「利益の源泉は社内にあり。商売の種は社外にあり」というのが経営の原理原則です。
商売が生まれる現場を見てみると国内だけでなく国外も含めると無限と言ってよいほどあります。地域、人種、文化、歴史、価値観、人口構成、性別、産業構造、、、日本だけ見ても、国で統計を取っているだけでも相当数あります。例えば、総務省の「日本標準産業分類」によりますと2021年時点で大分類20、中分類99、小分類530、細分類1460の産業があります。上場企業を対象とした東証業種別株価指数は33種類の業種に分類されています。職業では2020年版の厚生労働省編職業分類表によると約18000以上に分類され、それがハローワークの職業分類になっているようです。ちなみに経営コンサルタントは「03法務・経営・文化芸術等の専門的職業>013 経営・金融・保険の専門的職業>013-99 その他の経営・金融・保険の専門的職業」に分類されます。今はやりのインフルエンサー、ユーチューバー、eスポーツプレーヤー、スケートボーダー、ストリートダンサーなる職業は掲載されていません。職業をビジネスにすると会社になり、会社が増えると産業になりますから次の統計には掲載されるかもしれませんね。
では会社はどれぐらいあるかというと2021年の「経済センサス」によると約337万社、就業者は6706万人となり、前回の2016年調査に比べ、会社数は22万社減少しましたが、就業者は220万人増えました。会社数が減少しているのは倒産・清算・廃業した会社が増えているからです。2024年の新規設立会社は約15万4千社に上り毎日どこかで421社が起業していますが、それ以上に淘汰された会社が多いことになります。また、増えた就業者はほぼ65歳以上なので生産年齢人口では減少しています。
日々、人々が社会に求めるニーズは時々刻々と変化しています。しかもそのニーズはとても多様で移り気で八方美人化しておりとらえどころがありません。ニーズをつかむためにマーケティングリサーチやアンケート調査をします。ところが、その結果は方向性の確認どまりです。具体的な決断は経営者しかできません。もっとも確実な方法は、身近なニーズにいち早く気づき事業化することです。
例えば、クリアベールという空気清浄機があります。これを開発した人は藤村靖之氏で元小松製作所の研究者で、息子さんがアレルギー性喘息で苦しんでおられるのを何とかしたいと思ってイオン式の空気清浄機を開発されました。1984年にピーエス環境技研(現カンキョー)という会社を起業し発売されたところ同じニーズを持つ方が共感して爆発的にヒットしました。1997年には年商100億円を突破しました。残念ながら、財務処理がまずく会社更生法を申請され今は発明家として幅広く活躍されています。
例えば、今や世界50か国433万人の生徒が学んでいる「公文塾」は、高校の数学教師だった公文公氏の小学校2年生の息子さんが得意の算数テストで悪い結果を取ってきたのを見た母親が公文氏に相談したことから始まります。公文氏は息子さんの勉強を見ながら、無理せず、自分の力で解ける学習法が必要だと思い、息子さんは何ができて何ができないかを観察し、学力の伸びに合わせた計算問題をルーズリーフ形式で毎日作成しました。すると、成績はぐんぐんとよくなり小学校6年生で高校の微分積分をマスターするぐらいになりました。「教育は個人別に行われるべきだ」という考えを実践する大阪数学研究会を設立し、今の公文塾に成長しています。
例えば、2007年創業のAirbnbは2024年12月現在、年商111億ドル、192か国に展開し、年間予約数は4.95億件のビッグビジネスに成長していますが、発端は、美大生だった創業者のブライアン·チェスキー氏とジョー・ゲビア氏が貧乏で部屋を借りられずルームシェアしていた時に、開いているスペースにエアーベッド3台置いてB&B(英国風の宿泊と朝食サービス)として貸し出したことに始まります。その周辺はホテルが少なく予約が取れなかったという環境がありました。うまくいったので彼らはホテルが飽和状態になっている地域で展開することにしました。そこにIT技術を持ったネイサン・ブレチャジック氏が合流し、本格的にマッチングサービスを展開することになりました。トラブルも予約数の0.1%(約50万件)にも上るようですが、健闘しているようです。
例えば、ウーバーの共同経営者トラビス・カラニック氏ように何度もIT系ビジネスを起業しその都度失敗し、うまくいったと思ったら顧客から総すかんをくらい33億$の損害賠償を請求され破産。それでもめげずに失意のどん底から這い上がりまた起業してもうまくゆかず、それでもあきらめず投資家を探し続けて、会社を売却することに成功し億万長者になりました。プログラマーのギャレット・キャンプ氏と途出会い、キャンプ氏は運転手を採用しようとしてうまくゆかず、タクシーを配車できるサービスがあったら便利ではないかとアイデアを出しました。2009年、早速アプリを作って配信する会社を作り大成功しました。それがウーバーです。
例えば、1991年にセフト研究所を起業した市ヶ谷 弘司氏はソニー在職時に赴いた東南アジアで「生理クーラー®理論」を着想しそれを応用した『空調服®』を開発し、特許権を取得しました。今では毎年異常な暑さを更新している日本の夏に不可欠の服になっています。
ビジネスのヒントは足元に転がっています。5不(不足・不満・不安・不満・不便)はビジネスの種です。それを自分だけの5不なのか、多くの人に共通する5不なのか、やってみないとわかりませんね。だめならやり直せばよいのですから。