今、沖縄は最強台風6号が次第に勢力を強めノロノロと接近しており、空の便は約4日間、約900便が欠航し、来沖観光客11万人に影響がでています。勢力は瞬間風速70m/s、気圧930hpと強く歴代2位だった2007年の台風12号に匹敵する台風です。被害が出ないことを祈っています。
さて、8月は日本人にとって忘れられない月です。7月26日に日本に降伏要求宣言(俗にいう「ポツダム宣言」)が出されて以来、8月に入り、6日に広島原爆投下、8日に日ソ中立条約締結国のソ連対日参戦、9日に長崎原爆投下、14日に宮城事件、15日に終戦詔勅、22日にはソ連が千島列島占領、8月30日にマッカーサー元帥が来日しGHQ設置、9月2日に降伏署名と目まぐるしく日本の置かれている環境は激変しました。
ご存じの方も多いと思いますが、8月14日深夜に発生した軍部の終戦「詔勅発布」阻止行動、宮城事件の顛末については「日本のいちばん長い夏」半藤一利著が詳しいですのでご一読ください。
明治天皇の「五箇条のご誓文」の詔勅を理念として、明治維新以来、「坂の上の雲」(司馬遼太郎著)を目指して、殖産興業、富国強兵に努め、たった70年で世界列強国となった日本が世界中の国々を相手に戦い敗戦するまでになったか、私たちはその真実の歴史に関心を持たねばなりません。
明治時代に日本を列強国にまで支援してくれたのはアメリカです。長い鎖国により産業革命とは程遠い日本での貿易輸出品は生糸しかありませんでした。高いヨーロッパ産の生糸を輸入していたアメリカは良質の日本の生糸を無関税で輸入してくれました。1920年にレーヨンが発明されるまではアメリカでの日本産生糸のシェアは95%に達していました。明治初期の生糸輸出額は4億$(現在価値では4兆$)との記録があります。このお金で軍艦を多数調達し、たちまち日本は海軍強国となりました。
その間、琉球及び朝鮮半島をめぐる眠れる獅子と言われた清国とのトラブルは日清戦争を引き起こし、それに勝利した日本は、白人国家のロシアと戦うことになります。日清戦争直後の露独仏三国干渉で列強国に痛い目に合っています。これが発端となったかもしれませんが、世界中が勝てるはずがないと思っていた日露戦争は、アメリカに停戦斡旋を依頼しセオドア・ルーズベルト大統領の仲介でかろうじて日本側の勝利で終戦します。戦勝したと言ってもロシアから勝ち取ったものは満州及び半島からの撤兵とロシアの満州権益の継承と樺太南部の割譲だけで賠償金はゼロでした。多大な犠牲を払った割には得たものは少なく、日本は長引く深刻な戦後不況に突入します。
不況打開するためにも勝ち取った満州国権益を大いに利用しました。満州鉄道を使って大陸進出を進めたのです。一方、大陸内では清滅亡後に孫文が1912年に中華民国を建国し、大陸は混迷の時代に入ります。
その後、1918年に第一次世界大戦が勃発し、日本は日英同盟のもとドイツに宣戦布告し、戦勝国となって山東省(青島エリア)におけるドイツ権益を継承します。ドイツは三国干渉国のひとつでした。朝鮮半島、満州、山東省と黄海沿岸地域を支配下におさめた日本は、満州鉄道の延伸支線を建設し、沿線周辺の開発を進め都市を建設し大発展します。満州鉄道を守備する部隊が後の関東軍で、本部の統制が効かない関東軍の暴走が列強国の危機感を刺激し、1931年の満州事変をきっかけに、列強国のパワーバランスと外交の紆余曲折を経てABCD包囲網につながってゆきます。国際法では中立国集団による特定国への経済制裁は禁止されており、宣戦布告とみなされていました。それを様々な外交技術を駆使して合理化し実行したのがABCD包囲網です。
パリ講和会議、ベルサイユ条約を経て1919年に設置された国際連盟で日本は牧野全権大使を派遣し「人種差別撤廃を規約に盛り込む」ことを提案します。常任理事国は日本を除いてすべて白人国家です。この提案は恐らく恩讐と利害を超えて白人社会の結束を促進したのではないかと推測します。アメリカは日露戦争仲介をしながらもオレンジ計画(日本殲滅計画)作成を海軍に指示していたことからもそれがうかがえます。人種差別撤廃提案以降にオレンジ計画はさらに強化されてゆきました。
1920年までは日本産生糸を95%以上輸入し絹製女性用ストッキングを生産していましたが、レーヨン、ナイロンの発明で生糸の輸入は激減します。これと国際連盟への提案はほぼ同じ時期です。
1920年前後の日本の立場を理解する事は非常に重要です。国内世論と軍部の台頭による内政バランスと外交による国際関係は日本の将来に対する分水嶺だったと思います。歴史に「もし・・たら」「もし・・れば」はありません。それぞれの国柄や歴史背景や民族の価値観の相違を理解し「なるほど、そういう考えもあるのか」と受容することが大事だと思います。明治維新からの70年をどのように分析し理解するかでこれからの未来が見えてくると思います。今もどこかの国が「日本消滅作戦」を進めているかもしれないのですから。