No.1184 ≪あるタクシー会社に学ぶ≫-2021.10.22

私の運転免許はゴールドカードですが、車を持っていませんし、運転もできません。主な移動手段は顧問先の社長に送っていただくことと公共交通とタクシーです。そのタクシーも地域によってタクシー会社を決めています。

京都ではMタクシーとYタクシーを利用させていただいており、メインはMタクシーです。Mタクシーは料金の安さとドライバー品質の高さで評判です。普段はもちろん、雨の日や雪の日は傘をさしてドアサイドに立って迎えていただきます。降りるときは運転席から外に出て危なくないように誘導してくれます。業界に先駆けて歩合制を固定給制に変更しタクシー料金の値下げ訴訟を起こして勝利された会社です。それ以来全国のタクシー料金の自由化が進んだように思います。また、自宅と空港間の乗合タクシーサービスや空港定額送迎サービス、メーター料金5000円以上は半額になるサービス等色々と工夫をされています。車内で読む新聞を発行したり、いち早く車内モニターを装備したり、常に一歩先のサービスを展開されています。

一番の不満は、電話がつながりにくいことです。また、やっとつながってもどれぐらいで到着するか何度聞いてもこたえてくれないことです。ひどい時は30分以上待たねばならない時がありました。ある冬の日に翌朝の予約をしたとき「明日は雪の予報があるのでお迎えに行けない場合がります。ご承知いただけますか」といわれました。
ほとんど時間通りに来るのですが、予約時にそういわれると不安になります。その時は別のYタクシーにお願いします。Yタクシーは到着時間も明確だし、雪の日の予約も確実です。ただ、予約料がかかるのとメーター料金がMタクシーと比べて50%程度高いです。ドライバー品質は平均以上ですが、Mタクシーに比べると若干見劣りがします。
しかし、ⅯタクシーにできないことをYタクシーはできますので、両社を利用させていただいています。

Mタクシーを利用した時、「もう少しつながりやすいと助かるんですけどね」とドライバーさんに言うと、「Uberならすぐつながりますよ。お客様からも好評です」とアドバイスいただきました。
「Ⅿタクシーさんのタクシーアプリじゃなくて、Uberですか?」と聞くと、「そうなんです、当社のアプリは基地局経由なのでそれほど早くないようです。私たちドライバーは利用したことが無いのでわかりませんが」とのこと。
「確かに。私もダウンロードしましたが電話より使い勝手が悪いです。今度Uberを使ってみます。」「そうなさってください」

そして、早速Uberを使うと、今まであいまいだった到着時間がリアルタイムで表示され、最大でも5分以内で到着しました。しかも、クレジット決済なので、降車時がとてもスムーズでした。
Uberを利用してから「タクシーを呼びたい時に電話がつながりにくい」という唯一の不満がものの見事に解消され、Mタクシーへのロイヤリティが高まりました。それまでは「電話がつながりにくい」不満を高品質のドライバーにぶつけていたため気づかなかったブレーキの踏み方の滑らかさや揺れのない乗り心地のすばらしさを実感しています。
労働集約型のサービス業は本当に大変です。特にタクシーは一人一人の品質が会社の品質でありブランドなので、人材の質を向上させることが至上命題です。

Ⅿタクシーの創業者は毎朝6時の交代時間になると基地局からドライバーに呼びかけました。一度しか聞いたことが無いのであいまいな記憶で間違っているかもしれませんがご容赦ください。
「ドライバーの皆さん、ご乗車中のお客様、おはようございます。Mタクシーの〇〇でございます。4つの挨拶を必ず励行してください。しなかった場合は料金をいただかないでください。『ありがとうございます。』『お待たせいたしました。○○様ですね。ⅯタクシーのMがご案内します』『どちらまでですか』『かしこまりました』この4つの挨拶の実践をしてください。無線を受ける時はカセットレコーダーでお客様の住所、名前を録音して間違いがないようにしてください。ドライバーの皆さん、今日も安全運転でお客様をお送りください。乗車中のお客様、お耳を煩わせまして申し訳ございませんでした。行ってらっしゃいませ」
今ではカセットテープでの録音はモニター表示変わっていますが、そのほかは今でも実践されています。将来的には自動運転タクシーや空飛ぶタクシーが一般化するでしょうが、それまでは労働集約型でヒューマンサービスの質が業績の明暗を分けます。 基地局に365日24時間マンパワーを常駐させ、最新設備への投資で維持固定費もかかります。自社設備を利用したいのはやまやまですがコロナ禍で顧客が激減すると乗車効率を高めないと採算が悪化します。マンパワーを減らすとさらにつながりにくくなりサービスが低下してクレームが増えます。そこで従量制手数料はかかっても固定費は増えないマッチングアプリを併用して利用することで対策を打たれたようです。基地局のDX化で無人AI配車により乗車率を高度に高めてもドライバー品質で決まってしまいます。サービスブランドを追求することで、次の時代も先端を走ることができると思います。ⅯタクシーとはMKタクシーの事です。