No.1089 ≪収益性を高める基本ルール≫-2019.11.20

「S売上高=V変動費+F固定費+P利益」はビジネスマンならだれもが知っている方程式です。
ではP利益を上げるにはどうすれば良いかと問われると、S売上高を高める、V変動費を削減する、いやF固定費を削減する等様々な意見が出ます。上の方程式で覚えてしまうと誤った思考になりかねません。なぜなら、S売上高が目的化しかねないからです。S売上高を上げれば、P利益が増えるような錯覚に陥ってしまいます。

経営者が口癖にすべき本来の正しい式は次の通りです。
「P利益=S売上高-V変動費-固定費」会社が目指すべきはP利益です。S売上高は手段にすぎません。P利益は存続経費とも言われています。企業は環境の子であり、社会の子ですから、世の中にお役にたち続けねばなりません。そのためには存続することが前提になります。存続するためには維持費が必要です。その維持費がP利益です。従って、会社はP利益を出さねば意味がありません。赤字は罪悪なのです。社会コストである社員を採用し、社会インフラを使わせていただいて赤字では、社会インフラをタダで利用しているのと同じだからです。社会インフラは納税によって賄われます。社会インフラは所得税や消費税でも賄われますから、社員を雇用していることも価値があります。しかし、会社はより大きな納税貢献ができますので、P利益を出すことが使命なのです。P利益が一番最初にくるのはこれが為です。

さらに、S売上高は手段なので、同じP利益を出すのに、大きなS売上高を必要とするより、少ないS売上高で創出した方が、効率が良いに決まっています。なぜなら使用する社会インフラも少なくて済むからです。P利益よりも、手段であるS売上高の規模拡大を追求してゆくと、価格競争が激しくなり価格は下がってゆきます。そうすると、大量生産大量販売をしない限り採算が合いません。必然的にリストラが横行し、社会は疲弊してゆきます。そこには自分さえよければ良いという「わがまま」「唯我独尊」の発想で支配され、共存共栄の発想がしぼんでゆきます。多くの企業に影響を与えて、結果的に消滅させることが果たして社会ニーズを満たすことになるのか、天の望むところなのか。みなさんはどう思われますか?

大きな城を支える盤石な石垣を見ると、サイズや特徴の違う様々な石の組み合わせで出来ています。大きな石だけでは隙間だらけの石垣になり、すぐに崩壊してしまいます。サイズの異なる小さな石や土があることで何百年も風雪に耐えてびくともしない石垣になります。同様に、社会も会社もそうあるべきです。大きな会社と小さな会社が共存することで社会に多様性が生まれ、ニーズに対応できる柔軟な社会が出来上がります。
大きな会社は、日本一、世界一を目指してゆけばよいですが、そうでない企業は良い会社、ユニークな会社、地域に密着した「なくてはならない会社」に育てねばなりません。

世界的巨大IT 企業のGAFA の一角を占めるamazon 社は1995 年に創業し、莫大な資金を世界中から集めて様々な分野でカテゴリーキラーとなり、多くの老舗有名企業を破壊してきました。シアーズ・ローバックしかり、トイザラスしかり。20 年間ずっと赤字で社会インフラを浪費してきましたが、2014 年以降は利益を計上するようになり従来の手法では、amazon 自体が倒産するというリスクに気付いたのかもしれません。
大小さまざまな企業が入り混じって社会の多様性と柔軟性が生まれることで社会が安定するのです。

話しは戻りますが、方程式が「P利益=S売上高-V変動費-固定費」でなければならないのはなんとなくわかっていただけましたでしょうか?
そして、もう一つの考え方が「利益の源泉=Σ(数量UP・価格UP・コストDN・回転UP)」であらわされます。P利益を追求するには、数量を増やすことと価格を上げることとコストを削減する事、回転率を上げることがあります。数量×単価=売上高です。数量を増やし、高価格製品を開発するとおのずとS売上高がUPします。同時に付加価値が増えますのでP利益も増えます。コストダウンは文字通り、P利益に直結します。
少しわかりにくいのが、回転率を上げることです。在庫回転率、売掛債権回転率、買掛債務回転率を高めることでP利益はUP します。在庫回転率を上げるには、受注予測精度を上げて品切れしないように在庫管理を徹底してゆくことで実現します。その分だけ、在庫という形でお金とスペースと労務費を削減できるためP利益が増えます。売掛債権回転率を上げるには他社にない商品の開発や、契約方法の見直しで出来高制に変えるとか、前金制の預かり在庫を準備するとか、電債(電子記録債権)を利用して人件費を減らしたり印紙税を節約したりするとか、運転資金が少なくて済むため借入金が減るとか、これもP利益が増えてゆきます。
回収意識が高まれば、不良債権の発生をほぼゼロに近づけることができますので、経営体質と人材育成の両面で役立ちます。

「P利益=S売上高-V変動費-固定費」「利益の源泉=Σ(数量UP・価格UP・コストDN・回転UP)」の方程式を習慣化し、体質化することで、企業の収益性が大幅に改善されます。社員の原価意識も大きく変わること間違いありません。 できるトップには「釈迦に説法」になりましたが、再度かみしめていただければこれほど嬉しいことはありません。