No.1353 ≪27年前のアメリカに学ぶ≫-2025.3.10

お知らせ:恒例の絵画展覧会「OBG展覧会‘77 -‘78」を3月9日(日)~15日(土)に大阪西天満老松町の「大阪現代画廊」で開催します。今年で14回目となりました。ついでがあればお立ち寄りくださいますとありがたいです。

来る3月11日は東日本大震災から14年目を迎えます。お亡くなりになった方々のご冥福と被害にあわれた方々の平安を祈ります。大規模で甚大な被害を受けてもなおたくましく前を向いて復興・再建にまい進されています。さらに震災被害地だった大船渡は12日間の面積の6%にあたるひどい山火事に見舞われ、昨日鎮火宣言されましたが、焼失した家屋の前で人々はたくましく前を向いて再建を決意されています。大いに敬意を表します。私たちにできることを実践してゆきたいと思います。

1998年4月アメリカ流通業を視察した印象をメルマガにしました。アメリカを知る一つのきっかけになればと思い、古い記事ですが1998年7月22日号のメルマガを再録します。多少編集してお届けします。
「アメリカは世界を征服したいと思っている。アメリカの強みは76の民族と235ヶ国(国連加盟国は196国ですが、自己主張する国は200以上あります)からの移民が混ざりあっている国です。これを「人種のるつぼ(melting pot)」と言われ溶け合っているように言われますが違います。溶け合ってなんかいません。「人種のサラダボール」です。サラダはレタス、トマト、キューリ、オニオン、ピーマン等が自己主張しながらも全体と調和し、単品ではなし得ない魅力づくりに貢献しています。同じように、イギリス人、フランス人、日本人、中国人、メキシコ人等の肌の色、髪の色、言葉、宗教、習慣、文化、食べ物等が異なる人種が星条旗の下で一体となって混ざり合っている国。
それがアメリカです。混ざることによって強くなっているわけです。
様々な切り口でモノを見て、議論して、形を作っていくのです。いかなる国にも対応できるバージョンを開発できるわけです。世界中にアメリカを浸透させるために英語を使わざるを得ないシステムや、商品を開発し、発信していくのです。そのために英語を世界共通語にしようとしているのがアメリカの戦略です。パソコンの仕様もインターネットの情報源もすべて英語が基本です。

顧客満足がすべての基本。(今はAmazonに抜かれましたが)アーカンソーの田舎で生まれた世界最強の流通業「ウォルマート」の創業者サム・ウォルトンは「ベン・フランクリン」というバラエティストアのフランチャイジーをしていました。本部にいろいろ提案をしましたが、聞き入れてもらえず、そのシステムに飽き足らず自分で創業したのが「ウォルマート」です。(「ベン・フランクリン」は1990年代に倒産した)お客様は田舎の低所得層の貧乏な人たちで、彼らが楽しめる店を作ろうというのが創業の原点です。だから、今まで田舎を中心に出店してきました。 

店内に必ず置いてあるアイテムとして「パッチワーク=母親のイメージ」の材料と道具、そして田舎の唯一の楽しみ「つり」の道具はすべての店に置いてあります。 この2つのアイテム以外は店舗の商圏内の人種や所得に応じてアレンジされています。一般的に「ウォルマート」のお客様の所得は年間1万ドル以下が圧倒的多く、価格志向の強い店舗になっています。どの客層に、どの商品を、どのような場所で、いつ(営業時間)、だれが、どのように販売するかという戦略が業態の基本なのです。これがフォーマットとよばれる考え方です。ですから「ウォルマート」では、店舗により商品構成が大幅に異なるのもそのためです。

いかに経費率を下げるかが勝敗の分かれ目。業界1位の「ウォルマート」の粗利益率は22%ですが経費率は18%なので利益は4%あります。一方、業界2位の「Kマート」(2002年に破産)は粗利益率は「ウォルマート」と同じ22%ですが、経費率は21%なので1%の利益しかありません。この差が「Kマート」が「ウォルマート」に負けた原因です。
小売業は薄利多売が原点で薄利多売をできるシステムを維持しながら利益を出す方法を考え 出さねばなりません。
経費を押さえるために「物流システム」「受発注システム」の研究からQRS(クイックレスポンスシステム)、EDI(エレクトリックデータイクスチェンジ)が開発されてきました。
この手法が世界の流通業の主流になりつつあります。「ウォルマート」のコンピュータ投資額はNASAについでアメリカで2番目に多いといわれています。また、人件費コントロールのためにレイバーコントロールのバジェット(許容範囲)を店長に一任し、店長の評価を稼動時間のバジェットで行うという手法も編み出しました。 
万引き防止等のために入り口に「ハロー!」と言ってニコッと笑う挨拶おじさん(おばさん)を配置しているのも人間の良心をうまく活用している手法です。 

この挨拶おじさんは、年配者であったり、車イスの方であったりします。普通では仕事につけない人々にチャンスを与えているのです。ですから彼らのロイヤリティは、コストのわりには抜群です。」(以上 引用終わり)

アメリカは何も変わっていないことがわかります。