南西諸島を襲ったUターン台風6号、近畿地方の盆を直撃した台風7号が通過しましたが、被害はございませんでしたでしょうか?お見舞い申し上げます。
ちなみに、沖縄にはいまだかって台風は一度も上陸したことがありません。不思議ですね。台風銀座と呼ばれているのに台風上陸数は「ゼロ」です。気象庁のホームページによりますと上陸の定義を「台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を『日本に上陸した台風』としています。ただし、小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出る場合は『通過』としています」とあり、沖縄は島扱いになっているので「通過」であり「上陸」ではないからです。1996年8月16日に沖縄に接近した台風12号は台風の目の大きさが直径100kmもあり、沖縄本島に上陸後、本島全体が台風の目の中に12時間近くありました。台風の目の中では快晴ですから、私は那覇から名護まで往復して仕事をすることができました。気象庁の定義にある「短時間」の長さはさておき、「上陸」で良いような気がします。
台風のおさらいをしておきたいと思います。気象庁のホームページで記録のある1951年〜2022年まで71年間の台風の記録を見ると、平均で毎年26.5個の台風が発生し、11.7個の台風が日本に接近して、3個の台風が上陸します。
発生月でみると7月〜10月に発生する台風は全体の約70%ですが、接近するのは88%、上陸するのは93%です。中でも8月は台風が最も多く、21.2%の台風が発生し、30.2%の台風が接近し、35.4%の台風が上陸します。
次に多いのは9月で、発生数の18.9%、接近数の25%、上陸数の32.1%に上ります。発生数では8月が多いのですが上陸確率から見れば9月の方が高いことがわかります。
台風の定義を見てみますと、「熱帯の海上で発生する『熱帯低気圧』のうち、北西太平洋(赤道以北で東経180度以西)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のもの」を「台風」と呼びます。ちなみに、東経180度以東領域にある熱帯低気圧のうち最大風速が32.7メートル(64ノット)以上のものを「ハリケーン」と呼びます。
台風の発生する原理は、海水温が高い赤道付近は上昇気流が発生しやすく、この気流によって次々と発生した積乱雲が多数まとまって時計と反対周りに渦を形成するようになり、上昇気流が発達することで渦の中心付近の気圧が下がり、さらに発達して熱帯低気圧となります。通常1気圧は1013hpa(ヘクトパスカル)ですが、10m上昇するごとに1.2hpa低下することがわかっています。一般的に台風となると960hpaぐらいですので、53hpa低いです。10mで1.2pa下がるので、上昇気流は441mまで上昇していることになります。上空の気温は低いので水蒸気が露点で水滴に変わります。水蒸気が水滴に変わったものが積乱雲ですので、台風はこの雲を時計の反周りに半径500km以上伴って回っていることになります。
一方、上昇気流が上空の冷気に触れて下降気流となって地上に降りてくるのが高気圧です。これは上昇気流とは逆の原理で地表付近になればなるほど温度が高く、時計回りに渦を巻きながら下降してきます。このくだりは中学2年の理科の教科書に詳しいですので、お子さんに教えてもらうとよいですね。
強力な低気圧の一つである台風はエンジンがついていませんので自力で方向を変えたり、速度を調節したりすることができません。海水温が高ければ高いほど反時計回りに渦を巻いて上昇する上昇気流が勢いを増して風速も強まってゆきますが、進路は周囲の成り行き任せになります。
台風の大きさは大型と超大型に分類されますが、風速15m以上の強風域の大きさが半径800km以上になると「超大型台風」と呼ばれ、半径500km以上は「大型台風」と呼ばれます。半径500km以下は「台風」です。また、風の強さで「猛烈」「非常に強い」「強い」の3つに区分されます。風速が秒速54m以上を「猛烈な台風」と言い、秒速44m以上を「非常に強い台風」、秒速33m以上を「強い台風」、それ以下は「台風」と呼ばれます。今回の台風7号は8月12日時点では強風域が440km以内で、最大風速が50m/秒でしたので、「非常に強い台風」でしたが、8月15日時点では強風域半径が280km、最大風速が25m/秒ですので、並みの「台風」になりました。
日本近海の海水温は四国付近まで赤道直下と同じ30度近くあります。東北地方まで27度です。従来の沖縄周辺の海水温が東北地方まで北上してきており、台風だけでなく一次産業にも大きな影響を及ぼしています。気温も35度で普通、40度でも驚かない状況になりました。今や沖縄特産のマンゴーは北海道でも収穫できます。
台風は被害をもたらすだけのネガティブなイメージがありますが、海中をかき混ぜて酸素濃度を高めて活性化させたり、滞留による水の劣化を防いだりする効果もあります。また、台風を初期の段階で消滅させる研究も進んでおり、実験室レベルでは成功しています。台風の中心に無人機を飛ばして水や氷をばらまけば上昇気流の発生が抑制されて台風に成長しないのです。さらに量子コンピュータの発達でもっと精度の高い予測が可能になれば今までとは異なるビジネスも可能になると思います。
地球環境保全は人類共通の責務ですが、超大国の国益的な思惑もからまってベクトルは合っていないのが現状です。悪化する地球環境に対して打てる手を確実に打つ事が大事だと思います。そのためにも私たちの台風に関する知識を正確にバージョンアップする段階にきているように思います。