No.1334 ≪謙虚さとともに成功の幕が上がる≫-2024.10.16

今や世界のスーパースターとなった大谷翔平選手(30歳)の「謙虚さ」についてイギリスのガーディアン紙が記事を掲載し賞賛しています。「注目されていることを全く感じさせないふるまい」「とても謙虚で誰に対しても同じように接する」「驚くべき平常心」等いくら賛辞を並べても足りないようです。誰もが憧れ誰もが好感をもつ世界に類を見ない人物の一人です。

目加田経営事務所が提唱する「経営の黄金律」は全部で9箇条あります。1条は「市場はいつも豊穣」、2~7条は飛ばして8条が「いつも素明研一即行」、最後の9条は「ビジョンは実現する」。
今日は大谷選手を見習って8条の「いつも素明研一即行」をお届けします。
これは素直さ・謙虚さとともに人生の幕が上がったり降りたりするさまを言っております。素直で謙虚な方は誠実でチャンスの女神が微笑み、多くのご先祖様が味方をしてくれて、天上界ではよい方向に進んでゆくように神様が協力してくださいます。それは親鳥が卵の外からコンコンとつつき、雛が卵の内からトントンと互いに同じ一点をつつきあって殻を破る「啐啄同時」のように絶妙なタイミングで降りてきます。時には鬼面のようなおどろおどろしい形相で。

概して素直で謙虚な方は研究熱心で、一流思考です。決して「2番で良し」としません。
私たちは耳が2つ、口は一つありますので、まずよく聞く、そして少し話すことで意思疎通ができるように神様が作ってくださっています。ところが、自分の主張は延々として止まらないのに、人の話にはほとんど耳を貸さない方がおられます。聞くのは反論するためで共感ではないのです。まるで、口が二つあって耳は一つの生物のようです。なのに、位が高い人や利害のある人の話は聞きすぎるぐらい聞くのに、目下や子供、利害が絡まない方、中でも家族の意見には聞いているようには見えません。まるで30代の頃の私そのものです。

私は人の話を聞くのが苦手でした。転機が来たのは1995年1月17日に発生した阪神大震災の時です。被害にあわれたお客様のところにお見舞いに出かけました。鉄道や道路が破壊されているので歩いてゆくしかありません。お客様のところに行くと、無残に大破した社屋の庭でドラム缶ストーブの前でぼんやりされている社長の姿がありました。挨拶もそこそこにお客様は地震が起きた時のことを夢中で話されるのです。私たちにできることは心から素直に寄り添って聞くことだけです。そして、最後にその社長は「聞いてくれてありがとう。頑張る元気が出てきました」と涙ながらにおっしゃいました。どんな励ましの言葉よりも聞くことの重要性を実感しました。

また、職業柄、話題の会社にお伺いして成功の裏話を教えていただいたり、わからないことがあるとご縁を頼ってお会いすることがよくあります。あるとき、講演会の講師に引っ張りだこで日経ビジネスでも特集を組まれる業界では有名な社長にお会いしました。その社長とは旧知の間柄ではありましたが仕事のご縁はありませんでしたので会社の内容は何もわかりませんでした。ざっくばらんに「業界のことを教えてください」とお伺いしました。ド素人のつたない質問にもかかわらず、創業のいきさつ、業界構造、経営信条、今困っていること、今やっていることを資料や現物を使って、時にはご家族やプライベートなことまで丁寧に説明していただきました。
インタビューの時はアイコンタクトとうなづきとメモすることを大事にしています。すると「〇社長にはお会いになりましたか?」と聞かれたので「いいえ、ぜひお会いしたいと思っています」というと、「じゃあ、連絡してみましょう」といってその場でアポイントまで取ってくださいました。別れ際に、「失礼ですが、あなたは思った以上に謙虚なんですね。もっと上から目線で話されるのかと思っていました」とおっしゃいました。穴があったら入りたいとはこのことです。「相当偉そうにしていたようです。すみません」というのが精一杯でした。

ジェームズコリンズ氏「ビジョナリーカンパニー③衰退の5段階」(日経BP社刊)P77~P78にウォルマートのサムウォルトンの事例があります。要約引用します。
「1980年代後半、ブラジルの投資家グループが南アメリカのディスカウント・チェーンを買収した。買収した後、ディスカウント・チェーンについてもっと学ぶ方がいいと考え、アメリカの小売企業10社のCEOに手紙を書き、新しい会社を上手く経営する方法を学びたいので面会してほしいと依頼した。CEOはほぼ全員、依頼を断るか、返事すらよこさなかったが、サム・ウォルトンだけが例外だった。
ブラジル人の一行がアーカンソー州ベントンビル空港に到着した時、親切そうな白髪の老人が近づいてきて、『何かお手伝いできることは有りますか』と尋ねた。『サム・ウォルトンを探しているのですが』『私です』と老人は答え、自分のピックアップトラックに案内した。ブラジル人の一行はウォルトンの愛犬、オールド・ロイのとなりに乗り込むことになった。その後は何日か、ウォルトンはブラジルについて、南アメリカの小売業について、その他もろもろについて一行を質問攻めにした。夕食の後、自宅のキッチンで食器を洗いながらも質問を浴びせたという。最後になって、ブラジル人の一行は気づいた。

ウォルトンは世界で初めて1兆ドル(90兆円)になっても不思議ではない企業の創立者なのだが、何よりも自分たちから学びたいのであって、教えたいとは考えていないのである」

みなさんはどう思われますか。謙虚に学ぶ姿勢は素晴らしい。できそうでできない。企業が成長するに従って、報酬が増えるに従って、社会的地位が高くなるに従って次第に麻痺してゆく傲慢な感覚を是正してくれるのは「謙虚に学ぶ姿勢」ではないでしょうか? 謙虚さとともに成功の幕が上がります。