No.1244 ≪「不安」を活かす≫-2023.1.20  

今は先行き不透明で、不確実で、多層多重に絡み合った複雑系で、しかも曖昧模糊とした時代です。2010年ごろからVUCA(ブーカ)時代と呼ばれており、ご存じの方も多いと思います。
Volatility(不透明な)、Uncertainly(不確実な)、Complexity(複雑な)、Ambiguity(あいまいな)の頭文字をとってVUCAと言います。

昭和の高度成長時代(1960~1980年代)は、明日は今日よりもよくなることが当たり前で、物価も上がるが、給与はそれ以上にあがり、会社の業績も向上しました。ドルショックやオイルショックで不安定化しましたが、概ね成長軌道を走っていました。何をすればどうなるということがはっきりしていましたので、将来に対する不安より希望の方が大きかったです。不満もなかったわけではありませんが概ね満足の方が勝っていました。それは米ソに代表される東西冷戦の最中で、資本主義と社会主義の対立というとてもシンプルな構図だったからだと思います。

そして元号は平成(1989年)になりました。ベルリンの壁が崩壊し、対立軸がなくなった世界はアメリカ一強時代を迎えます。「パックスアメリカーナ」と呼ばれた時代です。対立軸がないというのは極めて不安定で、不確実になります。覇権国アメリカの意向が世界を動かしていました。金融面ではデリバティブが発明され世界中を席巻しました。そしてついに1995年のWindows95のリリースと時を同じくしてインターネットの商用化が始まりネット社会がはじまりました。ベルリンの壁が崩壊したころ、中国のGDPは0.3兆$(日本は3兆$、アメリカ6兆$)でしたが、鄧小平の改革開放路線により急成長を遂げ、WTO加盟を実現した2001年には1.3兆$(日本は4.4兆$、アメリカ11兆$)と10年で4倍成長しました。そして決定的に中国がプライドと中華の自信を取り戻したのが2003年の有人宇宙飛行の成功です。中国空軍の楊利偉(ヤン・リィウェイ)中佐が偉業を成し遂げたのです。当時上海にいてこの変化を目の当たりにしました。というのは、それまでは上海の街を歩くと中国人の劣等意識からくるのでしょうか、鋭い監視や警戒の視線を感じました。しかし、有人宇宙飛行が成功してからは、その視線は消え、誇りと優越感に満ち溢れ私たちは全く眼中になくなりました。コロナ前の2019年には中国のGDPは14兆$(日本5兆$、アメリカ21兆$)まで成長し、アメリカを脅かし始めています。米ロ中三極時代の幕開け、VUCAの時代になったのです。

2020年から今も続くコロナ禍、2021年10月のグラスゴーCOP26でのカーボンオフ決議に伴うエネルギー高とSDGSの盛り上がり、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻、中国の台湾併合の言動、北朝鮮の不気味なミサイル威嚇。国連の常任理事国ロシアによる他国侵攻は国連の機能不全を顕在化させ、世界調和の価値観を根本的に崩壊させました。力に物言わせた強引なやり方に対して世界はなんと無力かを如実に明らかにしてしまったからです。75年前の冷戦時代以上に複雑な構図はあらゆる方面で不安定化をもたらし、VUCAはますます進みました。

VUCA時代を生きる私たちはどうすればよいのか。
今日より明日が明るいとは限らない、先が見通せない、地面が抜けないとは言い切れない不確実な時代の真っただ中にあり、漠然とした不安が渦巻いて悲観的にならざるを得ない状況にいます。

こういう時こそ、思考の三原則(安岡正篤師)に立ち返ることが大事ではないでしょうか。つまり、「長期的に見る。多面的に見る。根本的に見る」のです。宇宙は光と同様に生成化育し造化しており、希望の未来に向けて一方通行で進んでいます。太陽が朝を連れてきます。春は厳しい冬の間に見えないところで着実に準備し出番を待っています。経営者は太陽に、朝に、春にならねばなりません。将来に向けて「不安」よりも「希望」をもち、人に対して「猜疑」ではなく「信頼」をもち、金に対しては「入る」を量って「出る(いずる)」を制し、社会に対してはGIVE&GIVEの精神で私欲よりも大欲をもち、世のため人のため公益を一番に考えることが大事です。石田梅岩師はこれを「先義後利(せんぎごり)」と提唱されました。
これからしばらく続くVUCAの時代は、私欲ではなく公欲、自己中心ではなく公中心に生きる姿勢が重要ではないかと思っています。

私たちは、人類の英知として「引き寄せ」の法則を知っています。「類は友を呼ぶ」ともいいます。
不安は新たな不安を引き寄せてパワーアップし手に負えなくなります。これに唯一打ち勝てるのは「希望」を引き寄せパワーアップすることです。暗いと不満をいうよりは進んで明かりをつけましょう。それでも地球は回っているのですから。