昨夜(2022年11月8日)の天体ショーはご覧になりましたか? 天気に恵まれ月食中に天王星が月に隠れるという天王星食も観察できたのは1580年以来442年ぶりだそうです。赤い月はなんとも神秘的で感動しました。
このブログを毎週お送りするようになって26年になります。1997年9月3日に初号を発信して、おかげさまで1236号になりました。読んでくださる方がおられるからこそ今日まで続けることができました。
読者の皆様に心より感謝します。553号まではFAXでお届けしておりましたが、554号(2009/04/01)からは時流に合わせてメールに変更しました。
さて、初号から一貫していることがあります。それは、毎回、メッセージを送る方を想定していることです。
「Aさん、今が一番苦しい時ですね。がんばってください、あなたなら必ずやり遂げられます」
「Bさん、勇気をだして一歩を踏み出してみませんか、正しいことをするのに何の躊躇がいるのですか」「Cさん、反対が多いということはそれが間違っていない証拠です、恐れず今の方針を突き進んでください」
「Dさん、一呼吸おいて、周囲を見回し、足元を見直しませんか」
「Eさん、別の見方をすると、ほら、こんなにチャンスがいっぱいですよ」
「Fさん、そんなに急いでどこに行くのですか? 社員が働いてくれてはじめて会社なのに、自分しか頑張っていないと思うのは傲慢ですよ」
「Hさん、誰もができないことを見事に継続されています。簡単なことほどむつかしいですもんね」
「Iさん、外に出ましょう、世界を見ましょう。あなたの技術を世界がまっていますよ」
「Jさん、仕事に上下貴賤が無いように、人にも上下貴賤はありません。一人一人のもっている世界最高の能力を引き出す仕事が社長の仕事ですよね」
さて、今日はどなたへのメッセージでしょうか? はい、その通り。あなたです。
国が資本を投入してできた国策会社は別にして、この世にあるすべての企業は一つの例外もなく個人の思いが形になっています。創業当初は生業か小規模零細企業から始まります。お客様が増えることで社員が増えて企業となります。皆が一丸となってお客様に寄り添い、お客様の無理難題に答えることで、さらに成長します。お客様の「5不」(不満、不安、不足、不便、不快)を解決するために継続的改善を推し進め、徹底的にコストダウンすることで付加価値アップを実現するのです。運が良ければ成長軌道にのり規模も拡大します。そして、人材を得てその能力を活かしきることでさらに成長発展します。よりよい商品・サービスを、より安く、より快適に提供するのです。追い求めるのはお客様の「5不」解消利益の拡大と社員の幸福です。利益は必ず後からついてきます。規模はアクセサリーです。すると「100年企業」が視野に入り、気が付くと得意分野でNO.1になっています。会社の規模を追求するといずれ企業は崩壊します。
押しも押されもせぬ大企業も創業の時は小規模零細企業でした。
例えば、松下幸之助師です。生来病弱で将来に不安を持っていたこともあり、22歳の時、奥さんと義弟、元同僚2人の5人で創業されました。一般家庭に電気が普及しだした頃、希望に燃えて作った改良ソケットは一向に売れませんでした。年の瀬を越せるかどうかという時に扇風機の碍盤の特注が入り短納期で完納することで、信用を得て、道が開けました。一所懸命に頑張っている姿を見ている人がいたのです。
例えば、稲盛和夫師です。朝鮮特需後の不況期に、教授の紹介でやっと就職した京都の同族会社が赤字続きで、思うように仕事をさせてもらえないので辞めようと思い、自衛隊の幹部候補生の試験を受け合格しました。しかし、兄の反対で実現せず、先輩のアドバイスもあり、心機一転奮起して会社に布団を持ち込んで寝食を惜しんで研究に没頭し、ついに製品を完成させました。ところが、会社がこの技術を活かそうとしなかったので、見かねた周囲の応援団が出資金を出して稲盛さんのために会社を作ったのが京セラの創業です。
受注を取るために飛び込んだのが松下電子工業で、どの会社も松下の要求にこたえられなかったテレビのブラウン管の放電銃の仕事を引き受けて、完納したことが今の京セラをつくり、松下幸之助さんとの出会いにもなっています。
例えば、ビル・ゲイツです。自宅のガレージでパソコンオタク仲間が集まってパソコンを研究していました。時はオフコン全盛で巨人IBMがコンピュータ市場を席巻していました。ところが、軽量で時と場所を選ばないパソコンがダウンサイジングの流れを汲み勢いをつけてきたとき、IBMが(おそらく軽い気持ちで)ビル・ゲイツ達にOSを発注しました。ゲイツが納品したのは、今のWindowsの前身であるMS-DOSです。オフコンのプログラムから見ればおもちゃのようなものだったでしょう。IBMもまさかこのプログラムのせいで倒産寸前にまで追い込まれるとは想像もしていなかったでしょう。
例えば、ゲイツのライバルのスティーブ・ジョブスです。ゲイツと違いジョブスはパソコンはOS・プログラム一体型であるべきだという信念を曲げず、マッキントッシュを開発しました。ジョブスは風呂嫌いで、悪臭をまき散らしながら、Tシャツ・ジーパン・裸足で商談に行くような変人でした。しかし、技術がわからない変人ジョブスの周りには天才プログラマーたちがあつまっており、お客様の無理難題をものすごいスピードで解決し、成長しました。一旦会社から追放されましたが、返り咲いて、自分の思いを次々に形にしてゆきました。スイッチのないスマホ「iPhone」はジョブスだから実現したと思います。
例えば、孫正義さんです。アメリカ留学時代に開発した自動翻訳機を日本企業に売り込んだところ、けんもほろろの対応をした名だたる企業とは裏腹に、話を聞いてくれたのが京セラの稲盛和夫さんでした。そのお金を元手にソフトバンクを創業し、ビール箱をひっくり返した台の上に立って数人のアルバイトに向かって「豆腐のように1丁(兆)、2丁(兆)と数えられる会社をつくる」と演説していました。だれもほら吹きとしか思わなかったでしょうが、いまでは売上高6兆円の世界有数の富豪と呼ばれるほどに成長しています。
今をときめく超優良企業も、はじめは個人創業。生業に過ぎないビジネスが、時機を得て、人が集まり、次第に企業になり、チームとなってより良い商品にするために改良に改良、改善につぐ改善を続けて、うまくゆけば成長することができます。たとえ、この世で成長できなかったとしても事業を継続する中で中興の祖と呼ばれる人が現れて急成長させてくれます。
今は、会社に集う仲間と切磋琢磨し、自社商品の声に耳を研ぎ澄ませて、改良を続けることです。経営者はビジョンを語り、仲間に希望を与えなければなりません。責めるべきは我が身であり、社員でも仕入先でもありません。原因自分論。夜中の工場に布団を持ち込んで設備の声を聴いてみましょう。誰もいない倉庫にたたずんで商品たちの声に耳を傾けましょう。寝るときは商品をだいて寝ましょう。そこまでしないと見えてこない世界があります。