No.1350 ≪ 「この指とまれ!」といえる会社≫-2025.2.13

最近こんなことを耳にしませんか?
「また退職者がでた。止まらない」「賞与の支給後は退職者が出る魔の季節だ」「待遇を良くしたのにやめる人がいる」「退職代行会社から電話があった」「せっかくリーダーに育ってくれたと思ったらやめてしまった」
今やテレビでは転職サービスのコマーシャルがひっきりなしに流れており、まるで転職バブルのようです。
ライフスタイルや価値観による変化に対応して自分の適性にあった環境に向かって流動化することは悪いことではありません。また、求人側から見れば求める人材像にマッチした人材を迎えるチャンスが増えるのですから、好循環の一環としてとらえることで道が開けると思います。

総務省統計局労働⼒⼈⼝統計室から「直近の転職者及び転職等希望者の動向について」(2023年12月18日)というレポートがあります。それによると、就業者総数は2013年の6326万人から2018年の6682万人、2023年6747万人と10年間で421万人増えています。
「あれっ、減っているんじゃないの?」と思っておられる方もおられるでしょうが、増えているんです。その中心は65歳以上が277万人、45歳から64歳で355万人増えています。減っているのは44歳未満の「若い人が少ない」ということですね。団塊世代が後期高齢者になる2025年問題はこのような背景にあります。
では転職者数はというと、2013年の325万人、2018年の329万人、2023年が325万人とこれまたほぼ横ばいです。就業者に占める割合も2013年が4.5%、2018年が4.1%、2023年が4.8%と誤差の範囲で横ばいです。

その中身をみると、10年前と比較して最も多いのが65歳以上で+8%で19.3%。定年後の再就職ですから当然と言えます。次に多いのは45歳から54歳が+2%で21%。守るべき家庭も落ち着き、キャリアも積んで、次のキャリア形成を目論む年代層です。24歳未満はほぼ横ばいで13%です。
逆に転職者が減少している年代は、25歳から34歳は5%減少し11%、35歳から44歳も5%減少し15.3%と子育て世代は安定優先の現実志向といえます。

もう一つの視点、転職希望者を見てみると、コロナ禍前まではほぼ800万人(就業者の約12%)で推移していましたが、コロナ禍が始まってから漸増し2023年には1035万人(就業者の約15%)まで増加しました。
実際に転職する人の割合は4.8%と横ばいですが、働き方改革関連法やリモートワーク、副業推奨が浸透した影響もあるでしょうが、転職予備軍が大幅に増えています。ちょっとしたことで転職行動に移るリスクが高まっているのです。転職希望者を年代別で見ると、25歳から34歳が就業者の22%と最も多く、次に24歳未満と35歳から44歳がともに16%、45歳から54歳が13%、55歳から64歳は9%、65歳以上は5%となっています。

2017年ごろから始まった退職代行サービスの利用者が激増しており今ではわかっているだけで23社あります。
マイナビの「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」が参考になります。
レポートによると、直近1年間に転職した人で退職代行を利用した人は16.6%だそうです。
年代別では、20代が18.6%、30代が17.6%、40代が17.3%、さすがに50代は4.4%と低いです。
職種別では営業系が25.9%、クリエイター・エンジニア系が18.8%、企画・事務・総務系が17%、サービス系が13.3%、建設技術系が12.6%、医療・保育系が11.9%、専門職・コンサルタント系が11.1%。
退職代行サービスを利用する理由は、「退職を引き留められた(引き留められそうだ)から」が40.7%、「自分から退職を言い出せる環境でないから」が32.4%、「退職を伝えた後トラブルになりそうだから」が23.7%となっています。自分が辞めれば同僚の負担が増えるのは目に見えているので猶更サービスを利用するのかもしれません。

ではなぜ辞めるのか? リクナビの退職理由の本音と建前ランキングが参考になります。https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/  本音ランキングは「1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)、2位:労働時間・環境が不満だった(14%)、3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)、4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)、6位:社長がワンマンだった(7%)、7位:社風が合わなかった(6%)、7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)、7位:キャリアアップしたかった(6%)、10位:昇進・評価が不満だった(4%)」の順です。

建前ランキングは「1位:キャリアアップしたかった(38%)、2位:仕事内容が面白くなかった(17%)、3位:労働時間・環境が不満だった(11%)、3位:会社の経営方針・経営状況が変化した(11%)、5位:給与が低かった(7%)、6位:雇用形態に満足できなかった(4%)、6位:勤務地が遠かった(4%)、6位:仕事に対する責任がなく物足りなかった(4%)、9位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(2%)、9位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(2%)」の順です。
ほとんどが経営の問題なのがわかります。「今の若いものは・・」とか「俺たちの頃は・・」という懐古主義はいつの時代もこれからも通用しません。私が20代の頃も先輩から同じようなことを言われていましたから。

ではどうするか! 本音ランキング項目の上から順に解消することです。
「(省略)産業人の使命も、水道の水のごとく、物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供することにある。それによって、人生に幸福をもたらし、この世に楽土を建設することができるのである。松下電器の真使命もまたその点にある」(松下幸之助氏の闡明式のことば)https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/history/chronicle/1932.html  
京セラ創業者の稲盛和夫氏は「会社の規範となるべき規則、約束事、企業が目指すべき目的、目標を達成するために必要な考え方を明確にし、企業にすばらしい社格を与える。そのための人間としての正しい生き方、あるべき姿」を京セラフィロソフィに示し実践する集団を作り上げられました。
「わが社は社会をよくする製品(又はサービス)を次々と開発し提供する。それを実現する多くの仲間を求めている。待遇や条件も今は〇〇しかできないが、〇年までには地域NO.1に持ってゆく。一緒に目標を共有してくれる人はこの指とまれ!」