現地時間12 月4 日午前にアフガニスタンのジャララバードで、ペシャワール会の現地代表でPMS 総院長の中村哲先生(73)が志半ばで命を落とされました。心より中村先生のご冥福をお祈りいたします。
先生とはペシャワール会を通じてご縁をいただいておりました。
医師として悲惨な現状を見てしまった中村先生がパキスタンのペシャワールに飛び込みハンセン病の治療を始められたのは1984 年。その後パキスタン政府の圧力もあり、アフガニスタンに活動拠点を移し、活動を継続してこられました。
医療ボランティアをするうちにもっと大事な事、本質的な問題を解決しなければ現状は打開できないと痛感し、それは食べ物であり水であり、そのためには用水路建設が必要だと喝破され、メスを土木重機に変えて治療の傍ら粉骨砕身工事に従事されました。その結果、どこまでも広がる砂漠を1 万6500 ヘクタール(東京ドーム3500 個相当)にも及ぶ広大で肥沃な緑地帯に変え65 万人分の食糧を確保することを可能にしました。
「生きる条件を整えることこそ、医師の務め」との信念を貫いたのです。視点を変えることでその場しのぎの応急処置から、永続的に成長発展するインフラを整備したのです。私達企業経営者にも今それが求められているように思います。
ペシャワール会本部のある福岡市の新聞社、西日本新聞は【アフガンの地で 中村哲医師からの報告】
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564486/という記事を定期的に掲載して支援しておられます。中村医師が凶弾に倒れる2 日前に掲載された記事によると、「緑の大地計画」でヒンズークシ山脈を源流とするクナール川の用水路工事で最後まで残ったゴレーク村の伝説的な英雄で名高いリーダーを訪ねた時の事が書かれています。
少し長いですが、西日本新聞の記事から転載します。
(省略)同村上下流は、既に計画完了間際で、ここだけが残されていたからである。
「水や収穫のことで、困ったことはありませんか」「専門家の諸君にお任せします。諸君の誠実を信じます。お迎えできたことだけで、村はうれしいのです」
こんな言葉はめったに聞けない。彼らは神と人を信じることでしか、この厳しい世界を生きられないのだ。かつて一般的であった倫理観の神髄を懐かしく聞き、対照的な都市部の民心の変化を思い浮かべていた-約18 年前(01 年)の軍事介入とその後の近代化は、結末が明らかになり始めている。アフガン人の中にさえ、農村部の後進性を笑い、忠誠だの信義だのは時代遅れとする風潮が台頭している。
近代化と民主化はしばしば同義である。巨大都市カブールでは、上流層の間で東京やロンドンとさして変わらぬファッションが流行する。見たこともない交通ラッシュ、霞(かすみ)のように街路を覆う排ガス。人権は叫ばれても、街路にうずくまる行倒れや流民たちへの温かい視線は薄れた。泡立つカブール川の汚濁はもはや川とは言えず、両岸はプラスチックごみが堆積する。
国土を省みぬ無責任な主張、華やかな消費生活への憧れ、終わりのない内戦、襲いかかる温暖化による干ばつ-終末的な世相の中で、アフガニスタンは何を啓示するのか。見捨てられた小世界で心温まる絆を見いだす意味を問い、近代化のさらに彼方(かなた)を見つめる。
おりしもスペインのマドリードでは気候変動枠組条約会議COP25 が開催されている。ここで話題になっているのは臨界点。それは人間の居住空間が地球上から消滅するという後戻りできない事態です。
5 度以上の気温上昇でそうなるといわれていたのが、最近の研究では1~2 度上昇するだけでそれは起こる可能性があるというのです。
ベネチアの街が水没した映像は衝撃的です。アマゾンの森林伐採による火災件数は昨年より倍増、焼失面積は98万ヘクタール(東京ドーム21万個分相当)と広大です。11月に発生したオーストラリアの大規模山火事は一向に衰える気配がないようです。日本では毎年強烈な豪雨による河川の氾濫・洪水で災害が大規模化しています。
バハマのハリケーンでは、洪水と竜巻が同時に発生し、逃げる場所がなくなりました。
被害に遭っていない時は、テレビの映像を通して遠く離れた場所での出来事で、自分のところは大丈夫と思っていますが、災害にあった人はまさかここで起きるとはと口をそろえます。
臨界点を迎えてからでは間に合わないのです。原子力発電所の臨界点は人間の手の及ばない原子炉の暴走を意味しますが、環境の臨界点も同様に人間の手の及ばないことが複合的に連鎖的に起きることを意味しているそうです。 身近にできることから始めたいと思います。