グッドニュースが入ってきました。2021年4月18日付の日経新聞で「三井海洋開発がメタンハイドレート採掘。 水素の安定供給確保」の実験を来年度から始めるというのです。菅総理が2050年カーボンオフ、2030年46%削減(2013年対比)の発表を行った根拠となる背景の一つではないかと思います。
記事によると、メタンハイドレート採掘には、2011年から開発が始まった日本海側の水深500m以上の海底から採掘する「表層型」と2001年から開発が始まっている排他的経済水域(EEZ)内の水深1000m以上の海底をさらに数百m掘り進む「砂層型」の2つの方法があり、三井海洋開発は表層型の開発に着手するようです。表層型の対象となるメタンハイドレートの埋蔵個所はわかっているだけで1742か所あり、1か所あたり6億㎥(約2日分相当)の埋蔵量があるそうです。
そもそもメタンハイドレートというのは何かと言いますと、釈迦に説法をお許しいただき説明いたします。
海底下にあるメタンガスがものすごい圧力で氷状に固まっている状態のものをメタンハイドレートと言います。メタンハイドレート1㎥から160㎥のメタンガスが採取できます。採取した氷状のものが海面近くに上昇すると次第に気化しますのでそれを採取し、利用するのです。分かっている埋蔵量はメタンハイドレート約4.1兆㎥、レアアース約11億トンです。
地上資源は輸入に頼らざるを得ない日本ですが、皆さんもご存じのように、海底資源は世界でも有数の資源保有国です。その最大の理由はEEZ(排他的経済水域)の広さにあります。日本のEEZはアメリカ、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、カナダに次いで世界6番目で、その面積は447万k㎡。尖閣諸島や沖ノ鳥島の存在が大きいです。
なぜ、海洋資源に希望が持てるかといいますと、日本近海の海底にはメタンハイドレートやレアアースが豊富に眠っているのです。そして、2013年3月12日、遂に経済産業省の地球深部探査船「ちきゅう」が、愛知県沖の水深1000mの海底からさらに約300m掘り進んだところにあるメタンハイドレート層から採掘に成功したのです。この記事を見たとき、「もしかしたら、日本は面白いことになる」とワクワクしました。
この採掘技術や船上施設の世界大手が三井海洋開発でほかにも三菱造船等の海洋技術を持った企業が日本にはたくさんあります。採掘プラント一式数百億円から数千億円と高価ですが、我先に引き合いが来るのではないでしょうか。ESG投資の最適企業となること間違いなしです。
SDGsが当たり前になった今、世界はカーボンオフ競争が始まっています。発電は二酸化炭素が出ない原子力発電、自然エネルギーを使った太陽光発電、風力発電、波力発電、地熱発電、そして水素発電やアンモニア発電が今後の主流になることでしょう。自動車も電気自動車、水素自動車が今後伸びてゆきます。
メタンハイドレートも天然ガス換算で100年分、レアアースで230年分の埋蔵が確認されているとはいえ、コスト面で商用化には時間がかかると思われていました。しかし、日本近海で採掘しパイプラインで陸上に送るプラントができれば、遠い国からタンカーで運ぶよりもトータルコストは安くなると試算されています。うまくいけば天然ガスや水素、アンモニアの資源輸出も可能になるかもしれません。そうすると、日本の経済構造は大きく変化してゆきます。そのためには、海を守る安全保障は不可欠と言えます。
日米安保の範囲内にあるとはいえ、尖閣諸島の領有権については微妙なニュアンスであいまいにしているアメリカと領有権を主張している中国との間にある日本の決断が注目されます。最近の新聞・テレビで「台湾有事」が取り上げられることが多くなりましたが、今は仮定の話題ですが、ひとたび何らかの事件・事故が発生すればあいまいにはできない状況になります。コロナワクチンでさえ安全保障問題化するのですから、ましてエネルギー問題は安全保障問題になることは間違いありません。私たちはインテリジェンスを磨かないといけません。
私たち中小企業経営に直結する問題ではないと思いがちですが、とてもリアルな「今そこにある危機」です。
私たちにできることは、海の底ではどのような勢力がうごめいているか、常に関心を持って、情報収集する気構えが必要でしょう。