7月24日はコロナ禍がなければ、竣工した東京国立競技場で「2020東京オリンピック」開会セレモニーが華やかに行われていたことでしょう。コロナ禍の蔓延で3月24日に、1年延期が決定し、1年後の開会日は7月23日になりました。その時は、世界各地で進む分断の危機から脱するきっかけとなる「天の時」と世界最長の国家の歴史を持つ日本という「地の利」が呼応して世界人類が「人の和」でつながることを期待したいとおもいます。
7月22日は「GO TOトラベルキャンペーン」の初日でした。テレビ報道で日本民族のすごさを感じた感動的な光景を目にしました。それは、空港や駅で4連休を活かして旅行に出る旅人のインタビューです。
60代の男性は「キャンペーンの詳細は旅行社のカウンターでもわからなかった。たとえ割引対象外でも旅行をすることで誰かのお役に立ちそうだから行くことにしました」。
20代の女性は「キャンペーンの詳細は決まっていないみたいだけれど、後で申請できるらしいので、割引をあてにしないで旅行を楽しんできたい」。
阪神大震災の時も、東北大震災の時も日本人の行動は実に立派でした。暴動が起きることもなく、救援物資を我先に争うこともなく、商店が略奪されることもなく、整然と並んで順番を待つ姿を見て世界は驚嘆し賞賛しました。
今回のコロナ禍でも、強制力のない「自粛要請」に忍耐強く従い、自粛による減収を補うにはあまりにも少額の補助金が数か月以上届かなくても、暴動が起きることもなく、ただ、耐えて、工夫して、明るく笑っている姿を見て、「なんという民族だ」と驚かない人はいないでしょう。
今回の「GO TOトラベルキャンペーン」も、政治的思惑で、なんら現場の都合を考えず、当初予定よりも大幅に前倒しされ実施されました。結果は「むちゃくちゃ」です。司令塔である政府の判断があまりにも稚拙で、小学生でももっとしっかりした計画を組むのではないかと思えるぐらいのずさんさです。このキャンペーンに期待しておられた旅行関連企業(旅行社、ホテル棟宿泊施設、観光交通企業、航空業界、飲食店、土産物店、各種観光サービス業、付帯関連企業等)は、あまりにもずさんで無責任な現実に怒り、現場の悲惨さは目も当てられない状況ではないかと思います。
何が「むちゃくちゃ」かといいますと、その場しのぎの準備体制のまずさです。当初は国土交通省、経済産業省、農林水産業が一体となって需要喚起キャンペーンの総合事務局を6月8日までに公募しました。キャンペーン期間は7月下旬ごろから2021年3月末までの8か月間です。ここまでは計画的で戦略的です。
ところが、運営費予算が約3500億円と高額であったこともあり、持続化給付金の運営事務局の丸投げ問題(いわゆる電通問題)の二の舞を避ける意味で、国土交通省の「GO TOトラベルキャンペーン」、経済産業省の「GO TOイベントキャンペーン」、農林水産省の「GO TOイーツキャンペーン」の3つに分割して3週間遅れで再公募されました。
6月29日に先陣を切って「GO TOトラベルキャンペーン」が公募され5組が応募して事務局が決まりました。事務局が決まると、あろうことか開始時期が予定の8月初旬から7月22日に2週間前倒しされる事態となり、準備期間は当初予定から5週間短縮されてしまったのです。
選ばれたグループは、「JATA、ANTA、日本観光振興協会、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、東武ツアー」のグループです。後援は、全旅連、日本旅館協会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟、リクルート、楽天、ヤフーが名を連ねています。行ってみればALL JAPAN体制ではありますが、コロナ禍下における需要喚起という難題を事務局に丸投げされた形となりました。事務局は政治のドタバタ続きに翻弄され、できることならば辞退したいぐらいきついと思います。必然的に圧倒的多くの観光関連企業の現場は蚊帳の外になり、テレビ報道で概要を知る状態になっていると思います。
今わかっている詳細の一例です。「GO TOトラベルキャンペーン」を活用しようと思うと事業者は事前に参加登録する必要があり、WEBか郵送で申請します。ところが、WEB窓口は7月末にしか開設されません。さらに、突然決まった「東京都発着は対象外」「若者団体&老齢者団体は対象外」等、様々な決め事も、基準があいまいで事務局に丸投げ状態です。一部報道では、若者とは29歳以下、高齢者とは60歳以上、団体とは15名以上だとか。但し、これも従来の流れに沿って考えた憶測であってだれも明確に示してくれていません。
東京除外によってキャンセル料が発生しても政府は補償しないと言っていましたが、あまりの反発の大きさに急遽補償すると方針転換し、やれやれと思ったら、役所独特の細かい条件が付いていたり、グループや団体のリーダーが東京都民でなければ、東京都民が混じっていても不問だとか。参加者から「東京都民です」と聞いてしまうとOUTだけれど、聞かなければ身分証まで不要なのでOKだとか。少し頭の良い方が、ずるがしこく対応すれば、税金をつかって利益を稼げるように見えてしまう抜け穴がいっぱい張り巡らされていそうです。
こんな「むちゃくちゃ」にも今を乗り切るべく不満も言わず柔軟に愚直に対応している民族はすごいと誇らしく思います。
政府がコロナ禍対策として、200兆円超というアメリカに次いで世界で2番目に巨額の対策を打ち出しています。しかし、一番最初のコロナ禍初期の2月13日に発表された対策費は、「うそでしょ!」と思えるほど世離れした金額(たった153億円)でした。次第に、事の重大性と全国民に一定の感染予防行動を要請する上で対策費は圧倒的に足りないことに気づいたのでしょう、3月10日には約2兆円、4月6日の緊急事態宣言前には実に巨額の事業規模で108兆円となりました。6月12日の第2次補正予算では事業規模で約160兆円の予算が成立しました。合わせれば、約270兆円になります。私は今でも500兆円必要だと思っていますが。
実際の税金投入(いわゆる真水)では約30%程度でしょうがそれでも過去最大、世界最大級といっても間違いないと思います。それだけの意気込みで成立させた予算なのに、いざ実行となると、詳細を詰めないままで丸投げして、問題が出ればその都度決定するという今のやり方は、政治も行政も責任放棄している状態に見えます。
7月21日付日経新聞の見開き両面に宝島社の広告が痛快でした。
「最後は勝つ。上がダメでも市民が勝つ」 実に言い得て妙です。実に批判精神旺盛で、実に楽観的で、実に見事なコピーです。「上がダメでも、市民が勝つ」 本当にそうです。私たち中小企業経営者は、難解な役所文書に悩まされ特典にありつけなくても、限られた接待交際では役人を接待できなくて抜け道情報を入手できなくても、機会損失があったとしても、申請が通らなくても、結果的に失敗しても、希望を失わず、「愚直に」「忍耐強く」地面を足で踏みしめて着実に前進し生き残りましょう。