No.1405 ≪現場力が社会を牽引する≫-2026.2.18

人手不足が止まりません。しかも労働力人口は2年連続で戦後最多の7,000万人を突破し、就業者人口も6,830万人とこちらも戦後最多となりました。人口減少、少子高齢化と言われて久しいにもかかわらず。不思議です。
就業者のうち、70代以上の就業者は約500万人、75歳以上の就業者は約180万人も働いています。一方で、求人への応募がゼロという声もよく聞きます。待遇面をよくしても応募がないとか。
デフレ時代の失われた30年間は、外国人労働者に頼っていたのが、コロナ禍で皆帰国してしまい、コロナ後は、円安で日本の給料が一番安くなり、日本以外にシフトしたことが大きいのではないかと思います。

大手上場企業の中には初任給30万円以上のところがありますが、中小企業ではまねできることではありません。法人企業統計によると、2023年度で見ますと、売上高は日本全体で1600兆円、そのうち上場企業の売上高は約1000兆円、構成比は約63%です。経常利益では日本全体で95兆円、うち上場企業は約40兆円、構成比で約42%です。法人企業数の0.1%に当たる約4000社の上場企業が、売上高の63%、経常利益の42%を稼ぎ出しています。そこで働く従業員は約700万人で、労働力人口の約10%です。日本のGDP構成比のうち、個人消費が50~55%ですから、働く人の給与が上がらないことには成長できないことは明らかです。700万人がたくさん買い物をするか、6300万人が普通に買い物するか、答えは明確です。同様に700万人の所得が100万円増えるのと、6300万人の所得が15万円増えるのとでは明らかに後者です。所得が増えれば買い物も増えます。

この時に、最大の難関は、価格改定です。売り手は少しでも高く利益のとれるように価格改定したいし、それによって従業員の待遇改善を図りたいし、買い手は少しでも安く買いたい、それによって従業員に待遇改善を図りたい。そのバランスをとるのが今の時期なのでしょう。
日本はベルリンの壁の崩壊以降、約30年の長きにわたって、デフレを経験してきました。デフレの時代は買い手市場で、より安く、より安くというコストカットが生き残り戦略でした。値上げ=売上減少=経営破綻の不安と戦わねばなりませんでした。コストカットは従業員にも向かい、非正規社員の導入や実質的な賃下げが行われていました。この習慣が、企業経営の基本フォーマットになって久しいので、諸物価が高騰しても、人件費が高騰しても、値上げできる勇気のある企業は限られていました。そうして、どんどん労働市場は疲弊してきた歴史があります。そこにデジタル化の推進、AIの導入で、人間でなくてもできる仕事が増え、財務的に余裕のある企業は設備投資することで人件費を削減してゆきました。それがますます価格改定を困難にしてしまいました。

2026年2月9日号の「日経ビジネス」は「現場の復讐 年収1000万円、ブルーカラー争奪戦」というテーマで特集が組まれています。その中で、日本政策投資銀行が大手企業に対して不足している人材の種類を聞いたデータが掲載されています(P18)。業種別、職種別に分類し、職種別はさらにホワイトカラーとブルーカラーに大別されています。ホワイトカラーは経営人材、管理職、営業職、バックオフィス人材、企画人材、研究職、IT&AI人材、ブルーカラーは現場の熟練労働者、現場の未熟練労働者。技術職・エンジニア職はホワイトカラーとブルーカラーの両面の役割を持つ職種になっています。最も不足している人材は技術職・エンジニア職です。次に多いのは現場の熟練労働者です。ホワイトカラーが不足している割合は業種にもよりますが多くて3割程度です。

ブルーカラーは今まで日が当たらないことが多かったでしょうが、今は、エリート扱いになっている企業が多いです。新卒の求人倍率も高専卒が40倍、工業高校卒が20倍、大卒・高卒は数倍です。また、現場は資格の集合体で仕事が成り立っています。評価をするうえで資格は非常にわかりやすい客観的指標です。資格を持たねば現場に入れないことが多いので、必然的に複数資格の有資格者になります。国土交通省が2019年より本格導入したCCUS(Construction Career Up System)はその最たるもので、全国共通で同一資格同一賃金の先頭を走っています。地域による賃金格差がなくなりつつあります。
いよいよ現場にスポットライトが当たり、必要な資格を持った現場に強い従業員が会社をリードし、現場に強い従業員を多数雇用する現場に強い企業が成長し、日本を牽引してゆきます。

かって、建設業界は職人の日当をたたいてコストカットすることで利益を上げていました。私は、そんなやり方で業界が持続できるはずがないと思い、「現場代理人セミナー」を開講しました。その一番の目的は、職人さんの日当を倍にして、利益を上げる現場代理人になろうというものです。安い日当で多数の人工数を使うよりも、高い日当で効率よく短工期で仕上げる代理人を育成することです。日当を二倍にして、工期を短縮するほうが利益は倍増するのです。理由は建設現場の人件費は総コストの6割を占めるからです。