総選挙も終わり結果が判明しました。今回の政権選択選挙ではほぼすべての政党が個人消費を増やす方策を公約に入れておられました。果たしてどのような政策が出てくるか注目しておきたいと思います。
経済が発展する、GDPが成長する、一人当たり所得が増えるという意味でとても気になっている国があります。
ヨーロッパの小国「ルクセンブルグ大公国」です。目加田経営事務所の創業時に「地球を西回りに東京に進出する」と志を立てて、沖縄→シンガポール→ロンドン→ニューヨーク→ロサンゼルス→東京をスタッフ全員で数度にわたり旅をしました。それぞれの土地で事務所開設のために不動産会社も回りました。核になる方との出会いも作れました。まだまだ道半ばです。ヨーロッパではロンドンを中心にアッシジ、パリ、アントワープ、デュッセルドルフと気になる都市を回りましたが、まだルクセンブルグは行けていません。とても気になっている理由は・・・。
過去30年間にわたり一人当たりGDPランキング世界一の座をキープしているのが「ルクセンブルグ大公国」です。一体どうすればそんなことができるのか、一度は訪れてみたいと思っている国です。ドイツとフランスとベルギーに囲まれた内陸の国で、面積は2586平方キロメートル。鳥取県(3507平方キロメートル)より小さく佐賀県(2441平方キロメートル)より大きいぐらいです。人口は2020年現在63.2万人です。日本の県別人口ランキング第46位の島根県(67.2万人)より少なくて第47位の鳥取県(55.4万人)より多いぐらいです。
GDP成長率は過去30年間で5.8倍。日本は1.6倍。確実に成長しています。GDPの大きさは732億$(日本のGDPの1/70)で1$=110円とすると約8兆円で、日本の県別ランキングで第17位の群馬県(約8兆円 2016年調査)に相当します。
では一人当たりGDPはどうかというと117千$。1$=110円換算で1287万円になります。2016年の日本の県別ランキングダントツ第1位の東京都の一人当たり県民所得697万円の約1.84倍になり、第10位の群馬県(407万円)の3.2倍、第32位島根県(345万円)の3.7倍、第38位の佐賀県(331万円)の3.9倍、第44位の鳥取県(312万円)の4.1倍です。
スゴイと思いませんか? 小さいからできる? タックスヘイブンで危ない資金を集めているから? 金持ちばかり住んでいるから? 私はとても興味を持っています。ヨーロッパ、中でも北欧の国々はどこも魅力的です。そこから学ぶべき点がたくさんあると思っています。
所得格差の大きさを表す指標にジニ係数があります。ジニ係数は0~1で表現され、「0」は全く格差のない状態で、「1」は一人がすべての富を所有している状態を表します。社会が乱れる警戒ラインが0.4以上といわれ、日常的に暴動が多発する状態が0.5以上といわれています。2018年のOECDの統計では、日本は過去20年間近く0.32を維持しており、比較的格差がない状態と言えます。一方、ルクセンブルグの1995年は0.27と低いですが、徐々に格差が広がり2018年には0.32と日本と同じ水準になりました。押しなべて北欧はジニ係数が0.3前後と低く移民が多い割には格差が小さいといえます。これも一つの大きなノウハウです。ちなみに移民の国アメリカはオバマ大統領時代の2011年~2016年は0.39と高く、トランプ大統領になって0.38と若干ながら是正されました。
また、中国は2016年まで0.51と格差の大きさがトップレベルのジニ係数で推移していましたが、2017年より統計データが見当たらなくなりました。
ルクセンブルグの産業では鉄鋼業が主要産業で、2006年にインドのミタルグループの傘下に入り世界トップ企業になりました。鉄鋼業以外にも多種多様な産業が存在しますが、もっとも際立っているのが金融産業、中でもスイスに匹敵するプライベートバンキング産業、再保険ビジネスが成長しています。この産業の成長がGDPの成長につながっています。タックスヘイブンを誘導していると批判はあるようですが、税率も低く、世界中の企業がルクセンブルグに本社を置いています。
ルクセンブルグの歴史を超簡単におさらいします。もともとハプスブルグ家の支配地であった関係でスペインやオーストリアの支配下にありましたが、フランス革命時にはフランスの支配下になり、ドイツ連邦加盟時にはオランダ国王を元首に抱くルクセンブルグ大公国となり、その後のベルギー独立革命の時はベルギーと行動を共にし、ベルギーの支配下になりました。その後、犬猿の仲であるフランスとドイツの緩衝地帯として永世中立国となりましたが、ナチスドイツに占領され、戦後は永世中立国を放棄し、独立独歩の道を歩み始めて現在に至っています。
ルクセンブルグと言えば「EU」成立の立役者です。
1957年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)と欧州経済共同体(EEC)がその源であり、最初のメンバーがベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツの6カ国でした。中でも主導的な役割を果たしたロベール・シューマン氏という人はルクセンブルグの人で、ドイツで学びフランスで首相になった人です。対立するドイツとフランスの両方の人脈を持つシューマン氏だからこそ実現できたEU構想だといえます。約千年にわたり近隣強国に翻弄された経験から、柔軟な発想でパワーバランスのとれた高度な地政学的判断は見事なものです。EU構想にヨーロッパ最大強国のドイツとフランスを懐に取り込むことで自国の安定を図ると同時に、おいしい果実も手に入れています。日本のことわざに「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」とあります。まさにこのことでしょう。
2020年8月27日(木)~9月2日(水)にイタリア・アッシジで展覧会を計画し参加者まで決まっていましたが、コロナ禍で中止しました。来年再挑戦する予定です。その時にルクセンブルグまで足を延ばして調査に行きたいと思っています。あなたもご一緒しませんか?