No.1207 ≪いまこそ日本が資源立国になるチャンス≫-2022.4.13

ロシアのウクライナ侵略戦争は次々と民間人の残酷な犠牲者を出しながらも激化の一途で停戦に到る道筋が見えません。NATO諸国、中でもEUはロシアを声高に非難し、厳しい経済制裁を連発しつつも、一方でエネルギーはロシアに4割以上依存しておりコックを締められると1日も経済が回らないという矛盾した現状にあります。議論している間にも戦場であるウクライナでは21世紀と思えない残虐な方法で民間人の犠牲者が増える一方です。
第二次世界大戦後、戦勝国の5大国が常任理事国となって2度と世界大戦が起きないように国際連盟の反省と教訓を踏まえて設立された国際連合も何の役にも立たないことが露呈しました。ベトナム戦争も米ソ冷戦も乗り越えたのに、今回のように常任理事国が侵略当事者になり国連軍を創設できない事態になると存在価値はゼロになってしまいました。北朝鮮やイランが証明しているように経済制裁はほとんど効果はありません。苦しむのは国民だけです。ロシアはソ連時代の1930年代にウクライナで飢きんが発生し、それでも徴税強化したため少なく見積もっても400万人以上が餓死した事件。スターリンは「ウクライナの作り話だ」とさらに管理強化した国柄です。

その超大国ロシアの極東の隣国は日本です。さらに間違いなくアメリカを抜いて世界の覇権国になる中国という超大国とも日本は海上で国境を接しています。中国の海洋進出で東シナ海の実効支配が進めば日本は海運ルートを制限され輸入ができなくなります。明日は我が身なのです。ウクライナは他人ごとではありません。明治時代の仮想敵国はロシアでしたが21世紀の仮想敵国は中国です。共産社会主義を国是とする2大超大国と国境を接する日本にとって安全保障問題は喫緊の課題です。日本は明日のウクライナなのです。なかでも、今まで日米安保依存でごまかして触れることさえタブーだった「軍備強化」と正面から向き合い、「自給率3割未満の食料問題」「ほぼ海外依存のエネルギー問題」をいくらコストと時間がかかっても解決しなければならない時期になりました。これら3つの事は今ならできるのです。恐らく最後のチャンスでしょう。もちろん主役は政治家ですが、私たち中小企業経営者も主役にならねばなりません。

まず、ウクライナ危機で一気に顕在化した「エネルギー」です。食料は次回にお届けします。日本は石炭も石油も天然ガスもほぼすべて輸入に依存しています。電気は原子力発電、太陽光発電、風力発電、波力発電、地熱発電、潮流発電、バイオ発電、宇宙空間発電等で多少は自給できていますが、オイルはそうはいきません。そこで、注目したいのが以前にも紹介しましたのでご存じの方も多いと思いますが、2013年3月12日に取り出しに成功した「メタンハイドレート」の活用です。採取コストは若干割高(LNGの約3倍)ですが、もしもエネルギー輸入が途絶したならばコストの問題ではなくなりますし、技術開発が進み低コストで利用可能になります。達成不可能だと言われたアメリカの大気汚染防止のための自動車環境規制マスキー法もホンダが世界に先駆けてクリアし解決しました。2度のオイルショックの後で開発された省エネルギー技術は世界に冠たる技術です。必要に迫られると日本は実に強いのです。

「メタンハイドレート」に関して昨年の4月28日のメルマガ記事を転載します。
「2021年4月18日付の日経新聞で「三井海洋開発がメタンハイドレート採掘。水素の安定供給確保」の実験を来年度から始めるというのです。菅総理が2050年カーボンオフ、2030年46%削減(2013年対比)の発表を行った根拠となる背景の一つではないかと思います。
記事によると、メタンハイドレート採掘には、2011年から開発が始まった日本海側の水深500m以上の海底から採掘する「表層型」と2001年から開発が始まっている排他的経済水域(EEZ)内の水深1000m以上の海底をさらに数百m掘り進む「砂層型」の2つの方法があり、三井海洋開発は表層型の開発に着手するようです。表層型の対象となるメタンハイドレートの埋蔵個所はわかっているだけで1742か所あり、1か所あたり6億㎥(約2日分相当)の埋蔵量があるそうです。(※追記:1742か所で採掘すると3500日分)
そもそもメタンハイドレートというのは何かと言いますと、釈迦に説法をお許しいただき説明いたします。
海底下にあるメタンガスがものすごい圧力で氷状に固まっている状態のものをメタンハイドレートと言います。メタンハイドレート1㎥から160㎥のメタンガスが採取できます。採取した氷状のものが海面近くに上昇すると次第に気化しますのでそれを採取し、利用するのです。分かっている埋蔵量はメタンハイドレート約4.1兆㎥(約100年分)、レアアース約11億トン(約230年分)です。
地上資源は輸入に頼らざるを得ない日本ですが、皆さんもご存じのように、海底資源は世界でも有数の資源保有国です。その最大の理由はEEZ(排他的経済水域)の広さにあります。日本のEEZはアメリカ、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、カナダに次いで世界6番目で、その面積は447万k㎡。尖閣諸島や沖ノ鳥島の存在が大きいです。
なぜ、海洋資源に希望が持てるかといいますと、日本近海の海底にはメタンハイドレートやレアアースが豊富に眠っているのです。そして、2013年3月12日、遂に経済産業省の地球深部探査船「ちきゅう」が、愛知県沖の水深1000mの海底からさらに約300m掘り進んだところにあるメタンハイドレート層から採掘に成功したのです。この記事を見たとき、「もしかしたら、日本は面白いことになる」とワクワクしました。

この採掘技術や船上施設の世界大手が三井海洋開発でほかにも三菱造船等の海洋技術を持った企業が日本にはたくさんあります。採掘プラント一式数百億円から数千億円と高価ですが、我先に引き合いが来るのではないでしょうか。ESG投資の最適企業となること間違いなしです。(略)

日米安保の範囲内にあるとはいえ、尖閣諸島の領有権については微妙なニュアンスであいまいにしているアメリカと領有権を主張している中国との間にある日本の決断が注目されます。最近の新聞・テレビで「台湾有事」が取り上げられることが多くなりましたが、今は仮定の話題ですが、ひとたび何らかの事件・事故が発生すればあいまいにはできない状況になります。(略)私たちはインテリジェンスを磨かないといけません。
私たち中小企業経営に直結する問題ではないと思いがちですが、とてもリアルな「今そこにある危機」です。
私たちにできることは、海の底ではどのような勢力がうごめいているか、常に関心を持って、情報収集する気構えが必要でしょう。」

(転載終わり) 誰もが想像すらしていなかったロシアのウクライナ軍事侵略が現実化し、関係国との利害が顕在化し、世界は戸惑っています。日本は4月28日でワシントン講和会議によって主権回復して70年になります。その間ずっと見て見ぬふりをして先延ばししてきた宿題に本気で取り組まねばならないようです。