No.1250 ≪大変だ、日本が消滅する!≫-2023.3.1

1年ほど前の2022年5月7日にイーロン・マスク氏が日本の人口が過去最大の63万人減少したニュースを聞いて、「当たり前のことを言うが、出生率が死亡率より高くなるような何らかの変化をもたらさない限り、日本は消滅するだろう。これは、世界にとって大きな損失となる」とツイートしました。

実は日本では2007年に初めて出生数より死亡数が約1.8万人多くなり人口が減少しました。そして困ったことに、年々その減少幅は拡大しています。2021年には約△63万人減少しました。アベノミクスを推進した安倍政権下の2012年〜2021年の10年間で人口は約386万人減少し、その平均減少率は112%と驚異的な高さになりました。この調子で行くと2022年〜2031年の10年間で人口は約1234万人減少することになります。
2012年〜2021年の年間平均出生数は約94万人ですが、年々△2.5%づつ減少し続けています。一方、同期間の年間平均死亡数は約133万人で、年々1.4%増加し続けています。そして、2021年は約△63万人の人口が純減したのです。後30年もすれば日本の人口は1億人を割り込みそうです。30年というと、あっという間です。本気で出生数を増やさねば、「日本消滅」は絵空事ではなく、ほぼ確実な未来予測となります。人口が減少に転じた2007年からの15年間の平均をみると、婚姻数は毎年約1.5万組減り、離婚数も約0.5万組減り、生まれる子供の数は毎年着実に2万人減少し、亡くなる方は2.2万人増えているのです。これが私たちの国、日本の現状です。

そして、今日の朝刊を見ると、2022年の出生数が79.9万人と80万人を割ったという記事が1面トップに出ていました。まさに統計通りです。2021年の出生数は81.2万人。過去10年間の平均減少率は2.5%ですので、予測では2022年の出生数は79.2万人です。予測より7000人多かったことは喜ばしいことです。同様に2021年の死亡数は144万人で、10年間の平均増加率は1.4%ですので、2022年の死亡数は146万人(まだ統計は出ていません)と予測できます。すると日本の人口は約67万人減少することが予測できます。

GDPは不思議なことにほぼ「人口×一人当たり平均年収」に近似しています。人口減少が止まらないと、GDPは縮小し続けます。中でも15歳から64歳の生産年令人口の減少は深刻な国富の減少をもたらし、その結果としてデフレが継続します。人口が減少する分、平均年収アップでカバーするか、移民開国に方針転換するかすればよいのですが・・・・。

2022年10月31日の日経ビジネスの特集「産める職場の作り方」の中で紹介されている伊藤忠商事の取組(P14-18)が参考になります。妻は早朝6時から勤務して15時で退社し、子供を保育園に迎えに行く。夫は子供を保育園に送ってから出社し、残業せずに帰宅する。夜は共に家族団らんを囲む。その結果、早朝勤務を開始した10年間で社内での出生率は2倍になり、労働生産性はなんと5.2倍に向上し、ほぼ全員が産後復職し退職率は1.5%にまで減少したのです。早朝勤務者には軽食を無料提供したり、早く帰りやすい文化を会社全体で作り上げ、安心して子供を産める環境を作ったことが大きいそうです。
中小企業でもできることは沢山あります。私の顧問先の歯科医院でも、以前は寿退社(結婚や出産)が当たり前だったのですが、スタッフの定着を高めることで、患者様の不安を取り除き、安心して治療に専念していただき生涯通い続けていただくにはスタッフの定着が必要だと考え、職場復帰後は子供が小学生に上がるまで保育料の50%を補助したり、安心して気兼ねなく育児ができる時間短縮社員制度や多様な働き方を認めたり、産休で鈍ったスキルを取り戻すためのリハビリ期間を設けたり様々な工夫をしておられます。その成果で、結婚・出産したスタッフはほぼ100%復職されます。患者様がなじみの担当スタッフの笑顔に出会えるのでストレスなく治療を受けられますので業績も安定しています。

大企業は財務も充実しているので、伊藤忠商事のような取り組みを積極的に行うべきですし、労働生産性が5倍以上になれば賃上げも10%以上は可能です。コスト削減と株主配当に血道をあげるよりも、将来を見据えて手を打つ義務が大企業、特に上場企業にはあります。ノブレスオブリージュです。
しかし、ナイナイ尽くしの中小企業はそうは行きません。本来は事例の歯科医院のような中小企業にこそ補助金や支援金を投入するべきだと思います。

1995年に中国の李鵬首相がオーストラリアを訪問して時のキーティング首相と会談し、日本とのいろんな話をした際に「日本という国は40年後には無くなってしまうかも分からぬ」と語ったと国会の議事録に残っているそうです。海外では日本がそのように見られていることを日本人である私たちが意識しないと、本当に「消滅」してしまいます。1億人割れまで30年〜50年の時間があるとはいえ、時間の余裕はありません。私たち中小企業の経営者が身近なところからできることを一つ一つ実行してゆこうではありませんか。