10 月12 日~13 日にかけて東海・関東・東北地方を縦断し甚大な被害をもたらした過去最強と言われる台風19 号で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様のお見舞いを申し上げます。
一日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。
NHK の調べでは、10月15日現在、日本を代表する37 の河川で52か所が決壊し、洪水を引き起こしました。また、決壊予備軍といわれる越水が142 の河川で確認されました。従来の治水対策では住民の命や財産を守れないことが明らかになりました。自然環境が明らかに変化してきています。欧州中期予報センター(ECMWF)は2018 年の地球の地表気温は平均14.7 度で、前の20 年間(1981年~2000 年)の平均より、0.4 度高くなっていると報告しています。
また、科学誌Science によると、海水温は2014年以降の上昇が激しく、直近の3か年は毎年最高記録を更新しており、温暖化ガスによる熱の93%は海に吸収されている事がわかったそうです。
なるほど、そういえば、時期を問わず大災害になる豪雨や暴風や竜巻がやってくるようになりました。それも、想像を絶する豪雨で、年間雨量の半分が一日で降ることも珍しくなくなりました。
気象庁によると、今回の台風19 号は1 日に降る雨量で、箱根が922.5mm で、今までの最高記録851.5mm を更新したそうです。最近の夏の最高気温は40 度以上になることが普通になり、最低気温も30 度以上はニュースにもならなくなりました。
開発が進み森林が消失し、山に水をためる能力が落ちている上に、想像を絶する激しい雨が、今まで以上に長期にわたり降り続くと、土砂崩れのリスクが高まり、ひとたび土石流が発生すると広域にわたり多大な被害をもたらします。また、排水処理の土木インフラが老朽化しており、更新工事が進んでいますが、処理能力を超えた雨量は洪水をもたらします。川が決壊して起こる洪水は外水氾濫といい、決壊も越水もしていないのに起きる洪水を内水氾濫と呼ぶそうです。多摩川が決壊も越水もしていないのに浸水被害が起きた二子多摩川駅周辺の洪水は内水氾濫が疑われています。
また、9 月28 日の台風15 号の暴風で千葉県の全域で発生した大規模で長期的な停電の原因は暴風による送電線鉄塔及び電柱の倒壊でした。その暴風は、ゴルフ練習場の鉄塔も倒壊させ民家を直撃し大きな被害を出しました。沖縄では風速50m や60m は日ごろの経験値がありますので建築物や生活に工夫を凝らしていますが、本土でこのような暴風は経験がありませんので、想像すらできないかもしれません。
さらに、今までは太平洋南方海で生まれた台風の卵が発達して沖縄・先島地方を通過し、勢力を維持しながら九州・四国に上陸し、縦断しながら熱帯低気圧に変わるのが普通の台風でした。北海道に上陸する台風は想像すらできませんでした。それがどうでしょうか。南方海上で発生した台風は発達しながら沖縄に近よらずに関東や北海道に上陸するようになりました。気象庁の会見で語られる言葉に「過去に経験のない災害の恐れがあります」「命を守る行動をとってください」が頻繁に出てくるようになりました。
川が増水して、岸がえぐられ、民家が川に流される映像は、子供のころによく見た記憶はありますが、高度経済成長を成し遂げ、列島改造で天文学的な公共投資がなされ、高度に進化した土木や建築技術で、国土強靭化が図られているにも関わらず、今回の台風19 号のように、37の河川の52か所で決壊し、家が流されたり、浸水したりする光景は、日本の将来を危うくします。中でも高齢者は深刻です。生活再建のための借入ができません。2016 年の内閣府の「高齢社会白書」によると、65 歳以上の高齢者の人口比は27.7%、高齢者のいる世帯は全世帯の内48.4%を占めます。高齢者人口の中で一人暮らしの割合は男性で13%、女性で21%に上り、激増中です。高齢者が今回のような被害に遭った場合、家屋の再建は事実上非常に困難で、こころの休まる場所がなくなってしまいます。
水につかった建築物の復興は、国が土地を買い上げ、防災対策を施し、計画的に都市開発を進め、安価で提供するとか、被害に遭った方々への救済方法も根本的に見直さねばならない時期に来ていると思います。 防災予算を見直すことも重要で、それが新たな産業の創出につながり、四半世紀は持続する成長戦略のエンジンになること間違いなしです。例えば、1戸3000 万円程度の堅牢なマンションタイプの住宅を30 万戸建設して、無償で提供しても9 兆円です。これを20 年間継続して建設しても180 兆円です。600 万戸の無償住宅は多くの人の老後を明るくするでしょうし、所有者不明の土地を国が借り上げ運用する法律を作れば、もっと有効な土地活用が可能になります。これらの関連インフラ整備に年間5 兆円、20 年間で100 兆円かけても、500 兆円です。通常の公共工事の投資効果は経済産業省の1998年の試算によると1.82倍といわれていますが、この場合だと、被災者の雇用対策も含めて5倍以上の波及効果が期待できるのではないでしょうか? そうすると、20年間の累計で2500兆円の消費を増やすことが可能になります。