No.1282 ≪中小企業にとって「円安」をどうとらえるか≫-2023.10.12

景気とか為替は操作できません。様々な要因が複雑に絡み合って経済が成り立っていますし、今はグローバルに世界中がリンクしていますので、単純な多次元方程式では解くことはできません。また、経済の鉄則として、政治は経済に優先するという原則があります。いずれその構造理論が解明され、AIが予測する時代になるかもしれませんが、その時には別の不透明要因が発生していると思います。

頭の体操を兼ねて、「円安」を考えてみたいと思います。
2023年9月22日現在の各国の政策金利を比べてみると次のようになります。
日本△0.1%、アメリカ5.25-5.5%、ユーロ4.0-4.75%、イギリス5.25%、オーストラリア4.1%、ニュージーランド5.5%、カナダ5%、スイス1.75%、中国3.45%、メキシコ11.25%、ブラジル12.75%。
単純に見れば、日米の金利差は5.35-5.6%もアメリカの方が高金利です。ユーロで見れば4.1-4.85%もユーロが高金利です。ブラジルに至っては12.85%もブラジルが高金利です。日本ではいまだに政策金利はマイナスですので利子が増えることは期待できません。

では外貨預金をしようとすると通貨を交換しないといけませんが、交換手数料がかかります。みずほ銀行のホームページで個人取引の通貨の交換手数料を見てみると次の通りです。
1米ドルあたり2円、1ユーロあたり4.5円、1英ポンドあたり7円、1スイスフランあたり4円、1オーストラリアドルあたり7円、1ニュージーランドドルあたり7.45円となっています。

では時々刻々と変動している為替はどうなっているか見てみると2023年10月11日12:00時点で次の通りです。
1アメリカドル$=148.7円、1ユーロ=157.7円、1ポンド=182.8円、1スイスフラン=164.5円 1オーストラリアドル=95.5円です。円をドルに変えるだけで2円かかるということは1$=150.7円と同じです。オーストラリアドルなら102.5円と同じです。

自分が通貨になったつもりで、日本円ならどこに行きたいか素直に考えると、私はアメリカドルになりたいと思います。例えば私が500万円の日本円だとすると、アメリカドルに交換するとどうなるか考えてみましょう。
交換手数料を入れると日本円で500万円は約33,333$に相当します。これを3年間預金したとすると38,863$になり、3年いたのでそろそろ日本に帰りたいと思い、日本円に交換すると、同じ為替レート、交換手数料とすると約586万円になります。3年間で約86万円増えました。3年間で17.2%、単純年間では5.7%の利回りになります。ユーロに交換したとすると同じ条件だと、約521万円で、21万円増えました。日本円のままだとほぼ500万円です。

通貨だったら、日本円からドルに交換する方が、将来の取り分が大きくなるので、その選択をする方が道理にかなっています。円を売りドルを買うと当然円は安くなりドルは高くなります。今の金利差だと安全性を考えても円をドルに変える行動が良いように思います。為替は金利差だけで動いていませんが、アメリカが経済破綻でも起こさない限り大きな流れは変わらないと思います。

経営者は円安基調が当面続くと考えざるを得ないでしょう。これを活かすには、どうすればよいか。円安で潤うのは輸出企業です。製品を海外に輸出する。インバウンド顧客の価格を再検討して設定する。
中小企業も海外に輸出する又は進出することはチャンスです。カントリーリスクはありますが、ネット社会を利用すればもっと有利に展開できるかもしれません。為替だけの問題ではありませんが眼鏡チェーン店で有名な「オンデーズ」はインド企業の「レンズカート」の傘下に入り、インドの優秀で潤沢なIT人材の獲得を通じて次の成長戦略を考えておられます。

「円安」をどうとらえるか。強みと弱みはコインの裏表です。チャンスと脅威もコインの裏表です。どこから見るか、どうとらえるかで、チャンスにもなりピンチにもなります。