No.1109 ≪「緊急事態宣言」発令1週間で見えてきたこと≫-2020.4.15

ついにゼネコンの清水建設に感染者とそれによる死亡者が出て、7都府県で全工事を宣言明けまで中止すると発表しました。西松建設も同様の処置をとるようです。
新型コロナウイルスの最も有効な感染防止策は「人の動きを止める」ことです。これは世界中で証明されています。今や日本人の半数はすでに新型コロナウイルスに感染していて、症状が出ていないだけだと思ったほうが良いという人もいます。
感染力が高まっている新型ウイルスは、人と人が接触すれば、簡単に感染してしまいます。3密でなくても15分間の会話で感染する例も報告されています。人の動きを止めるために都府県の知事が、口酸っぱく「外出自粛要請」「STAY HOME」「3密防止」「8割通勤削減要請」「在宅勤務要請」「テレワーク推進」「休業要請」と連呼しています。

やっと7都府県に発令された「緊急事態宣言」は、感染拡大防止と終息に向けて全責任を持つ知事に絶対的権限の法的裏付けを与えるために出されました。今までしてきたと事と大差ないとはいえ、国のお墨付きがあるのとないのとでは重みが違います。だから、知事が発令を懇願していたのです。「緊急事態宣言」を背景に、知事は自信をもって、強制力はないものの、強い要請や指示を出すことができます。

私たちも、営業してよいのか、休業しないといけないのか、勤してよいのか、家にいないといけないのか迷います。守っても守らなくても大差なければ、窮屈な決まりは守らないほうが楽なのは当然です。多くの人は、あいまいな中で、周囲や業界の決定があるまで、従来通りの行動パターンを取らざるを得ない。中途半端に、あいまいに、奥歯にものが挟まったみたいな会見や方針ではますます感染拡大が進みます。

「緊急事態宣言」を発令したのが先進国で最も遅かった日本は、それなりの規模の対策を打ち出さねば国際社会の恥さらしになります。まさか、アベノマスクで終わりというわけにはゆきません。そこで、安倍総理は経済対策として108兆円を準備した、スピード感をもってやり切ると胸を張りました。しかし、財政支出は約40兆円。これを呼び水として自治体や民間支出を負わせて108兆円規模にするそうです。
ウイルスの影響ですでに破綻寸前まで事業を停滞させ、十分な活動ができていない中で果たして、自治体と民間で68兆円規模の投資が起きるのか疑問です。令和の徳政令でも出さねば、積極的な投資を行わないでしょう。

7都府県の知事の思惑は、「緊急事態宣言」という戦後初の重い決断をし、108兆円の経済対策を講じるのだから、感染防止のために人の動きを止める経済的代償は国が保障するものだと思っていたようです。
どうも温度差があり、一番馬鹿を見たのは国民のような気配があります。報道を見る限りは「自己責任で休業せよ、経営存続できないのは国のせいではないので保障はしない。
休業せねば氏名を公表する」という公権力の横暴ともいえる状況になりそうです。
日本には、個人商店やサービス業、宿泊業等の個人事業主や小規模事業主が330万社存在し、そこで働く人は約1200万人います。アルバイトも入れれば1500万人を優に超えるでしょう。この方々が営々と積み上げてきた今の店や会社は一気に崩れ去ります。倒産、失業、自己破産、多重債務、そして生活保護が一気に激増し、社会は不安定化します。
家でペットを抱いて優雅にお茶を飲んでいる動画をアップしている場合ではないでしょう。

最も有効な感染防止策である「人の動きを止める」ことは、それによって収入が減ったり売上が減ったりして不利益を被る人の「安全保障」とセットで行うことは当然です。今回の補助金や支援金の受給手続きは自己申告で役所に出向かねばなりません。
「外出自粛」と言いながら、受給手続きは役所に「出向かせる」という矛盾に気づかない政府・官僚は精神分裂病ではないかと疑ってしまいます。運よく手続きが終わってお金を手にできるのは5月末以降だとか。ICTを活用してテレワークを進めるのだから、ネットで完結する仕組みをとるべきで、日本が得意とするロボット技術でRPAを駆使すれば、いとも簡単ではないかと思います。
この際に様々な身分証明書をマイナンバーカードに一本化してはどうかと思います。スイスは助成金や給付金をネット申請後4時間以内に無条件に振り込まれるそうです。この違いは何なのか?

今やるべきは、ウイルスを完全終息させること。そのためには国の責任で「人の動きを止めること」。国民が1年間生活できる資金を準備すること。そして、いくら費用が掛かってもワクチンを開発すること。そのために必要なお金は500兆円ぐらい使えばよいのです。
その決断ができるのはトップである安倍総理だけです。会社のトップと同様に、将来が見通せない時に、リスクが計り知れない時に決断するからトップなのです。

日本はすでに「お金」は持っているし、紙幣の印刷工場まであります。その紙幣の国際信用は世界一流です。国の財政は500兆円の債務超過ですが、民間企業の内部留保は550兆円以上あります。2019年時点で国債発行残高は約1100兆円ですが、赤字国債は約600兆円です。しかし、日本の円は108円とドルに並んで国際信用度が高い。
今の日本の稼ぎ(GDP)は500兆円ですが、これから様々ないイノベーションで700兆円~800兆円の稼ぎになれば、毎年100兆円返済しても5年で返済できます。今を乗り越えなければ、将来はないのですから。私たちも苦しい時に助けてもらった恩は生涯忘れません。どのように恩返ししようかと四六時中考えます。

ここまでやらねば新型ウイルスは終息しません。第二波、第三波の感染拡大が日本発で世界に蔓延することになります。今回の新型ウイルスは、同じRNAウイルス属であってもSARSとはわけが違うようです。未確認情報ですが、すでに強力なウイルスに変異したという論文もあるそうです。人の動きを止めている間の生活資金は、国が保障しなければ、新型ウイルスに感染する前に餓死してしまいます。 私たちが安心して「STAY HOME」できるような経済対策を期待したいものです。