世界に蔓延したコロナウイルス感染の危機から1年が経過し、各国の様々な試みは抑え込んだ自信と第二波襲来の落胆と交互に繰り返し、いまだに先が見えないのが現状です。科学技術の驚異的な進歩で遺伝子を応用したmRNAワクチンを完成させ、いかなる変異をもたらそうと2週間もあれば変異ワクチンを生産できるという画期的な製法を確立しました。遺伝子ワクチンの性格上すぐに表れる副反応は対処できても、子や孫への遺伝によって起きるかもしれない現象との因果関係は未知数です。しかし、安全性リスクよりも終息メリットが大きいと判断されいずれの国も特例採用されて接種が始まっています。
水際で感染抑止した台湾やニュージーランドを除き、一旦感染を許すと手の打ちようがない状況に追い込まれているのが現状です。火事と同様に、ぼやならバケツの水で消えますが、大火となるとダイナマイトの爆風で消火するしかありません。日本を除く多くの国は「都市のロックダウン」「戒厳令的外出禁止」「PCR検査の義務化」「感染者の強制隔離」「仮設コロナ病棟の新設」という爆風で一気に終息させようとして一時的に成功しました。規制を緩めたとたん感染が広がり二度目の爆風を仕掛けていますが、その効果は出ていないようです。
日経新聞(2021年1月19日付7面)によると、中国河北省に住むAさん(記事は実名表記)は1月10日に北京市で感染が発覚しました。当局はAさんの過去10日間の行動履歴を公表し、接触した100人及び職場の数千人のPCR検査と、自宅周辺の住民のPCR検査と強制隔離、さらには都市に通じる道路を封鎖し、住民50万人の1週間の隔離とその周辺都市住民(約2200万人)に自宅待機を命じました。また、熱を隠す解熱剤の販売は中止されました。
一方、日本はというと、2020年4月7日に最初の緊急事態宣言を発令し、ころころと変更がありましたが、5月25日に解除されました。その時の安倍総理(当時)曰く、「(自粛要請という)日本独自の方法によりわずか1か月半でほぼ収束させた日本モデルは素晴らしい。国民に感謝する」と歌い上げました。しかし、解除後徐々に感染者は増加して緊急事態宣言発令前のレベルに戻ってしまいます。それでも多くの人々の不安や反対を押し切り2020年7月22日に景気刺激策「GOTOトラベルキャンペーン」を前倒しで実施しました。コロナよりも経済を優先する決断をした瞬間です。ものの見事に失敗しました。総理就任後、感染者が急増してむつかしい判断を迫られた菅総理はGOTOトラベルキャンペーンを継続する方針を示しました。が、数か月後、年末年始の大型商戦を楽しみにしていた多くの人々を落胆させ、多額の被害を出しました。
昨年の緊急事態宣言後のメルマガ(2020年4月22日号)で以下のように発信していました。
「自粛要請と補償はセットが原則です。4月17日に安倍総理(当時)が記者会見して、どんでん返しでやっと一律10万円支給が決まりました。
『新型コロナウイルスを終息させるには「人の移動を止める」しなかい。自粛で不便をかけるがよろしく頼む。生活費の一部として10万円支給する。終息するまで継続的に支給するので安心して家にいるように。ともに乗り越えよう』という国家の意思表明だと思っていましたが、どうも「これっきり」の様相を呈しています。もし、今回限りの単発支給なら、国家の責任で新型コロナウイルスを5月6日までに必ず終息させねば筋が通りません。
しかし、『手を挙げた人に支給する』という財務大臣もおられ、世界第3位の経済大国日本がビタ一文出したくないセコイに国なり下がったこともわかりました。なんでもかんでも国民の選択に丸投げして、責任放棄ともとれる国の姿勢には、今まで安倍政権を信頼して支持してきた私も開いた口が塞がらないほど驚いています。
議員は10万円給付金を辞退するそうですが、それは絶対だめです。辞退すべきは年間約4200万円もかかっている議員歳費です。国家が滅んでからでは遅いです。まして、政府が営業自粛を要請(=強要)している時に、要請を無視して営業しているセクシーキャバクラに行く現職議員の歳費で何人の人が助かるか。420人分に相当します。おかしな論理やおかしな意見がまかり通るのはなぜなのでしょうか?
