。食さなければ神意に背くことになろうぞ」と説明した。
武士が武士であることの最低条件は既成概念にとらわれない現実主義の精神であり、貴族(官僚)が貴族(官僚)であるための最低条件は慣習・掟・前例の遵守です。リスクをとってでも熊野権現の試験を受けた清盛はその後どうなったか。
平家物語は次のように語っています。
「それゆえであろうか、船に飛び込んできた鱸を食した後から清盛公の身辺には吉事が打ち続き。ご自身はとうとう太政大臣にまで上り詰められ、子孫の官途の出世も龍が雲に上るよりも早かった」
このころから中世の政治は公家から武士の時代に入っていったのです。
旧来のルール・慣習・掟・習わしにこだわらず平気でこれを打ち捨て、リスクを覚悟して手に入れたいものを手に入れる決断をする。なんとなく、日米の政治風景とダブルように思いますが、考えすぎでしょうか。
PwC英国が2017年2月7日に発表したレポートによると、「2042年までに世界経済の規模は倍増、中国はすでに購買力平価(PPP)ベースのGDPが米国を抜き世界最大の経済大国に。市場為替レート(MER)ベースでも2030年までに世界最大となる。2050年までにインドは米国を抜き世界第2位、インドネシアは第4位の経済大国となり、日本、ドイツなどの先進国を抜く見通し。2050年までに主要経済大国7カ国のうち6カ国は新興国が占める見込み。ベトナムは2050年までに世界で最も高成長を遂げる経済大国となり、予測GDPの世界順位は第20位に上昇。EU加盟27カ国が世界GDPに占める割合は2050年までに10%未満へ低下。英国は、Brexit(ブレグジット)後も貿易、投資と人材の受け入れにオープンである限り、成長率がEU加盟27カ国平均を長期間上回る見込み。トルコは、政治不安を払拭し経済改革を推進できれば、2030年までにイタリアを抜く可能性あり。ナイジェリアは予測GDPの世界順位が上昇する潜在力を持つが、自国経済の多角化、ガバナンス水準向上とインフラ改善が前提条件」とあります。
(出所:https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/world-in-2050-170213.html)
ちなみに上の調査で購買力平価のGDPランキングは1位:中国、2位:インド、3位:米国、4位:インドネシア、5位:ブラジル、6位:ロシア、7位:メキシコ、8位:日本だそうです。
過去の延長線上に安住の地はないということですね!