先週は顕在化しているインパクトをまとめました。今週はB2Bの法人営業を中心に対策を検討します。B2Bにしたのは当社の顧問先企業に共通するビジネスモデルだからです。
B2Bのバリューチェーンはサプライチェーンが原材料や加工メーカーから仕入れて、付加価値をつけて顧客企業に販売します。顧客企業はさらに付加価値をつけて企業又は消費者に販売します。
バリューチェーンに存在する中間企業は、経済産業省が主導する2026年手形流通廃止を踏まえ、「でんさい」やファクタリングを中心としたキャッシュレスが進み、ナカヌキがすすみます。インボイス制度も次第に浸透し、企業淘汰が進むと思います。
バリューチェーン及びビジネスモデルの変化により、企業の環境適応能力が問われてきます。その一番大きいものは「人」。人的資源です。2021年時点での生産年令人口は7,509万人ですが、就業人口は5,815万人で77%の就業率です。実際には65歳以上就業者数909万人がありますので、全就業者数は6,724万人です。これが、10年後には生産年齢人口は6,773万人と今より10%減少します。就業者数では65歳就業者数も同じ割合で推移するとすると6,100万人となり、約620万人減少します。
日本で生産年齢人口の伸び率がマイナスに転じたのは2000年です。デフレが本格化した時です。それ以降伸び率は右肩下がりで減少しています。労働力を補うためにとられた施策に2011年から始まった技能実習生の拡大、派遣社員等非正規労働者の増加があります。
この施策により、ここ10年で技能実習生は約200万人、非正規労働者は約300万人増加しました。彼らの存在があって今の日本経済があることを再確認しなければなりません。今後10年間で不足する約620万人を同じ手法で対策できるかというとそれは無理でしょう。有能なアジアの技能実習生は日本を見限って帰ってこないでしょう。日本企業が変身するか、インド系やアフリカ系を受け容れるか。各企業の判断にゆだねられています。
方法は次の3つ。1.ビジョンを明確に打ち出し優秀な社員が育つ待遇改善を進める、2.多様な雇用形態を準備し、国籍不問、ジェンダーフリーを取り入れる準備をする、3.人手のかからない不動産業に転業する。人がいなければ、受注が好調であればあるほど危機を迎えてしまいます。
企業の財務力や経営資源、ビジネスモデルにもよりますが、成長一辺倒ではいずれ行き詰まります。ダウンサイジングも選択肢に入れておく必要があります。特に中小企業は規模信仰を捨て超高収益体質の構築が必要です。
提案として、一旦ダウンサイジングして事業構造を変革し、超高収益体質を構築し、再成長するプログラムをお勧めします。
仮に、年商10億円、変動費5.5億円、限界利益4.5億円(限界利益率45%)、固定費4億円、経常利益5000万円、人件費2億円(労働分配率44.4%)、社員数40人というA社があるとします。損益分岐点は8.9億円、損益分岐点操業度88.9%、労働生産性93,8万円、一人当たり経常利益125万円です。
資材の高騰により変動費が8%UP、賃上げ政策で人件費が5%UPした場合、損益はどうなるかと言えば、年商10億円、変動費5.94億円、限界利益4.06億円(限界利益率40.6%)、固定費4.1億円、経常利益▲400万円となります。
不採算製品及び取引先を見直し、A社の強みに集中する戦略を試算したところ、売上高20%減収で8億円、変動費4.16億円、限界利益3.84億円(限界利益率48%)、固定費3.9億円、経常利益▲600万円となりました。そこで、思い切って13%価格改定することを決断しました。さらに人件費以外のコストダウン3%を行いました。すると、損益は年商9.04億円、変動費4.48億円、限界利益4.56億円(限界利益率50.4%)、固定費3.85億円、経常利益7,100万円となりました。損益分岐点は7.6億円、損益分岐点操業度84.5%、労働生産性95万円、一人当たり経常利益177.5万円です。かえって、今より増益する可能性が出てきたのです。生産性も改善し、安全性も高まりました。問題は価格改定を実行する上で顧客企業からの圧力、すなわち、「市場価格に合わない」「相場より高い」「他社に回す」「取引を見直す」という常套句をどこまで跳ね返すか、自社の製品やサービスを磨き込んでどこまで自信もって立ち向かうか勇気が試されます。価格改定が受け入れられなければ事業撤退又は清算する覚悟で臨まねばなりません。
これからの10年は、B2Bビジネスでは付加価値をいかに高めるかにかかっています。そのためには全社員の知恵を結集して1.他社にない特徴やサービスをいかに磨き上げる、2.設備投資も含めて省工程・省人化の大胆な発想と小さな工夫の積み重ねで生産性向上を図る、3.新商品、新製品探索を強力に推進し、新たな事業の柱を作る、4.QCDSの徹底的見直し、特に納期(時間)の有料化の推進等があります。
そして、法人営業の基本は顧客企業の徹底的な情報収集と全社共有化です。中でも特に重要な情報にキーマン情報があります。俗にいうキーマンマップです。対象部門の全社員のビハインド情報を収集するのです。出身地、出身校及び学部、誕生日、家族構成及びお子さんの学年、専門知識とスキル、外国語スキル、趣味、メールアドレス、携帯番号&LINE ID、社内の役割、社内での人間関係の強弱、課されているミッション、前職の経歴等、公開情報をベースに普段の雑談の中で収集してゆくのです。たとえ人事異動で部門を移られても、他社に移られても連絡を取り続けます。私の経験では、優秀な方は必ず昇格してエグゼクティブキーマンとして戻ってこられ、最終的に経営陣に入られます。取引先企業の社員とはご縁を活かして生涯綿密な人間関係を構築することが法人営業の「いろはのい」です。
また、2020年から小学校でのプログラミング学習が必修化しました。2033年には2020年プログラミング必修化1年生(7歳)が21歳となり学卒で入社します。2020年にプログラミング学習した高校1年生(16歳)は2026年には入社してくるのです。いわゆるZ世代の活用なくして企業の存続はないと言えます。