かって、日清戦争に勝利して満州国を領土とした日本は国難に直面しました。超大国ロシア帝国の南下政策に戦いを挑んだのです。自国の領土を守るのは独立国の使命です。日本とロシア帝国。世界中のだれもが日本に勝ち目はないと思っていたことでしょう。多くの犠牲者を出しながらも善戦する日本の戦い方をみてアメリのセオドア・ルーズベルト大統領は仲裁役を買って出て、ポーツマスで講和条約を締結する手助けをしてくれました。日本はロシアに賠償を求めない代わりに韓国を保護国とし、満州国の自治を認めさせました。
日露戦争の戦費は国債発行で賄われましたが、当時の国家予算2.6億円の時、約6倍近い14.7億円(内外債13億円 金利6%)の国債発行して賄いました。負けるとわかっている国の外債はだれも買ってくれません。苦戦した挙句、イギリス銀行団と米ユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフ氏が購入してくれました。日露戦争の国債の完済は、なんと1986年までかかりました。
このことを考えれば、世界的・歴史的危機の新型コロナウイルスの感染防止に、年間国家予算の5倍以上の資金投入は当然でしょう。今期の国家予算は約100兆円ですから、500兆円~550兆円にあたり、年間のGDPに相当します。」
今は非常時。リーダーには覚悟が必要です。なぜそうしなければならないのか、それによってどのような苦難があるのか、そしてそれを成し遂げたとき何が待っているのかと丁寧に説明しなければなりません。
また、2020年4月7日付のメルマガでは、戦時のリーダーシップについて以下のように発信しました。
「人が生まれ生きる目的は、社会を進化させる、人の役に立つことです。その手段としての仕事の仕方はどんどんと変化しています。アフガニスタンで貧困克服に生涯をささげ、銃弾で命を落とされたペシャワール会の中村哲医師は、「医療よりも水、水があれば農業ができる。農業ができれば平和が来る」と聴診器をつるはしに持ち替えて井戸をほって地下水をくみ上げました。その数600か所以上。しかし、農業をするにはもっと大量の水が必要でした。ジャララバードを流れるクナール川から水を引き用水路を作ろうと提案しました。井戸掘りで疲れ切っていた人々は反対しました。しかし、中村医師は「議論はいらない。実行あるのみ」と率先垂範して重機に乗り込みました。その結果、見渡す限りの砂漠から肥沃な緑の大地に代わったのです。病人を救うためにアフガニスタンにやってきた中村医師は、真の脅威である「貧困」に正面から勝負を挑み、そして勝ったのです。」
年明け後の菅総理の決断は、酔っ払い運転とも見まがうばかりのブレブレです。
第二回緊急事態宣言は個人事業主が大半を占める飲食業を狙い撃ちし、20:00以降の営業自粛を要請したかと思うと、別の大臣は昼のランチも感染リスクが高いので利用するなと言い、これには補償対象外だった飲食の大手企業が反発の声を上げました。すると一転、補償の対象となり、企業単位が店舗単位になり、雇用調整助成金や家賃助成金も延長されそうです。病院にはコロナベッド1床につき約2000万円支給するとか。さらに、特措法や感染症法の改正で罰則を設けるとか。
今までの人災とも思える判断ミスはだれも責任を取らず、説明せず、法令で違反者は公表する、過料を科すという。このような形で人々を統制する考え方は違和感を覚えます。秋田の苦労人で弱者の心を知っていると評判の新総理にはぜひとも踏ん張って、しがらみを断ち切り、中村医師のように「議論はいらない。実行あるのみ」と重機に乗り、道を切り開いてほしいものです。