総選挙の結果は27日(日)20:00に出ます。あまりあてにならない私の直感ではかろうじて過半数は確保して政策の継続性は担保されますが、今まで非主流だった石破政権が皆が希望を持てる変革を起こせるかどうかです。
その1週間後にはアメリカ大統領選挙の結果が出ます。両候補が勝利宣言をするのですんなりと決まるとは思えませんが「ほぼトラ」の論調が勢いを増してきました。
私たちはトランプ大統領誕生という前提で準備しなければなりません。というのは、日本経済にとってはあまり好ましい結果にはならない、外交センスのあった故安倍総理もおられない、未知数の石破総理の元で企業の盛衰を問われると思うからです。
トランプ大統領の政策は8年前(2017年)と基本的には同様の「MAGA(MAKE AMERICA GREAT AGAIN)」と思われます。簡単に振り返っておきましょう。
大統領就任後、アメリカ第一主義「MAGA」を実行に移し、TPPから離脱、パリ協定ボイコット、NAFTA再交渉、輸入関税賦課(鉄25%、アルミ10%)、不法移民対策としてメキシコ国境沿いに高壁建設(国境3145kmに9mの侵入防止壁)予算を計上し実行して約80kmの新しい壁建設と約640kmの既存壁改良を実施しました。さらに法人税一律21%への減税策を柱とする税制改革、オバマケアの廃止(これは頓挫しましたが)、エルサレムへの米国大使館移転。多くの時間と犠牲の上に成立した合意形成といえども公約実現のためにはいとも簡単に反故にできるリーダーといえます。自分の支持基盤に報いることを重視しているからです。
このあたりからイギリスではブレグジット(EU離脱)の是非を問う国民投票で2016年に離脱が決まり2017年からEUとの4年がかりの交渉で2021年から完全実施されました。ドイツ、フランスでも政治的に不安定な状況が続き、従来の価値観にNOを突き付けたきっかけは第一次トランプ政権の発足だったといえます。
2017年ごろは世界的に物価が上がらず、原油も鋼材も需要以上の過剰生産による生産調整期で、金融緩和、超低金利が世界的潮流でした。市場にあふれたお金が株式や不動産、後進国への投資に回りました。日本では史上初のマイナス金利が登場し、貸出金利は驚くほど低く、1億円借りても年間利息が10万円を切る案件が続出しました。株価は一本調子で高騰しました。給与の上昇は低かったですが物価も上がらなかったので結構ゆとりがありました。日米関係ではトランプ大統領と安倍首相の良好な関係で安定していました。
そこにコロナパンデミックで4年間の停滞が起こるとはだれも予測だにしませんでした。
2008年のリーマンショックから世界を救った習近平政権の中国は「世界の工場」となって2010年に日本を抜いて世界2位となり、1949年の100年マラソン覇権を唱える中国に対し第一次トランプ大統領との米中対立が顕在化し、2018年からは中国からの輸入品の7割に追加関税を付加、対立はますます激化して現在に至ります。
さてそこで今回の「ほぼトラ」が現実となった場合、どうなるか考えてみました。Web上ではAIによる「ほぼトラ分析」が無数に出ています。私は自分の頭で考えてみました。
1.「MAGA」はアメリカ第一主義が基本ですから、貿易収支黒字化、すなわち輸出>輸入となるような政策が実施されます。輸入には関税を課して国内産業を保護する。内需が拡大するような政策、例えば、日本を含む外資にアメリカ進出を促進し生産工場等の建設投資、雇用の確保、待遇面での改善、それに伴う個人消費の拡大を目指すでしょう。日本から見れば、円をドルに交換して投資するわけですから結果的に円安が持続することを意味しています。為替予想は無意味ですから為替スワップで防御するしかないと思います。法人税減税も実施されますので進出した日本企業の一次所得収支の改善に直結しますから力のある企業には悪い話ではありませせん。
2.米中対立の激化と継続は、中国のアメリカへの輸出が抑制されることを意味します。過剰生産によって経済悪化が顕在化している中国はあらゆるモノを日本を始め東南アジア諸国、一帯一路加盟国へTemuやsheinのように超安値で輸出します。巨額のEV補助金で大量生産されたEVも利益度外視の安値攻勢が一段と活発になります。様々な商品の価格破壊により中小企業経営が厳しくなる可能性が高いでしょう。不動産破綻で窮地に立っている中国にすればなりふり構わず手を打つしかないのではないでしょうか。
3.最大の懸案は安全保障面です。基本的に戦争が嫌いだと言われているトランプ大統領は世界中の紛争から手を引く、戦後長い時間と曲折を経て構築された安全保障体制を取引対象にする可能性が高いでしょう。
「世界の警察官をやめる。核無き世界をつくる」と宣言したバラク・オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しました。トランプ大統領は「守ってほしいなら相応の金を出せ。アメリカ人の命の価値はそんなに安くない」とでも言いそうです。対等な日米関係など望んでいないでしょうから「嫌ならやめる」と簡単に言いそうです。日本は東京も含めて軍事的にはアメリカの支配下にあることを認識させられるでしょう。赤坂(HQ)、横田(空軍)、立川(空軍)、厚木(空軍)、横須賀(海軍)という米軍の配置を見れば誰でもわかることです。相当お金が必要になりそうです。
4.マクロ会計恒等式「国内民間収支(企業収支)+国内政府収支(財政収支)-経常収支= 0」の観点からすれば、アメリカの2022年の実績は「企業収支(8492億$)+財政収支(△10560億$)-経常収支(△2068億$)」です。経常収支の中身は貿易収支+サービス収支+第1次所得収支等です。トランプ政権は減税による財政収支赤字を貿易収支の黒字化で補うことが本命ではないかと思いますので、ますます、BUY AMERICAN圧力が高まるでしょう。
「ほぼトラ」が実現したら、中小企業は小なりといえども今まで以上にますます「稼ぐ力」をつけることが最も重要になります。中でも海外から求められる力は発展のきっかけになるでしょう。