私たちだれもが避けて通れない人生関門があります。仏教用語では「四苦八苦(しくはっく)」というそうです。大谷大学(京都)の生活の中の仏教用語 – [315]によると、「四苦とは生(しょう)・老(ろう)・病(びょう)・死(し)、八苦とは愛別離苦(あいべつりく)<愛するものと別れる苦>、怨憎会苦(おんぞうえく)<怨み憎まねばならないものと会う苦>、求不得苦(ぐふとっく)<求めて得られない苦>、五蘊盛苦(ごうんじょうく)<総じて人間の活動による苦>の四苦に先の生老病死の四つを足して八苦」とあります。
四苦のなかでも特に高度高齢化社会の日本では「老」が大きな課題です。中でも認知症は真綿で首を絞められるように私たちの日常にじわじわと迫ってきています。先端医学の進歩で薬剤やIPS細胞による治療法も研究されていますので近い将来はワクチンができて根絶できると思いますが、当面は発症しないように予防に努めるしかないでしょう。
内閣府の「認知症施策推進関係者会議」の2024年5月会合で公開された研究結果『認知症及び軽度認知障がい(MCI)の有病率調査ならびに将来統計に関する研究』によると、2022年の認知症患者数は約443万人、有病率は12.3%と、高齢者の約8人に1人の割合になっています。そこに軽度認知障がい(MCI)も加えると、患者数合計は1,000万人を超え、有病率は60代で1%、70代前半で3%、後半で7%、80代前半で17%、後半で32%、90代超では50%と、加齢とともに有病率は上昇するようです。
また、最近の報道で「帯状疱疹」の話題が多いですが、これも加齢とともに発症率が上昇するようです。子供の頃に水疱瘡を患った方が加齢による免疫力の低下とともに眠っていたウイルスが神経経路に沿って活性化して「帯状」に発症するので名前が付いたようです。私たちの体は神経の集合体ですから体表だけでなくどの部位に発症するかわかりません。数年前に帯状疱疹に罹患した私の友人によると「とにかく痛い。今も後遺症に苦しんでいる。ワクチンはやっておいた方がいいよ」と言います。寿命が延びれば伸びるほど様々な病苦を経験しなければならないようです。
だれもが不可避と思われる認知症と帯状疱疹は実は密接な関係があることが多くの研究成果からわかってきました。
既にご存じの方も多いと思いますが、帯状疱疹を予防するワクチンが認知症の予防にもなるという報告です。
まだまだ分からないことも多いでしょうが、知っておくことは良いことです。
雑誌「Nature」4月2日号によると、米スタンフォード大学医学部のGeldsetzer氏がイギリス・ウェールズで実施された79歳限定対象者にワクチン(メルクMSD社製「Zostavax」)接種と非接種の比較検証した結果は接種者の認知症発症率が3.5%低下し、これは20%の抑制効果に相当すると報告しています。
出所:HealthDay News 2025年4月2日https://www.healthday.com/health-news/neurology/shingles-vaccine-protects-against-dementia[2024.09.16]
また次のような報告もあります。
「Nature Medicine」に発表された研究では、メルクMSD社製「Zostavax」を接種した65歳以上の約10万人と、GSK社製「Shingrix」を接種した65歳以上の約10万人を比較した結果、ワクチン接種から6年以内に認知症と診断された確率は、「Shingrix」を接種した人の方が、「Zostavax」を接種した人より17%低いことが分かったそうです。
出所:CNN 2024/7/31付https://www.cnn.co.jp/fringe/35222175.html
コロナ禍におけるmRNAワクチンの評価についてもいまだに定まっておらず様々な話が出ていますので今回の帯状疱疹ワクチンによる認知症予防の話題も一概には喜べませんが、情報を確認する価値はあろうかと思います。
信頼できる主治医をお持ちでしょうから、主治医と相談するのはすぐにできるわが身を守る一助かと思います。もし、効果があるなら一石二鳥です。
詳細は国や自治体により異なりますが助成により65歳から5歳毎に定期接種することができます。1回法(生ワクチン阪大微研製「ビケン」)と2回法(GSK社製「Shingrix」)が推奨されており、選択できます。
ファクトとフェイクに翻弄され続ける情報社会に生きる私たちはインテリジェンスを磨き続けねばなりません。