「旧盆(今年は9月4日~6日)が終わると翌春にかけて新しい大きな変化が起きる」という私の経験則があります。例えば、2019年には香港デモ、日本では消費税10%増税(10月)、コロナ出現(12月)。2020年にはコロナパンデミック宣言(4月)と世界中で鎖国政策、コロナワクチン開発成功(年末)、東京都緊急事態宣言(1月)とコロナ一色でした。2021年はコロナ禍でアフガニスタン政変(8月)とロシアのウクライナ侵攻(2月)が勃発。2022年にはコロナ禍の影響で物価が高騰、トルコ・シリア大地震発生(2月)。2023年はハマスの奇襲攻撃によりガザ戦争勃発(10月)、日本では能登半島沖地震発生(1月)。2024年は日本では石破総裁が誕生し、アメリカではトランプ大統領が誕生しました。
さて今年はいきなり石破総裁が辞任(9月7日)、トランプ大統領の立役者と言われるチャーリー・カーク氏暗殺(9月10日)があり、政治における新たなパワーバランスが構築されそうです。
そのような中で、中小企業経営者としては2026年をどう経営するかを旧盆が明けた今から10年後の2035年を見据えて沈思熟考モードに入らねばなりません。まずは世界経済(特にアメリカ)と日本経済の現状把握です。コロナ前の2019年と直近確定値が出ている2024年を概算比較します。2025年は推計値なので省きます。
まずアメリカです。
名目GDPは21.4兆$→27兆$(+26%)、実質GDP(2015年基準)は19.1兆$→22.1兆$(+16%)で鼻息が荒いです。失業率は3.7%→4.0%と若干上昇気味ですが依然として完全雇用状態にあり、インフレ率はコロナ禍の1.8%→3.2%と上昇しており、その結果政策金利は2.2%→5.3%に利上げされました。今後の動向は微妙です。
貿易では輸出額は2.5兆$→3兆$に増加しましたが、輸入額も3.1兆$→3.8兆$に増加しましたので貿易赤字は解消できていません。輸出ベスト5はカナダ17%、メキシコ16%、中国8%、日本4%、ドイツ4%で、輸入ベスト5はメキシコ15%、中国13%、カナダ12%、日本5%、ドイツ4%です。中国とは大きな貿易赤字となっています。
また、アメリカのGDP構成比は個人消費約67%、設備投資約18%、政府支出約17%、純輸出約△3%で圧倒的に個人消費のウェイトが高い構造ですので物価対策や金利政策が重要なポイントになります。
所得階層別世帯数は年収1万$未満6%、5万$未満32%、10万$未満32%、20万$未満22%、20万$以上8%で家計支出を控除した純損益で見ると、年収1万$未満では△1.8万$赤字、5万$未満では△0.7万$の赤字です。年収5万$未満の赤字世帯は全体の38%で5100万世帯(人口換算で約1.3億人)に上り政府の補助金やフードスタンプや借金で生活しています。10万$未満で+0.7万$、20万$未満で+3.7万$、20万$以上で+11.4万$と格差が開いています。世界GDPの25%を占めるアメリカの名目GDP(約27兆$)の67%が個人消費ですので18兆$です。この購買力こそトランプ大統領が世界をかき回すパワーの源泉です。今年もトランプ大統領の一言一句、一挙手一投足に世界が注目せざるを得ないでしょう。
では日本の状況はどうでしょうか。
名目GDPは5.1兆$→4.2兆$(△17%)、実質GDP(2015年基準)は538兆円→547兆円(+1.7%)で停滞気味です。失業率は2.4%→2.6%と若干上昇気味で人手不足気味です。インフレ率は0.5%→2.8%と高騰しており実質賃金は依然としてマイナスです。またインフレ懸念から政策金利は△0.1%→+0.1%に利上げされました。
貿易では輸出額は7050億$→7500億$と増加し、輸入額も7200億$→8200億$と大きく増加し貿易赤字になりました。輸出ベスト5は中国23%、アメリカ19%、韓国7%、台湾7%、香港5%。輸入ベスト5は中国21%、米国11%、豪州7%、サウジ5%、韓国4%。
日本のGDP構成比は個人消費約55%、設備投資約15%、政府支出約20%、住宅投資3%、純輸出0%です。総務省「家計調査(二人以上の世帯)」「全国消費実態調査」によると、個人消費に影響を与える日本の世帯数約5000万世帯の所得構造は、下位20%の世帯所得は200万円・損益△30万円、20%~40%の世帯所得は350万円・損益は△10万円の赤字、次の40%~60%の世帯所得は500万円・損益は+20万円、60%~80%の世帯所得は700万円・損益+100万円、80%以上の世帯所得は1200万円・損益は+350万円となっています。
世界GDPの4%の日本GDP(約4.2兆$)の60%が個人消費に寄与すると考えると2.5兆$が日本の購買力といえます。なんとアメリカの1割もありません。
2025年時点の人口でみるとアメリカは毎年1%増加し3.4億人で平均年齢39歳(出所:Census Bureau)。日本は毎年1%減少し1.2億人で平均年齢49歳(出所:人口問題研究所)。
数や規模やパワーだけでみると戦意喪失しそうですが、それでは生き残れません。日米比較だけでなく会社の大小比較でも同じです。では、どのようにしてパートナーになればよいでしょうか?
年齢を重ねて老化することを「経年劣化」ととらえるか「経年優化」ととらえるか、どこから見るかで価値が変わりますね? 同様にパワフルな人と静かな思索の人と同様、何をもって取り組むかで結果は全く変わります。ではそれは何かといえば、私は「文化力」だと思います。世界最古の歴史を持つ日本が育んできた文化はそのほとんどが勝敗を争うのではなく、相互研鑽・切磋琢磨し、修身することを目的としています。柔道、剣道、弓道、茶道、華道、香道、書道等の「道」の修練には終わりはありません。それが「文化力」です。 私たちの製品やサービスに日本の文化力を加味することで価格よりも価値を提供できるようになると思っています。
2026年はあなたの会社の製品に「文化力」を加味しませんか?