No.1262 ≪今は大転換点ど真ん中≫-2023.5.24

IMFによると2022年の名目GDPランキングは、1位アメリカ25.5兆$、2位中国18.1兆$、3位日本4.2兆$、4位ドイツ4.1兆$、5位インド3.4兆$、6位イギリス3.1兆$、7位フランス2.8兆$、8位ロシア2.2兆$、9位カナダ2.1兆$、10位イタリア2.0兆$…合計100.2兆$。G7合計では43.8兆$で48%のシェアです。
別の肌感覚に近い購買力の視点でみると、世界銀行の2021年の購買力平価によるGDPランキングは1位中国27.3兆$、2位アメリカ23兆$、3位インド10.2兆$、4位日本5.4兆$、5位ドイツ4.8兆$、6位ロシア4.8兆$、7位インドネシア3.6兆$、8位ブラジル3.4兆$、9位フランス3.4兆$、10位イギリス3.3兆$。。。合計146.8兆$となります。G7合計は44.6兆$で30%のシェアです。イタリア、カナダはベスト10にも入っていません。

「日米」と「中露」でみると、名目GDPでは、「日米」29.7兆$VS「中露」20.3兆$となりますが、購買力平価GDPでみると「日米」28.4兆$VS「中露」32.1と逆転します。ここに、俗にいうグローバル・サウス、中でも今回の広島サミットに招待されたインド、インドネシア、ブラジルは世界銀行の統計でもベスト10にランクされており3国の合計で17.2兆$という大きなシェアを構築しつつあるのです。建前上の名目GDPでは日米が有利ですが、本音の実力GDPでみると中露が圧倒しているのです。このパワーバランスを見てグローバル・サウスの国々はどう行動することが国益に見合うのか考えています。西側世界のG7にも参加するが、中露を批判することはしない。エネルギーもメリットがあれば購入する。当然の判断です。世界のパワー構造が変わってしまっていることを広島サミットでまざまざと見せつけました。

G7は冷戦真っただ中の1975年に発足し、共産主義の東側と民主主義の西側が対立していました。共産主義国の統計は非公開でしたので詳細はわかりませんが、名目DGPでは世界シェア70%以上を占める圧倒的な金持ち国の集まりがG7でした。そして1989年11月のベルリンの壁が崩壊し、西側勝利、米国一強時代の幕開けとなったのです。その後、中国や開発途上国(G77)の著しい成長で世界の勢力範囲は様変わりしました。広島サミットではG77の中でも主な国々であるグローバル・サウス諸国も招待して、民主主義陣営に取り込もうと躍起になっています。どちらにもつかないことが最大のカードとなるグロバール・サウスの今後の動きは世界情勢に大きなインパクトを生じます。中でも、今後大飛躍することが確実視されているインド、インドネシア、ブラジル、パキスタン、エジプト、ナイジェリア、ベトナムの動向は注目すべきです。

さて、話題は変わりますが、今が大転換点ど真ん中とはどういう意味かを説明します。歴史の70年サイクルをご存じでしょうか?
明治新政府が樹立したのは1867年です。歴史の時間に習っていますね。それから国際社会に進出し大成長した日本は日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦で戦勝国となり超大国の一つになりました。そして、第二次世界大戦に突入してゆきます。明治維新から約70年後の1937年です。世界中の国々を相手に戦い敗戦します。その後GHQ占領を経て、1952年に国際社会に迎えられ独立します。それから約70年。2022年が転換点になります。この間、日本も世界もコロナパンデミックで停滞していましたから、実質的にはコロナ禍が緩和された今年2023年が大転換点と言えます。

70年で転換点を迎えるというのは、あながち適当な思い込みではありません。例えば、アメリカでは1945年に第二次世界大戦に勝利して66年後の2001年にまさかの9.11を経験します。1917年に共産革命で誕生したソ連邦は74年後の1991年に崩壊しました。1949年に建国した中国共産党は61年後の2010年にGDPで日本を追い越します。有人宇宙飛行も成功させ、73年後の2022年には独自の宇宙ステーションを運用開始しています。約70年で大きな節目を迎えるのは歴史の転換点と言えます。社会環境が変化するのです。もう一つは、日本人の政治選択、すなわち、投票率の推移です。詳しくは来週にお話ししますが、投票率は年々低下しているのはご存じだと思います。2014年の衆議院選挙では52.66%とかろうじて過半数を超えていますが、2019年の参議院選挙では48.8%と過半数を割ってしまいました。さらに、今後の主流になってゆく30代の投票率は2021年の衆議院選挙は47.12%、2019年の参議院選挙38.78%なのです。過半数を割った状態でえらばれた政治家の決断によって将来が決まるのは、果たして民主主義と言えるのか疑問です。
そういう意味でも今は大転換ど真ん中だと思うのです。