「深刻な人手不足」が話題になって久しいです。一方で、労働力人口は少なくとも直近2014~2024年の11年間で毎年40万人近く増加しています。いずれも2020~2023年のパンデミックは考慮しないといけませんが、総務省統計局の就業状態動向https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/gaiyou.pdf によりますと、2024年は6957万人で15歳以上の人口に占める割合は63.3%にも達しています。失業者は182万人(完全失業率2.8%)ですので就業者数は6768万人です。人手不足で騒いでいるけれど、統計的には働いている人(就業者)は増加している! おかしいと思いませんか?
中身を見てみるとその原因がわかります。過去11年間で見てみると、まず就業者総数は106.4%と増加していますが、中でも増加率が高いのが65歳以上で136.4%です。減少率が最も大きいのが35~44歳の働き盛りで83.1%と17%も減少しています。次に減少している年代は25~34歳の中堅クラスで97.4%と2.5%減少しています。つまり、最も気力体力ともに充実している中堅層が大幅に減少しているのです。25~44歳の層でみると11年間で286万人、10.7%も減少しているのです。
業種別にみると、最も増加しているのが情報通信産業で143%、次に不動産・リース業124%。後は教育、医療福祉、公務と続きます。一方減少率が大きいのが、建設業94%、卸売・小売業98%です。インバウンドを支える宿泊・飲食業は105%と堅調です。
人手不足を機械化で補うように手を打っているのではないかと思いデータを当たってみました。経営分析指標の一つに労働装備率があります。有形固定資産を社員数で割ったもので一人当たり機械化率とも呼びますが、これを日本産業に当てはめてみました。財務省政策研究所の「法人企業統計年報」のデータをもとに全産業(公的資産は含まない)を就業者数で割った労働装備率は、2014年が386万円/人、2023年が432万円/人と112%増加しています。
これをどう見るかですが、経済産業省の「製造業の投資動向」レポートを見ると、コロナ禍を通じて設備投資が2020~2023年に120%増加しています。また、同じレポート内で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「令和5年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」(2024年3月)の引用で、営業利益率別の投資目的を分析していますが、営業利益率が1%未満の企業は老朽設備の更新需要が最も高く、営業利益率1~10%の企業は生産設備更新意欲が高いことが示されています。
人手不足に対する原因やインパクトは様々ですが、今起きている人手不足は中堅層(25~44歳)の減少に対する対策が急務であることを示しています。10年後には65歳以上人口の中でも75歳以上の後期高齢者層が引退する可能性が高いことを考えると、本当の人手不足はこれから本格化することは明白です。伊藤忠商事の初任給が32.6万円、3か月後は36万円とうらやましいほどの高額になるのもわからなくはないです。
不足している中堅層は世代分析で見れば俗にいう「ゆとり世代(1987~2004年生)」が主流を占めます。中でも第一世代と第二世代が中心になります。この世代の共通価値観は一般的には「ワークライフバランスを重視する傾向がある」「ITスキルが高い」「競争意識が低い」「人間関係を重視する」「会社・組織への帰属意識が低い」「プライベートを重視する」と言われています。もちろん価値観には個人差がありますので、大まかな目安ととらえればよいと思います。
ならば、どのような対策を取るかといえば、「目標や指示を明確にする」「評価して伸ばす」「叱るのではなくアドバイスする」「安定した職場環境や明確なキャリアパスを提供する」「長期的な成長を支援する」ことがあげられます。
離職防止という消極的な対策ではなく、大幅な権限移譲や役員登用して本領発揮してもらうポジティブな対策が必要で、本当は指名されれば燃える体質だと確信しています。
私は1954年生まれの高度成長期真っ盛りの「家庭より仕事優先」の昭和世代で育ちましたが、「仕事より家庭を優先する」タイプでしたので周囲からは多少浮いていたきらいがあります。家庭時間を創るために、いかに仕事時間の生産性を上げるかに血道をあげていましたので、転記の無駄や計算の正確性を高めるパソコンやメール、ITツールを使用したのは早い方でした。楽したいので工夫することは大好きでした。また、競争は苦手で、ほどほどが最良だと思っていましたし、お酒が飲めないので飲み会は極力避けて過ごしていました。そういう意味ではゆとり世代の価値観は非常によくわかりますし、呼吸がとても楽です。但し、妻に言わせると「家庭より仕事ばかりを優先していた」と苦情を言われていますが。
企業は省力化から省人化へ大革新しなければなりません。その担い手は中堅層ですし、そこに対するモチベーションアップとそのための投資は生き残るために必須要件といえます。
さて、日本時間の明日の4月3日午前4時に発表されるトランプ関税はどうなっているでしょうか?