No.1137 ≪どこから見るかで世界は変わる≫-2020.11.11

私たちは人類がかって経験したことのないとても幸運な時代に生きています。このような時代に「生」を受けたのは何か大きな意味、それは使命かもしれませんが、あるに違いありません。

例えば、20年前の2001年には千年紀(ミレニアム)と百年紀(センチュリー)をダブルで迎えるという1000年に一度しか経験できない「トキ」を過ごしました。1000年前の世界人口は約3億人にも満たないほどでした。100年前でも16億人です。それが今では75億人です。100年間で60億人も増加し、約5倍になりました。当然平均寿命もどんどん延びました。世界で最も平均寿命が短い国はマラウイの47歳です。100年前は死の病だった肺結核はほぼ絶滅し、ガンも早期発見・早期治療で治る病気になりました。栄養不足で死ぬ人よりも飽食で生活習慣病になって亡くなる人の方が圧倒的に多くなりました。

宇宙でさえ人類のコントロール下に入ろうとしています。宇宙ステーションには6人が常駐していますし、宇宙衛星は約7600機あり気象予測やネットインフラの充実、無人自動運転技術などのCASE技術を支えています。そのおかげで、30年前は高層ビルぐらいの面積が必要だった超高性能スーパーコンピュータはスマホに姿を変え手のひらに誰もが持ち歩き、連絡を取りたい人にはいつでも連絡を取れるSNSが発達しています。
インターネットで写真一枚をダウンロードするのに1時間かかったのはたった20数年前です。今では瞬間で可能です。これ以上望むのは神をも恐れぬ強欲といわれても仕方がないほど際限のない豊かさと便利さを享受しています。

70年間近く大きな戦争のない現在は、人も物も金も自由に国境を越えて世界中どこでも旅行ができ、会いたい人と会い、食べたいものを食べ、見たいものを見て、買いたいものを手に入れることができます。世界中の様々な人々が出合い、まじりあい、にぎわいました。
ボーダレスになった世界は、あらゆる産業で大企業は収益力を高めるためにM&Aで規模を拡大し巨大企業となりました。巨大企業は競争に打ち勝ち世界一を目指すためにさらにM&Aを活発に行い超巨大企業が誕生しました。際限のない競争が科学技術を飛躍的に進歩させ、世界に豊かさと便利さを実現してきたのです。

そこに、だれもが想像すらしなかったコロナが発生し、見方は180度変わりました。人に伝染したウイルスを撲滅するには人の動きを止めないといけないことになり、世界は渡航禁止となり、国内においても都市はロックダウンされ、人々の接触を禁止し、家に閉じこもることを求めました。経済を回すべく、仕事はリモートが激増しました。人々のコミュニケーションのあり方が変わりました。

「賑わい=繁盛(強者)」だった成功モデルは成り立たなくなりました。今までの成功方程式が通用しなくなったのです。世界最大の観光都市は世界一悲惨な状況に追い込まれました。世界最大の産業である自動車は売れなくなり、石油はだぶつきました。世界最大の金持ちであった産油国は破綻寸前になったのです。Withコロナ時代になり自動車は売れるようになったとはいえ、その多くは電気自動車にとってかわられ、電池メーカーが自動車産業の覇権を握ろうとしています。

では、見方を変えて反対の方向から見てみるとどうなるでしょうか? 今までの成長プロセスを反対側から見てみましょう。今までとてつもない巨大な壁で覆われていた世界にほころびが生じ、あれよあれよという間に超高速で破壊が進み、壁が崩れ落ち、平原が見えてくるではありませんか。新しい事業、価値観が誕生してゆく環境整備が進んでいることがわかります。「規模の拡大=勝者」だったのが、巨大であるがゆえに一気に敗者になってしまったのです。
恐竜が巨大隕石の落下により地球が氷の世界になって順応しきれずに絶滅し、ひ弱な人類が順応性を発揮して次の時代を切り開いたように、強者と弱者が入れ替わってしまったのです。
コロナ後の環境をゼロベースで受け入れて新たな事業、新たな価値を再構築する段階に来たのです。悲観に暮れるどころか最高のチャンス、わが世の春が到来したのです。元の世界に戻ることを待つよりは、新しい時代に順応することに意を尽くしましょう。少数の超巨大企業が繁栄する社会ではなく、小さな成功企業がたくさん誕生する社会がこれからの世界の主流になることでしょう。

「禍福は糾える縄のごとし」とも「人間万事塞翁が馬」ともいいます。
物の見方三原則を今一度思い起こして「今」を見ましょう。

「第一原則 目先にとらわれず、長い目で見る。第二原則 物事の一面だけ見ないでできるだけ多面的全面的に観察する。第三原則 枝葉末節にこだわることなく根本的に考察する」
従来の価値観では弱者だったビジネスが、コロナ禍によって弱者であるがゆえに強者になるチャンスが出てきました。明るい未来が到来します。