No.1368 ≪ビジョンとレーゾンデートルとパーパスとミッションと。≫-2025.6.4

ミレニアム(千年紀)とセンチュリー(百年紀)が重なった2000年前後から社会の変容が激しくなっているように思います。1991年にソ連が崩壊し東西冷戦が終結するとパックスアメリカーナの時代となり、1993年にはEUが成立し1999年には共通通貨ユーロが導入され大きな経済圏が誕生しました。2005年にはアジアが中心となりTPP経済圏構想も生まれました。2010年にはG7に対抗したBRICS経済圏が誕生しグローバルサウス勢力が生まれました。2017年トランプ1.0、2025年トランプ2.0の誕生により、長い年月を経て実現した国際調和路線に亀裂が入り、非常に不安定な時代になりました。

企業においては取り巻く環境が大きく変化する時は、安定勢力を誇っていた主流派の業界大手企業のビジネスモデルに揺らぎが生じます。揺らぎは亀裂となって様々な仕組みやシステムに不具合が生じます。精度疲労は変化対応のズレを生じ顧客だけでなく社内にも不満や不安や不信がくすぶりだします。
その変化の兆候を敏感に捉えたチャレンジャーが新しいビジネスモデルを引っ提げて台頭してきます。チャレンジャーの多くは異業種又はスタートアップ企業からの参入です。彼ら新勢力のビジネスモデルは不満や不安を解決して時代の潮流に乗って急成長してゆきます。
旧勢力も時流適応するために世代交代し、身を切る構造改革、意識改革を断行し、イノベーションを起こして、旧勢力ゆえの顧客基盤や財務基盤の強みを生かしたビジネスモデルを構築し攻勢に出てきます。
アップデートした旧勢力(長寿企業)と新興勢力の勝ち残りを賭けた激しい競争が繰り広げられ、変化に対応できない企業は次第に衰退し、場合によっては消滅します。勝ち残った企業が創造する市場は次第に安定し繁栄を謳歌しますが、大きな変化がおきると同じことが繰り返されてゆきます。

今まで信じて疑わなかった価値観に揺らぎが生じてくると漠然とした不安が生じ、次第に増大してゆきます。経営者は10年先、30年先、役員でも3年~5年先を見るのが仕事ですのでその不安はたとえようもなく大きなもので、心のゆとりがなくなってゆきます。従業員は役員の顔を、経営者の顔をよく見ています。不安な顔や弱気な発言、上の空の対応をしたりすると敏感に感じ取り、不安に苛まれ動揺します。退職者がでるのもこのような時です。
変化が激しく予測困難で不確実で複雑に絡み合った曖昧な情報をもとに判断しなければならないVUCA (Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代はなおさらです。

向こう50年後の人口構成やテクノロジーの進歩、南海トラフ地震の発生はおぼろげながら見えていますが、世界がどう変化するか、日本がどうなってゆくか、社会や顧客や人々の価値観はどう変化するか、誰にもわかりません。
有能なエコノミストが発表する1年先の経済予測が当たることが滅多にないように、10年先、30年先はもっと予測が困難です。タイムマシンでもない限りわからない未来を見ても徒労に終わります。
それよりも、ワクワクする会社の進むべき方向、実現したい姿、なりたい自社像を「ビジョン」(又は「願望」「願い」)として自由に描けばよいのです。そこには科学的エビデンスは不要です。ワクワクできる「ビジョン」なら必ず近づけます。経営者が山籠もりして一人で作ってもよいですし、将来を嘱望する社員と喧々諤々の議論を通じて描いてもかまいません。正解か不正解かが問題ではなく、何としても到達したい、目指したいかどうかが重要なのです。
実現するかどうかはやってみなければわかりませんので気にする必要はありません。実現するまであきらめなければ必ず実現します。

ワクワクする「ビジョン」(又は「願望」「願い」)は通常3部構成で成り立っています。
1つ目は、存在意義(レーゾンデートルraison d’être)を明確にすることです。「わが社は何のために存在するのか」「もし、わが社がなければだれが困るのか」 ふつうは「経営理念」で表現されていることが多いと思います。創業者がどのような思いで起業したか、原点となる開店日の思いを忘れず、創業者が見ている先、そこのある価値観を同じ思いで見つめることが大事です。
2つ目は経営理念(存在意義)を踏まえて、経営目的(今のはやり言葉でいえばパーパスです)を決めることです。100年かかっても実現したい姿とは何かを描きます。
3つ目にはそのためにどのような社運をかけた大胆な使命(ミッションと表現してもかまいません)を設定し、いつまでに達成するかを決めることです。通常は5年~10年程度の時間がかかると思います。
社運を賭けた大胆な使命をさらに具体的に落とし込んだものが年度別の戦略になりますし、数字で表せば目標になります。

ワクワクする「ビジョン」(又は「願望」「願い」)が描けると、不安は不思議なくらい消えてしまいます。代わりに現れるのが「希望」です。「希望」は早く行動したくてウズウズするものです。なりたい姿を公言し徹底的に実行する。これを有言実行と言います。公言することで多くの人々の力を善なる外圧として利用できます。「嘘つき」呼ばわりされたくないので一所懸命わき目もふらずに行動します。公言しただけで行動しなければ単なる思い付きの「願望」にすぎません。「願望」に期限をつければ「意思」に変化し、「意思」は行動を伴いますので結果が出ます。VUCAの時代に勝ち残るワクワク「ビジョン」をデザインしましょう。