No.1132 ≪三上のヒラメキをものにする習慣≫-2020.10.8

中国・北宋の欧陽脩(おうようしゅう)という政治家が、「帰田録」の中に、文章のアイデアは三上にあると書いています。三上とは、鞍上(あんじょう)と枕上(ちんじょう)と厠上(しじょう)の3つを言い、いずれもリラックスしている時のことです。この時にアイデアが生み出されるというのです。

鞍上というのは、馬の鞍の上ですから、乗り物に乗っている時です。私は歩いている時もこれに含まれると思っています。車の運転中や電車、バス、飛行機に乗っている時の移動時間中です。この時間はひらめきがやってくる最高の時間です。一心不乱に運転に集中している時、あるいは物思いにふけったり、本を読んでいたり、ぼーっと外を眺めている時、歩きながら考え事をしている時。ふっとアイデアがわいてくるのです。そして実に探し求めていたアイデアそのものが浮かんでくるのです。そのアイデアを追いかけながら次々に展開していると、ふっと消えてしまいます。思い出そうとしてもなかなか思い出せません。この経験は誰にもあるでしょう。

次に、枕上です。寝入りばな、就寝中、寝起きのころを言います。この時は心身ともにリラックスしている時です。バタンキューで夢の世界に直行される方もおありでしょうが、夢の中でひらめくこともよくあります。ずーっと考えて考えて考えぬいている問題があるとき、なかなか良いアイデアが生まれません。しかし、寝入りばなに、ふっと素敵なアイデアがやってくるときがあります。「これだ」と思っても睡魔に負けて寝てしまうと、朝起きたときにひらめいたアイデアを思い出そうとしても思い出せません。また、夢の中でひらめくアイデアも同様です。朝になると、何か夢を見たことは覚えているのですが、どのような夢だったか思い出せません。これも皆さん経験ありませんか?

次に厠上です。トイレに入っている時、中でも便座に座っている時。ほかにすることもないのでぼーっとしているものです。読書をされる方もあるでしょう。この時にヒラメキやアイデアがやってきます。もちろんすっきりした時もやってきます。ずーっと頭を悩ませている問題の解決策に思案を巡らしている時にもやってきます。トイレから出て手を洗ってアイデアを書き出そうとすると、忽然と消えてしまっています。

私はこのような三上の失敗を無数にしています。せっかくやってきてくれたアイデアたちをその場でキャッチしていないのです。そこで今は、思いついたアイデアやヒントは、どんな場合でも、その場ですぐにメモするか、スマホに記録するようにしています。カード型のポストイットを持ち歩いてそれにメモすることもあります。走り書きでよいのです。枕元にメモと筆記用具を置いておくことも大事です。アイデアの痕跡を記録することが大事なのです。

走り書きのメモを後で整理すると、なんでこのアイデアが良いと思ったのかわからない場合もあります。ピント外れのトンチンカンなことも多々あります。しかし、このアイデアやひらめきは縁あってやってきてくれた必然のアイデアです。その時には必要なくても、それが必要になる時が必ず来るのです。手帳にメモしておくことをお勧めします。そして、手帳に書いたメモを眺めるだけでよいのです。そのアイデアが必要になると、そのメモが大きく飛び出して知らせてくれます。

私たちの脳がすばらしいのは、時間軸も空間軸も超越してアイデアをキャッチしてくれるようにできています。虫の知らせとか第六感というのもこの類です。一つの事を集中して考えているとある瞬間にぱっとひらめくようにできています。アメリカインディアンのお土産でドリームキャッチャーがありますが、人間の脳はあのドリームキャッチャーがビルトインされていると思います。キャッチされたアイデアを放置すると、地上に振ってきた雪のようにすぐに解けてなくなってしまいます。コロナ禍で世の中が激変してゆく今こそ、新しい習慣として、三上のひらめきを即座にメモするようにしましょう。きっとあなたの人生を豊かに明るくしてくれること間違いなしです。