No.1319 ≪人口減少を強みに変える≫-2024.7.4

人口は最も確実な未来予想と言われています。日本は2004年の127,787千人をピークに減少に転じ、2024年2月現在で123,990千人。国立社会保障・人口問題研究所 の「日本の将来推計人口」によると、2030年には116,618千人、2055年には91,933千人と1億人を割り込むことが予想されています。2100年には50,000千人を割り込むという推測もあります。出生率が劇的に変わらなければこの予測は的中し、改善成果が見込めれば未来は変えることができますがVターンにならないことは明白です。

明治維新から157年、昭和が始まって98年、敗戦後79年が経過します。政治家や官僚だけでなく中小企業経営者も未来を踏まえて、日本に何が必要なのか、子孫にどのような日本を残すべきか考えねばなりません。
明るいに未来ビジョンにするポイントは劇的な「生産性」改革があります。すなわち、行政の縦割り排除、紙とデジタル混合による転記・保存・人によるメンテナンス等の無駄の排除、断固たるデジタル化、ロボット化、自動化推進があります。これにより時空を超えた常時サービスが可能になり、4100以上ある地方自治体も電子役所に代わります。省人化・無人化が進み、不足部門や民間部門や起業へのスムーズな移行が可能になります。デジタル化を機能させる電力の確保は必須ですが。

総務省のホームページ https://www.soumu.go.jp/iken/jokyo_chousa.html の令和3年(2021年)のデータを見ると、GDPは550兆5304億円ですが、国と地方の公的支出合計は148兆円6851億円、約149兆円となっています。国家予算は110兆円ありますが、その中には地方交付金も含まれますので、相殺後の最終支出割合で見ますと149兆円の内訳は国が44.3%、地方が55.6%です。国家経営の原資(約149兆円)を使って民間部門で約311兆円の富を創造したことになります。約2.1倍です。ちなみに高度成長期(1965年)のそれは5.4倍でした。中小企業経営者の皆さんは、この国家経営は効率が良いと思いますか? それとも悪いと思いますか? 
また、高度成長期(1965年)の公共事業の経済誘発効果は1.58倍 https://www.katada-lab.jp/doc/p016.pdf といわれていましたので、今はどの程度か、正確な情報はありませんが、記憶が正しければ1.4倍程度だったと思います。

財務省主計局の統計によりますと国家公務員は約59万人(内自衛官約25万人)、総人件費は5.3兆円。総務省の2023年4月時点の統計によりますと地方公務員は約280万人、総人件費は20兆円です。公務員全体では339万人、25.3兆円です。地方公務員の内、消防関係約16万人、警察関係29万人、福祉関係38万人、教育関係107万人、一般行政職が約90万人です。単純に人件費を公務員数で割った平均年俸は737万円。これには4000団体以上ある天下り団体や再就職者は含まれていません。国家経営予算(約149兆円)を売上高、税収を付加価値と考えると、2023年の税収は72兆円ですので、一人当たり売上高は約4395万円、年間労働生産性は約2124万円(月当たり約177万円)と低く改善の余地があります。労働分配率は35.1%です。
2023年3月期のキーエンス社の生産性は、年間労働生産性19824万円(月間1652万円)、労働分配率11.5%、平均年収2279万円を目指したいものです。税金は多少高くてもそれ以上のメリットがあれば納得づくで支払うものです。付加価値は高く、人は少なく、報酬は高くするデザインをしようではありませんか。

民間部門を見てみるとエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちの中で、医療関係を見てみると厚生労働省の統計によると2020年の医療従事者は347万人で2018年と比べると8%増加しています。患者対象者は12400万人ですが、受信患者は入院患者121万人(内65歳以上90万人)、外来患者714万人(内65歳以上362万人)で、合計835万人です。医療従事者1人当たりの患者数は2.4人です。少ないように思いますが、医師一人当たりに換算すると365日24時間常時21人の患者様を見ているのです。労働基準法通り計算すると1日平均88人です。看護師一人当たりだと5人、医師同様に法令通り換算すると21人になります。

また、介護分野でみると、日本総研が2040年の予測結果を発表しています。これでみると、介護職員は280万人、要介護者は988万人で、職員一人当たり3.5人。労働法通り計算すると、職員一人が1日当たり約15人の介護を行うことになります。職員の中には事務も運転手も栄養士も含まれますので介護士一人当たりだとその倍30人というところでしょうか。さらに、利用者も介護職員も高齢化が進みますので、ますます、現場はひっ迫します。当然経済的な問題も含めるとさらに厳しい未来が容易に予想できます。
人口は減少するにもかかわらず高齢化比率が高くなるため職員は圧倒的に不足します。いかにデジタル化、ロボット化、自動化するかがポイントです。

GDPを毎年2%成長させれば30年後は1.8倍になります。人口は25%減少しますので、実質的には2.4倍が目指すところです。デジタル化とAI&ロボットのフル活用が必要です。車は自動運転に切り替え、ドローンタクシーを飛ばし、鉄道は無人運転、教育もAI&無人、警備も無人、建設もロボット化、インフラや設備のメンテナンスはAI&ロボット。これによってIT技術に精通した人材を好待遇で採用しサイバー軍を強化し、宇宙ビジネスを成長させます。

絵空事に聞こえるかもしれませんが、現実的な情報としてマイナンバーカードの取得者は2024年4月現在9911万人で人口比79.3%です。これを本気で完全実施して、デジタル行政に移行し、様々な規制緩和を断行すれば2.4倍の生産性はむつかしくありません。そうすれば、一人一人の所得は増えて、サービスの質が上がり、より快適な社会環境が生まれてきます。安全保障にも、教育にも、科学研究にも、防災にも巨額の資金を投入できます。人口減少が避けられない事実を直視し、大胆に、根本的に改革を進めるように協力しなければなりません。現状維持は衰退を加速させるだけではないでしょうか。