No.1349 ≪伸びる建設市場≫-2025.2.5

うれしいニュースです。「老朽化した宝塚市立病院の建て替え費用の一部として個人から254億円の寄付を受けた」と山崎宝塚市長が2月3日に発表しました。寄付者のO氏はキーエンスの創業期メンバーとのこと。助けられた人は助ける人になる日本の寄付文化のきっかけになれば素晴らしいです。

さて、2025年1月29日に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故で落下したトラック運転手の一日も早い救助を祈ります。明日は私が巻き込まれるかもしれない事故です。まさか道路が陥没するかもしれないと思って運転したりバスに乗ったり歩いたりしている人はいないと思います。

真相究明はこれからですが、専門家の解説では、直径4.75mという巨大な下水道管に発生した硫化水素が酸素と結合して硫酸となり、それが管内側の表面に付着することで腐食が進み、開いた穴から土砂が次々に管に落下して流されることでいつの間にか道路下には大きな空洞ができおり、何かの刺激で荷重に耐えられなくなって落下したそうです。地上の変化と異なり地下の変化は未知数で検査も多大な時間と労力とコストと危険がかさなります。天地人社の宇宙衛星を利用した陥没探査、ジオリサーチ社の地中可視化技術等は有望ですが、全国の必要な地下インフラを調査するだけでも相当な時間がかかるそうです。

国土交通省の「社会資本の現状と将来予想」 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html によると、 2030年で設置後50年を経過するインフラは、道路及び2m以上の橋では約55%に当たる40万件、トンネルでは約36%相当の4000か所、河川の水門等では約23%にあたる1万か所、下水道では約16%にあたる8万km、港湾施設では約43%に当たる3万施設もあるそうです。他に住宅、空港、鉄道等もあります。

検査してリスクが判明すれば「危険なら補修すべし」と誰もが思いますが、「原資はどうする?」「本当にリスクなのか」「どこがやるの」という声が出て進みません。次の事故が起きるまで忘却の彼方になりそうです。
社会資本投資と名目GDPの相関関係について大林組の面白いデータ「参考資料:建設投資推計とGDPの推移(1960~2020年度)」を発見しました。
https://www.obayashi.co.jp/chronicle/130th/archives/chapter3_5.html
その資料によると、名目GDPでは1960年は約17兆円、60年代の平均伸率は9.1%で、70年~80年代は平均伸率4.5%成長し、成長は止まらずピークは1997年の542兆円まで達しました。その後は失われた30年の時代に入ってゆきます。(実質GDPは1992年からほぼ横ばい)
成長のけん引力の一つになったのが建設インフラ投資です。1960年の2兆円を起点に60年代は平均伸率22%、70年~80年代の平均伸率は6%となりGDPの成長と軌を一にします。ピークは1990年の84兆円でGDP比で1.9%でした。建設インフラ投資の伸びはGDPの伸びにつながり、生活が向上し個人消費の伸びとなって全産業に波及していった歴史があります。

経済が成長するにつれ税収に見合った支出をする財政均衡策が主流になり、投資をするなら財源を確保することを前提としたため増税するしかなく、そのたびに景気後退で税収が減りました。(1989年に初めて消費税を導入して以来、じり貧になって失われた30年があります。)
リーマンショック後の円高不況によるデフレから脱却すべく、第二次安倍政権発足時のアベノミクスに私は当初懐疑的でしたが、黒田元総裁の異次元の金融緩和により、景気浮揚した事実は明確です。毎年国債発行額は実質的に60兆円程度でしたが、通貨発行権を持っている日銀がその7割を購入する策を取りました。国債残高は2024年末で1100兆円ありますが日銀の保有高はその半分の573兆円あります。それによって市場に資金が供給されていますので通常は相当なインフレが起きそうですがいまだにデフレマインドから抜け出せず、円安とコロナ禍による原油高でやっと2%以上のインフレになったのが現状です。積極投資支出による景気浮揚策は間違っていないことが明確になり財政均衡策からシフトするタイミングで、今回の道路陥没事故が発生し、老朽化したインフラ整備の必要性が認識されています。

以上の観点からすると、建設業は数年後には春の時代を迎えます。足かせとなっている「働き方改革」等の規制はありますが、資材及び労務費の高騰による建設コストの上昇により市場が急拡大すると思います。
また、役所の発注者不足は発注方法のイノベーション、例えばブロックチェーンを使ったやり方等につながるのではないかと思います。原資は建設国債です。通貨発行権は日本銀行ですから紙幣を印刷して国債を購入することで産業を発展させ、GDPを成長させることができます。

インフラ更新整備に毎年最低でも+20兆円近くが発注されると、景気回復による個人消費拡大に火が付きGDP成長率が3%以上見込めるでしょうから税収増から増税なしでインフラ更新が可能になります。
企業はここ1-2年の間に足腰を鍛え、トリプルライセンス保有者を育て、検査技術を開発し、DX武装した多能工化を図ることで高収益企業になること間違いないと思います。