No.1306 ≪いよいよ日本も再成長の再来か?≫-2024.4.4

4月3日8時58分(日本時間)に発生した台湾花蓮沖地震でお亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに被害に会われた皆様にお見舞い申し上げ、平安を祈ります。

連合によると大手企業の春闘が満額回答花盛りで終わりそうです。中には組合の要求を上回る回答も続出したという。ベースアップを含めた平均昇給率は5.25%だそうです。中小企業は4.5%。
過去5年を振り返ると2023年は3.91%、2022年は2.27%、2021年は1.84%、2020年は2%、2019年は2.1%の昇給率です。中小企業はほぼ同じ程度の昇給率でしたが、2024年は特別に大きな差になっています。
1989年のバブル時のピーク5.94%に近づいてきました。バブル期は昇給率5%超が4年以上続きました。2024年の昇給率が5年続けば、日本経済の再成長にスイッチオンになると思いますので大いに期待しています。

日本経済を見る時に不可欠な知識、即ち、日本の企業構造をおさらいすると、企業数では360万社の内、大企業が1.2万社(内、上場企業は4000社)、中小企業が358万社(内、個人事業主を含む従業員5名未満の小規模企業が305万社)、これを構成比でみると大企業は0.3%(これは10年以上不変です)、中小企業99.7%(内、小規模企業は85%)です。また、従業員数でみると5680万人の内、大企業が1460万人、中小企業は3220万人。従業員構成比でみると大企業は31%、中小企業69%です。
企業数は10年間で420万社から360万社の約60万社減少しました。毎年誕生する企業は12万社ありますので、実質10年間で姿を消した企業数は180万社です。私たち中小企業がまだまだ頑張らないといけませんね。
しばらくの間、収益力のある大企業が意欲的な賃上げを継続していただき、その果実が中小企業まで行き渡るようにしてほしいものです。中小企業も勇気をもって適正価格を通せるようにならねばなりません。

もう一つの知っておかねばならない知識は収益性です。法人企業統計によると2022年度の全産業ベースのBSで自己資本比率は約40%、816兆円と巨額です。PLでは粗利益率は26%で年々上昇しています。経常利益では2013年度で48兆円、2022年度で84兆円です。売上高経常利益率でみると2013年度で3.2%ですが2022年度では5.8%迄上昇しています。私が粗利益率25%、限界利益率65%、労働生産性は最低100万円(そろそろ150万円に変更したい)というのはこれが根拠の一つです。
さらに全上場企業の稼ぐ経常利益は2013年度で30兆円でしたが、2022年度では40兆円です。これは日本の全産業が稼ぐ経常利益の48%を上場企業だけで稼いでいる計算です。日本の企業数の0.3%を占める大企業(12000社)まで含めると軽く50%を超えることは間違いありません。99.7%を占める中小企業はもっと努力が必要なのです。また、2022年度の全産業ベースの税引後利益、即ち当期利益は63兆円で、配当金はなんと30兆円で、内部留保が33兆円です。配当性向は少し低くなりましたが48%です。赤字の中小企業が65%もあることを考えれば、この収益力は大企業の威力と言えます。つまり、一部の大企業に収益が集中し、その内の半分が株主に還元され、社員や仕入先に還元されていないことを物語っています。日本国の財務は△702兆円の債務超過ですが、民間企業がこれをカバーしているので国際的信用力を高めていると言えます。この収益力の高さにより海外投資家が日本の株式に投資するのでしょう。つまり、日本国民が30年間給与も上がらずに稼いだ利益が海外の投資家に流れているともいえなくはありません。国益を考えれば日本国内に利益を還流する時期ではないかと期待しております。

耳の痛い話をもう一つ。「マークアップ率」という指標があります。これは値上げする力です。1980年と2016年のマークアップ率を国際比較したデータによると、日本は1.03→1.33(伸び率129%)で36年間の平均値上げ率は0.8%しか上がっていません。上位はスイスで1.09→2.72で250%、平均値上げ率は4.2%と日本の5倍以上です。バブル崩壊後の失われた30年間の間に日本はデフレ慣れしてしまい、値上げは悪いこと、値上げするのは智慧がないことと自らを卑下し自尊感情を持てず、そのマインドがさらに次のデフレを引き起こすという悪循環の時代でした。新技術やイノベーション、新手法でコストダウンするのではなく、蓄積した貯金をすり減らしながら、借入金に依存して赤字に陥っていたのです。適正な付加価値を提供できないなら企業としての存在価値はないのですからリセットして再出発すればよいのです。しかし、他者に他にまねのできないものならば、適正な付加価値、つまり粗利益率25%以上を確保できる価格設定にすべきなのです。

多くの仕事はムリ・ムダ・ムラの3ムの集合体です。過去の栄光を引きづって革新を怠り、あげくの果ては実力以上の受注をして残業と休日出勤で何とかするムリ、手待ちや手直しや作りすぎで資源のムダ無駄遣い、価値を産まない移動のムダ、連絡ミスやあいまいな指示やハラスメントまがいの指導による能力を発揮させないムラ。
DXの活用やコミュニケーションスキルの向上で3ムを解消するだけで、付加価値は最低でも30%は改善できます。うまくいけば50%も可能です。この改善効果はコストダウンの原資として使えば、少しの価格改定で大幅な付加価値アップにつながります。

原因自分論に立ち、大手企業が高昇給で経済をけん引してくれている間に、再成長にスイッチを入れましょう。