No.1239 ≪カブで経営脳を鍛える≫-2022.11.30

中小企業経営者は常にインテリジェンス脳を磨いておかないと時代の流れに取り残されてしまいます。経営者がインテリジェンス脳を磨くにはどうすればよいか。人間力を高めることと経営脳を鍛えることです。
人間力を高めるには人に会うことです。会う人は誰でも良いわけではありません。老若男女のできるだけ多くの「一流人」に会うことです。マスコミによく出ている有名人=一流人ではありません。劉備玄徳が三顧の礼をとって迎えた諸葛孔明のように野に下っている市井の一流人も沢山おられます。地域の一流人、業界の一流人、若人の一流人、技術の一流人・・・。一流の人とは、神渡良平先生の表現をお借りすれば「自分の持ち場でこつこつ努力すると光を発するようになる」人だと私は思っています。一流の人はとても謙虚で下座業ができています。一流の師についておられ師恩の情を常としておられます。また、類は友を呼ぶといわれるように友人知人も一流の人が集ってきます。だから、一流の人は一流の情報を持っておられるのです。一流の人は諫言してくれます。あなたにとって致命的なこと、他の人は決して言わない耳障りなことを言ってくださいます。なぜかと言えば、それを受け容れるだけの謙虚さを持っていると確信しておられるからです。しかし、諫言しても聞き流したり反発しかしない人には、髪の毛が抜けるようにゆっくりと少しずつ距離を取りながら気づかれないように離れてゆきます。怖いですね。でも大丈夫、間違いに気づく能力があれば。わが身を正して、謙虚に謝れば、チャンスはあります。気づけない人、気づいても謙虚になれない人はダークサイドに落ちたままです。

また、人は皆「氣」を発しています。オーラとも呼ばれています。心のありようが「氣」に見事に反映されます。プラスもあればマイナスもあります。そして、多くの人に影響を与えます。朗らかで喜びや希望を持っている人の氣は緑がかった黄金色のプラスの氣を発し、怒りや不安や恐怖を持っている人の氣はねっとりした黒いマイナスの氣が発せられます。プラスの氣は、同じ氣を持っている人に伝播し世の中を明るくします。マイナスは魔物の大好物です。強ければ強いほど強力な魔物が大群でやってきますので、ご用心ください。経営者はくれぐれもマイナスの氣を発しないように努力しなければなりません。弘法大師の「即身成仏」の教えに、「宇宙の宮殿には輝く網がかかっており、網の結び目の一点一点は宝珠になっている。その宝珠は互いを照らし映し合い、一つが光ると次々と輝き、やがて全体が輝く光でおおわれる。これこそが私たちの世界の実の姿なのだ」といわれています。この網を「帝網珠(たいもうじゅ)」というそうです。経営者が合う人はプラスの氣をもった人でなければなりません。よほどの能力を持った方でない限り、強いマイナスの氣をもった人に対抗できません。まずは専守防衛、近づかないことが一番です。
自然の摂理は実に巧妙にできています。空気に含まれる酸素の量は約21%しかありません。残りの約80%は窒素で、人間には害ですが、植物には栄養源です。マイナスは少量でも強力です。マイナスを凌駕するプラスを持たねばなりません。プラスとマイナスをかけるとマイナスになってしまいますが、マイナスにマイナスをかけるとプラスになります。じゃんけんはグー・チョキ・パーから成り立っていますが、グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝ちますね? 使い方次第でプラスにもマイナスにもなる自然の摂理、宇宙の法則を知る努力をすることが人間力を磨き高めること繋がります。付き合う人を選ばないといけないですね。

インテリジェンス脳を磨くもう一つは経営脳を鍛えることです。どのように鍛えるか。これは有価証券を買うことです。カブで儲けようというわけではありません。インテリジェンス脳を磨くためです。経営者はアナリストや相場師になるわけではありませんので、カブの機微をうかがう必要はありません。何がフェイクで何がファクトか、情報を峻別する訓練です。自社のビジネスに大きな影響を与える上場企業、例えば、ライバル会社、エネルギー系の会社、金融機関、仕入先、販売先の株を買うのです。購入できる最低数で構いません。
例えば、マスコミ報道がネガティブでも、カブはポジティブな場合があります。なぜ? すると、脳がそれをインプットして見るもの聞くもの読むもの様々な情報をチェックしてくれます。おや?と感じる違和感のある情報に出会います。それが疑問を解決するヒントです。深掘りしてみることです。

例えば、日本近海には海底に大量の「メタンハイドレート」が氷の状態で埋蔵されています。うまく取り出せばLNGになり100年分の埋蔵量があります。悲願の国産エネルギーです。しかも100年分です。これを取り出し実用化する技術を持っているのは三井海洋開発と三菱重工です。三井海洋開発の株価の動きでみてみます。
2013年と2017年に経済産業省がメタンハイドレートの採取実験に成功した時、株価は急騰しました。いまはその1/3程度になっています。なぜなのか? SDGSが叫ばれ、再生エネルギーが話題になり、LNGに注目が集まり、ロシア・ウクライナ戦争でエネルギーコストが急騰しているにもかかわらず、株価は低迷を続けています。採取コストが石油などの化石燃料の約20倍と高いためなのか。メタンは温室効果ガスの二酸化炭素よりもたちが悪いためかえって温室効果ガスを増やしてしまうからなのか。地上で最大のメタンガス発生源は牛のげっぷなので、これを回収して活用したほうがコスト的に割安だからなのか。
2022年11月中旬に届いた第三四半期有価証券報告書をみると、損益は大幅改善して黒字化していますが、受注高は1/3に減少しています。キャッシュフローは借入金の返済も進み改善が見られます。しかし、株価は今一つこれらの業績が反映していません。まだ何か見落としているのかもしれません。

このように、カブを通じて世界と日本の政治、経済、環境の動きと企業の業績を両にらみして、何が問題で何が課題かを発見し、どのような手をうつべきなのか、経営脳を鍛えるきっかけとなればよいと思います。