世界中が新型コロナ感染防止を図りながら、経済を動かそうとしています。しかし、少なくても3 月~5 月の3 か月間はStay Home の強要で経済の大半が停滞していました。IMF のゲオルギエワ専務理事は5 月8 日の会見で「2020 年の経済成長率は3%落ち込む。これは1930 年代の大恐慌以来の大きさだ」といって警鐘を鳴らしています。
コロナ前までは利上げを探っていたFRB のパウエル議長は6 月23 日の会見で「ゼロ金利政策等の大規模金融緩和策を2022 年まで維持する。米国債等は無制限で買い入れ、市場に資金を供給する」と見通しを語っています。
日銀の黒田総裁は6 月16 日の会見で「今後の見通しは不確実性が高い。必要に応じて追加緩和も考える。今後の利上げは当面ない。株式の買い入れは12 兆円、国債の買い入れは無制限とする」と相当の危機感を表明しています。日銀の準備する2 次補正予算総枠は110 兆円です。
どう見ても世界経済は悪化の一途をたどっていることは間違いありません。にもかかわらず、アメリカも日本もヨーロッパも中国も株価は高い状態を維持しています。不思議ですね。株価は世界危機を織り込み済みで、売りよりも買いが多いということのようです。
ダウ平均は3 月23 日の最安値18,590$を底に上昇基調にあり、昨日は26,000$まで上昇しています。
日経平均は3 月19 日の最安値16,550 円を底に、6 月23 日に22,549 円まで高くなっています。イギリスもドイツも上海も、3 月23 日の最安値を底に上昇基調にあります。皆さんは、大恐慌の危機に直面しているのに、なぜ株高になると思われますか?
新型コロナ危機下における株高の原因は、極端な金融緩和で、とてつもない量の紙幣を市場にばらまいているのが大きな原因だと思います。FRB のパウエル議長も日銀の黒田総裁も、「市場に無制限に資金を供給する」と言い切っておられます。供給しないととんでもないことが起きるからです。
その資金の一部はコロナ自粛給付金として、一律に資金をばらまくベーシックインカムに使われます。
「生活費は政府が面倒見ますので、自宅から出ないでくださいね」
アメリカのコロナ給付金は大人1200$、子供500$で、人口32700 万人、うち子供は6100 万人のアメリカでは35 兆円の給付が行われました。日本では12650 万人に10 万円支給されますので、12.6 兆円が給付されます。EU でも同様の給付金が支給されています。世界中でみれば、とんでもない金額が個人の手ともに届いています。
2020 年6 月20 日の日経新聞に面白い記事を見つけました。5 月に破綻した世界最大のハーツレンタカーの株価が上昇し、株高を狙ってハーツが増資計画を裁判所に提出したところ10 万人の個人投資家が応募したというのです。目論見書には「紙くずになる公算が高い」と明記されているにもかかわらずです。「コロナ自粛でコロナ給付金が入り、この金で株式投資をしている」らしいのです。結局はアメリカ証券取引委員会(SEC)によって阻止されました。もし実現しておれば、証券市場の稀にみる出来事になったことでしょう。
経済を見る時に、GDP に占める支出割合、中でも個人消費の割合が重要な要素です。個人消費が牽引役になっていることが多いのです。アメリカでは70%、日本は60% 、中国は40%といったところです。個人消費以外では公共事業、設備投資、住宅投資です。
コロナウイルスの蔓延で、3 月~5 月の3 か月間は世界中でStay Home を強要しましたので、個人消費がもろに影響を受けました。個人消費は経済の牽引役です。コロナの影響で、車に乗っているエンジンが一気にバイクエンジンに置き換わったようなもので、車を動かすには相当の時間と負荷がかかります。さらに、コロナ禍による新しい生活、ニューノーマル対応で入場制限が常識になり、供給量が低下します。一方で非接触なネット通販の便利さに慣れて、生活必需品以外に金を使わない習慣が身についています。
すると、何が起きるか。生活必需品以外の分野ではデフレが起きるのです。1989 年11 月のベルリンの壁の崩壊でデフレが発生しました。当時、アメリカの経済は絶好調で巨大な個人消費パワーが世界経済を守り、デフレが起きたのは日本だけでした。デフレは「失われた20 年」に象徴される日本の専売特許になりましたが、今度は世界標準になるのです。
では、中小企業はどうすればよいか。何が起きるかわからないので、もしものために固定費1 年分を準備したうえで、デフレ経済の時に取った手を打つのです。つまり、「お客様は神様ではない。同じ価値観を持ったお客様が神様だ。そのお客様から選ばれるわが社づくりをする」という考え方です。セグメントされたお客様から選ばれるように、QCDS を徹底的に改善することです。
お客様の求めるQ:品質、C:価格、D:納期、S:サービスは何かを徹底的に研究し、追求しなければならないのです。 そのためにはどのような人材づくりが必要か、評価制度を見直しモチベーションをいかに高めるか、コミュニケーションのあり方はどうすればよいか、模索しなければなりません。コロナのおかげで不思議なことがいっぱいおきますよ。ここまでくれば不思議を楽しもうではありませんか。