No.1183 ≪これからの3か月で日本の将来が決まる≫-2021.10.13

緊急事態宣言及びまん延重点措置の全てが解除されて初めての選挙となる10月31日の衆議院選挙の結果は直接的にも間接的にも会社の経営に大きな影響を与えます。ワクチン接種が進みコロナとの戦いにはそれなりに終止符が打たれ、今度は経済の復興がメインになります。先進国は経済の立ち上げに舵を切り、目覚ましい復興が進む中で、唯一出遅れている日本も復興に進路を切ることになります。先進国の経済の立ち上がりは、内需の急速な拡大をもたらし、エネルギーや素材、半導体等の供給不足を引き起こし、日本は入手できない状態に至っています。たとえ輸入できても異常な価格高騰で採算が合わない状況になっています。世界中がコロナ禍で苦しんでいたときの方がサプライチェーンは健全でした。復興の段階入って、最初に異常値が出たのは、輸送コンテナ運賃です。6倍から10倍に跳ね上がり、次に異常値が出ているのは原油です。1バーレル(約159リットル)当たり年初では40$だったものが今では倍以上になっています。特に8月以降に急騰しています。
原油に引きずられるようにLNGも年初100万BTU当たり2.6$だったのが5.5$と約2倍に跳ね上がっています。これらのエネルギーの高騰は半年後には電力、化学製品、燃料等に反映されるため、来年の春以降は値上げラッシュになるのではないでしょうか?

マスコミ報道もあらゆる媒体で感染者数の多さを伝えている時はニュースが熱気を帯びて勢いがありましたが、いまはすっかりしぼんでしまってあたかも問題は過去の出来事のような印象がありますが、どっこい! 経済復興に力点が置かれるこれからが本当の「非常時」になります。今度はコロナの感染者のように現象が見えませんので厄介です。
企業経営をしている立場の方は本当の試練、苦境、困難がこれから1年間始まると肚をくくっておく必要があります。あなたの力量にぴったりの難題が出されますから、肚さえくくっておれば大丈夫です。

コロナ禍のおかげで業態変更に成功した会社、経営改革を推進した会社、生産や営業にイノベーションを起こした会社、社内システムを見直して生産性倍増に再構築した会社、M&Aを進めて経営改革をした会社。実に多くの会社がコロナ・インパクトをきっかけに考えを変え、行動を変えて、成果を上げておられることと思います。平常時にはできなかったことが、いとも簡単にできるようになったのではないでしょうか? キャッシュレス化の進展に伴うDXの浸透は目を見張るものがあります。IOTがいたるところで進んでいます。SDGSも単なる理念イメージから現実のビジネスモデルに進化しています。働き方もリモートワークの常態化により会社と個人のそれぞれのメリット・デメリットが見えてきました。今後さらに改善され進化するでしょう。本当の「非常時」はこれからです。

「非常時」で参考になるのは今から117年前の日露戦争です。1904年にロシアに宣戦布告した原因は、朝鮮半島最後の王朝である李氏朝鮮の親子喧嘩にかかわり、日清戦争を戦う羽目になったためです。「眠れる獅子」に戦いを挑むとはなんと無謀なことかと笑われましたが、日清戦争に勝利して下関条約で朝鮮の完全独立と台湾及び遼東半島の割譲、賠償金2億テール(分割金利等を含めると現在価値で約43兆円)が合意された3日後に、日本が遼東半島を領有することは南下政策を取るうえで弊害になると危機感を抱いたロシアはフランス、ドイツを誘い、「日本が遼東半島を領有することは東アジアの平和を乱すから返還せよ。いやなら戦争も辞さない」と日本に三国干渉という圧力をかけ遼東半島を返還させました。
その後遼東半島をちゃっかりと占領したロシアは南下政策を推し進め、日本の大きな脅威となりました。ロシアの脅威に具体的に対応せざるを得なくなった日本は、ロシアに宣戦布告したのです。
世界強国ロシアを相手取っての宣戦布告ですから、それなりの犠牲を伴う覚悟とそれを遂行する戦費の確保が必要です。当時の日本の国家予算は約2.6億円(現在の約52兆円)。その時に必要な戦費は約15億円(現在の約300兆円)。なんと国家予算の6倍にあたります。これを金利6%の国債発行で賄おうとしました。今でいえば、年間予算が100兆円ですので、約600兆円規模の国債発行となります。どの国もいろんな理由をつけて負けるとわかっている日本の国債を買ってくれません。国債販売の営業活動に苦戦した挙句、イギリス銀行団とアメリカのユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフ氏が購入してくれて調達することができました。ちなみに、その時発行した国債は1986年に完済されました。完済まで実に80年近くの年月がかかりました。

世界最強と言われたバルチック艦隊を撃破したのを潮時とみたアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領がロシアとの停戦の仲介に入ってくれました。世にいうポーツマス条約です。驚いたのは世界中の国々です。中でも白人の帝国主義の植民地となっていたアジアの人々は熱狂しました。白人国家の植民地支配から解放されることは永遠にないと半ば諦めていたアジア諸国の人々の心に希望の灯がともり、「やればできる。我々も日本のようになろう」と憧れたのは間違いありません。なにしろ、歴史上どの国も実現できなかった白人国家に勝利したのですから。

もし、時の政権が「非常時」という認識なら国債発行の上限は撤廃されるのではないかと思います。財務省のトップである現役次官が文芸春秋にバラマキ批判論文を投稿して話題になっていますが、あれは平時の論理です。 「失われた30年」の間に先進国で唯一と言ってもよいぐらい成長しない国(実質はマイナス成長)となった日本を襲ったのがコロナ禍です。どのような政策が争われるか、それは中小企業経営にどのような効果をもたらすのか、注目して見たいと思っています。