No.1121 ≪会社の命を守る行動≫-2020.7.8

7 月4 日からの集中豪雨により甚大な被災をされた方々、また被災中の方々、今後の進路によっては十分な注意が必要な方々に心よりお見舞い申し上げます。
毎年のように災害に襲われる日本ですが、今年はコロナウイルスによる感染蔓延と相まって、二重三重のご苦労がおありかと思います。くれぐれもご自愛くださいませ。

最近の商工リサーチや帝国データバンクの倒産情報をみると、例年より倒産件数が少ないことが気になります。中でも倒産要因が「破産」が圧倒的に多いのです。
倒産には不渡り2 回で銀行取引停止の場合と法的清算の場合があります。法的生産には破産、民事再生法、特別清算等がありますが、一般的には破産が圧倒的に多いです。
1999 年に少額債務であれば予納金が20 万円程度で済むようになり、倒産の8 割程度に激増したのですが、今はほとんどすべてと言っていいぐらいに増えています。
顧問弁護士に聞くと、武漢コロナウイルス対策で、裁判所も弁護士事務所も受付を制限しているため、通常の破産手続きが半減しているというのです。
なるほど、ここでも、コロナの影響が出ているのです。

さらに、コロナウイルスの蔓延により、様々な特別措置が取られています。そのうちの一つに、手形交換所における手形・小切手の取り扱い特別措置が当面の間(期限未定)で取られています。具体的には、(1)支払期日を過ぎた手形・小切手であっても取立や決済を行えるようにすること(2)資金不足により不渡となった手形・小切手について不渡報告への掲載・取引停止処分を猶予することが金融庁及び日本銀行より全国銀行協会に指示が出ています。つまり、期限までに入金がなくても不渡りとはしないということです。その対象となる手形・小切手の枚数も公開されていますが、まだまだ少数です。

また、コロナ対策で実に様々な融資が行われています。
無利子・無担保・無保証で5 年据置返済猶予特別貸付は3000 万円と少額ですが、売上高がどこかの月で15%以上減収しておればほぼ無条件で実行されます。商工中金や政府系金融機関(公庫)では2 億円程度の低金利の制度融資も比較的敷居は低く設定されています。取扱いは取引銀行の担当者がやってくれますので手続きに迷うことはありません。

さらに、劣後ローンも積極的に利用されるようになりました。劣後ローンには様々な種類や名称がありますので、勘違いされる方も多いですが、うまく使えば大変有利なローンです。
様々な理由で通常の金融機関では融資を受けられない企業が対象で、支払いができるようになれば返済してくださいねという名称通り、通常より後回しで返済できるローンです。さらに、場合によっては、融資ではなく投資に切り替えて応援しましょうというローンです。その代わり、利益が出れば配当は優先的にくださいね。
一見、借入金のように見えますが、状況次第では増資扱いで投資してくれる。投資ですから、いつ何時紙切れになるかわからないリスクがありますが、可能性に対してリスクをとってでも応援したい企業向けのローンです。

このような2 重3 重の支援策や特別措置で会社の実態が見えなくなっているのが今の状況です。逆にみれば、取引先の与信管理をしっかりしないと気が付くとその会社が消滅していたという事態にもなりかねません。
不渡りの場合は、銀行取引が中止されることによる資金ショートですからまだ債権回収の可能性はありますが、法的手続きに入ると申請時点で一切の回収行動は禁止されますので、債権者会議の行方を待つしかありません。よくて1%回収できれば御の字といえるかもしれません。
私は顧問先に対しては、手形を発行しないことを提案しています。受け取る場合は手形拒否はできませんが、支払手形を発行しない選択は経営者が決断すれば可能です。
なぜ、手形を発行しないことを勧めるのか? 答えは簡単です。倒産しないためです。倒産の法的定義はありませんが、一般的には不渡り2 回で倒産です。「でんさい」でも同様です。手形を発行しないということは、支払いはすべて現金になります。現金支払いの会社に倒産はありません。支払いが遅れても、支払いの悪い会社だと非難はされますが、銀行取引停止にはなりません。

コロナウイルス禍、激甚災害の時期、会社の命の安全を確保する意味で、考えてみてはいかがでしょうか?